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永濱利廣「“バイアスを排除した”経済の見方」

新型コロナ、潮目変わる、名目GDP2.9兆円下押しの可能性…東日本大震災を上回る悪影響か

文=永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト
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インバウンド減で日本のサービス輸出は▲1.0兆円減

 一方、インバウンドへの影響も、国内で感染拡大が広がれば、SARS(重症急性呼吸器症候群)よりも影響が拡大し、東日本大震災並みの影響が及ぶ可能性もある。

 そこで以下では、中国人以外のインバウンドも減少することによって、GDPがどれだけ押し下げられるかを、東日本大震災後におけるサービス輸出の落ち込みを前提として試算した。具体的には、東日本大震災に最もサービス輸出が落ち込んだ2011年4-6~10-12月期にサービス輸出がトレンド(前後のデータの線形補間)からどの程度乖離したかを調べ、その乖離率と同程度サービス輸出が押し下げられると仮定した。

 推計結果によると、東日本大震災後のサービス輸出は3四半期で▲0.5兆円以上程度押し下げられたことになる。しかし、当時に比べてサービス輸出はインバウンドの増加等により1.9倍になっている。このため、こうしたインバウンドの増加などを勘案したうえで、今回も同程度の影響が出現すると仮定すると、インバウンドの減少等により▲1.0兆円程度サービス輸出が下押しされることになる。

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感染拡大の食い止めが最善の経済対策

 一方、日本居住者の海外旅行の需要が減少すれば、旅行支払いの減少を通じてサービス輸入の減少につながる。そこで、この影響についても同様に試算すると、東日本大震災後の悪影響が最も大きく現れた2011 年4-6~10-12月期には、サービス輸入が東日本大震災後の影響がなかった場合と比較して、▲0.3兆円程度下押しされた計算になる。ただ、足元のサービス輸入が東日本大震災前に比べて1.5倍程度の水準まで上がっていることからすれば、東日本大震災後並みの影響が出た場合はサービス輸入が▲0.5兆円程度減少することになる。

 結局、先に試算した家計消費への影響にサービス輸出入の影響を含めれば、自粛等の動きが深刻化した東日本大震災後と同程度の影響を前提とすれば、名目GDPが東日本大震災後の▲2.5兆円を上回り、▲2.9兆円程度下押しされることになる。

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 ただし、この試算は、あくまで今年の前半中に国内での自粛の動きが落ち着き、海外における日本の風評も秋までに落ち着くといった前提である。したがって、東日本大震災後と比較して自粛等が長期化すれば、その場合には想定以上の悪影響が及ぶリスクもあることには注意が必要となろう。

 このため、政府は感染拡大を一刻も早く食い止めることに全力を尽くすとともに、潤沢な資金供給によって、この間の企業倒産などを最小限に食い止めることが最優先といえよう。

(文=永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト)

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