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江川紹子の「事件ウオッチ」第147回

江川紹子が目撃した、不健全で堕落した「安倍首相やらせ会見」…記者クラブは今すぐ是正を

文=江川紹子/ジャーナリスト

 やっと翌々日の午後6時になって開いた記者会見は、先に書いたようなあり様だった。司会が会見を強制終了させたのは、安倍首相が予定外の質問に答えない方針だから、でもあるだろう。

 今の安倍政権下では、記者会見で質問する記者はすべて、事前に指名を受け、質問を提出することになっている、と聞く。それに対する回答は、官僚が原稿にして準備し、演台の上に広げておく。本番で、首相はそれを読むだけだ。

 安倍首相が冒頭スピーチを行う時は、2つのプロンプターを出しているので、誰もが原稿を読んでいることはわかるし、それを問題だとも思わない。質疑の時間になると、このプロンプターが下げられるのは、首相が臨機応変に答えているように見せかける演出だ。だが、会見の映像を見ればわかるように、首相はしばしば手元の原稿に目をやっている。

 国民が、安倍首相の言葉と思って聞かされているのは、実は官僚の作文。首相自身の生の言葉ではない。

 事前の質問通知に応じないメディアがあるとすれば、指名はされないだろう。そして、私のようなフリーランスも指名はされず、質問ができない。

 2015年9月25日、憲法解釈を変更して集団的自衛権の行使を可能にした安全保障関連法を成立させた国会が閉会した直後の首相記者会見では、事前に用意した質問と回答のやりとりが、予定時間より早く終わってしまったのか、司会が「短めにあと1問」を認めた。ビデオニュース・ドットコム代表でジャーナリストの神保哲生氏とあと1〜2人が手を挙げたが、司会は挙手をしていないNHKの記者を指名し、質問させた。官邸広報室からは、首相が困るような質問はしない「安全」な記者と思われたのだろう。

 フリーランスに首相会見への出席が許されるようになったのは、民主党政権の鳩山由紀夫首相の時からだ。民主党政権時代は、フリーランスも指名されていた。私も2度ほど質問をしたことがある。事前に質問の通告はしていない。

 安倍政権になって、さすがにフリーランスを閉め出すことはしなかったが、質問はさせず、ただ会見場に座らせておくだけ、となった。

 なぜなのか。

予定外の追加質問に安倍首相は

 おそらく、安倍首相は即興でのやりとりが苦手で、自信がないのだろう。国会なら、すぐ後ろに官僚が控えて、予想外の質問が出てきた場合には、耳打ちをしたり、メモを差し入れたりして助ける。記者会見でも、それをして悪いとは思わないが、しばしばやると、かっこ悪さは否めない。

 加えて、事前の質問通告は、首相官邸がメディアをコントロールする手段でもあるのだろう。会見前に質問事項を打ち合わせておけば、突発的な質問で、鋭く追及されるような事態を防げる。

 国内で行う記者会見で指名されるメディアの記者は(外国メディアも含めて)、官邸広報室の事前通告の方針に従う。追加質問をしたりして、首相を慌てさせることはない。自ら、取材の自由、報道の自由を放棄してしまっているかのようだ。

 ただ、海外で行われるとなると、そうはいかない場合がある。

 内戦が続くシリアからの難民問題が論議された2015年の国連総会に出席した安倍首相が、現地ニューヨークで記者会見を行ったのは9月29日。ビデオニュース・ドットコムによれば、日本の報道機関からNHK、共同通信、テレビ朝日の3名、海外メディアがロイター通信と公共ラジオ局のNPR(National Public Radio)の2名が指名され、事前に質問の提出もした。

 ところが、ロイター通信の記者は、最初に通告通り「アベノミクスの新3本の矢」との質問をした後、「日本が難民を受け入れる可能性は?」と予定外の追加質問をした。

 映像を見ると、通訳のヘッドホンをつけた安倍首相の眉がつり上がり、目が左右に動くなど、その緊張ぶりが伝わってくる。そして、首相は「難民に対する対応の問題であります」と切り出しながら、次のように語り始めた。

「人口問題として申し上げれば、我々はいわば難民を受け入れるよりも前にやるべきことがあり、それは女性の活躍であり、あるいは高齢者の活躍であり、そして出生率を上げていくには、まだまだ打つべき手があるということでもあります」

 内戦等のためにやむを得ず故郷を出ざるをえなかった「難民」について聞かれているのに、自らの意思で国外に移り住む「移民」についての見解を答えてしまったのだ。

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