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木村貴「経済で読み解く日本史」

平安時代、なぜ日本の辺境「平泉」は世界史に大きな影響を与えたのか?海を渡った金

文=木村貴/経済ジャーナリスト
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 イタリアの商人、マルコ・ポーロによって記述された「黄金の国ジパング」の伝説は、中尊寺金色堂のイメージがもとになったとの見方もある。ジパング伝説がコロンブスの航海を後押しし、アメリカ大陸への到達につながったことを考えると、平泉が世界史に及ぼした影響は驚くほど大きい。

 藤原氏が国内外に張り巡らした交易ルートを実際に移動し、取引を行ったのは、活力に満ちた内外の商人たちだった。金売吉次(かねうりきちじ)は奥州の黄金を京で売って長者になったという伝説的人物だ。牛若丸時代の源義経を平泉の藤原秀衡のもとに連れて行ったといわれる。

 その義経は壇ノ浦の戦いで平氏を滅ぼした後、兄の源頼朝と対立し、平泉の秀衡のもとに落ち延びる。秀衡の死後、その子の泰衡は義経を殺害して頼朝との協調をはかったが、頼朝は大軍を率いて奥州に乗り込み、藤原氏一族を滅ぼす。1189年のことである。百年にわたる奥州藤原氏の栄華は、ここに幕を閉じた。

 歴史学者の入間田宣夫氏は、奥州藤原氏の時代、国内外にわたる民間交易ルートが発展することにより、中央集権的な古代国家に大きな転機がもたらされたと指摘する。京都一極集中の下で中央官僚がすべてを取り仕切る古代社会は、地方が自主的に判断し発言する中世社会へと転換していった。平泉はその起爆剤となったのである。

 現代の日本は、東京一極集中の下、肥大した中央官僚組織の弊害があらわになっている。地方が独自に海外と結びつき、経済的に自立するとともに、中央の模倣ではない文化を育むうえで、奥州藤原氏の雄大な世界戦略は貴重なヒントになるはずだ。

(文=木村貴/経済ジャーナリスト)

<参考文献>

柳原敏昭編『平泉の光芒』(東北の中世史)吉川弘文館

宮崎正勝『黄金の島ジパング伝説』(歴史文化ライブラリー)吉川弘文館

入間田宣夫『藤原清衡 平泉に浄土を創った男の世界戦略』集英社

●木村貴(きむら・たかし)

1964年熊本県生まれ。新聞社勤務のかたわら、欧米の自由主義的な経済学や政治思想を独学。経済、政治、歴史などをテーマに個人で著作活動を行う。

twitter: @libertypressjp

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