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オタクドクター“Chem”の「医療ニュース、オタク斬り!」

ブラック・ジャックはCTスキャンを信用せず?医療フィクションの金字塔に見る医療の進歩

文=Dr.Chem
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記念すべきオリジナルコミックスの第1巻(秋田書店)

 ご無沙汰しております。アニヲタ医師、Dr.Chem(ちぇむ)でございます。

 いわゆる新型コロナウイルスの感染拡大が大きな問題となっておりますが、そんななか、3月2日に大手出版社の集英社と小学館によって発表された“ある決断”が話題となっています。それは、この2社が発行しているマンガ雑誌「週刊少年ジャンプ」(集英社)、「コロコロコミック」(小学館)などのバックナンバーを無料公開するというもの。これは日本政府が全国の学校に対し臨時休校を要請したことを受けてのもので、「子供たちはじめ外出が難しい方々に(略)楽しんで頂ければ」(ジャンプ編集部)とのコメントも発表され、社会に大きな不安が広がるなか、SNSなどを中心に非常に好意的に受け入れられたようですね。

 さて、突然ですが、医療を扱ったフィクションといえば、皆さんは何を思い出しますか? ドラマ、映画、小説など多くのジャンルにおいて医療は、定番の題材のひとつとして、現在にいたるまで多数の作品が存在します。そのなかでも定番はやはり、わかりやすい「外科」などなのでしょうが、一方で近年では、従来ではマイナーな領域と考えられがちだった診療科にスポットを当てた作品も増えております。

 しかし、やはり知名度と人気、そして医療マンガというジャンルそのものに与えた影響……といったものを考えると、“マンガの神様”手塚治虫の手がけた『ブラック・ジャック』は外せないところでしょう。1973年に「週刊少年チャンピオン」(秋田書店)にて連載開始された同作は、どんな困難な手術も成功させるが、患者には法外な治療費を請求することで知られる無免許のアウトロー医師、ブラック・ジャックを主人公とした、(基本的には)一話完結タイプの連作マンガ。作中に登場する、さまざまな病や怪我に直面した登場人物たち、そしてそうした怪我や病に立ち向かう医師の姿は、50年近くの時を経たこの令和の時代になってもなお、まったく色褪せない魅力を放っています。

スピンオフ、メディアミックスも多いブラック・ジャック

 同作は、過去の手塚作品に登場したキャラたちがゲストとして多数登場するスター・システムの集大成としての要素もあり、その制作経緯や裏話なども多数知られているとともに、後年、フォロワー作家たちによるスピンオフ・メディアミックス作品が多数制作された作品でもあります。

 なかでも、2004年から日本テレビ系列にて放送されたテレビアニメシリーズは、手塚治虫のご子息である手塚眞氏が監督を手がけ、19時というゴールデンタイムに放送されたこともあり、非常に知られた『ブラック・ジャック』メディアミックス作のひとつです。マンガ原作と比較して、表現がマイルドに変更されていたり、物語のオチがハッピーエンドに変更されていたりといった改変はありますが、その分、作品の根底にあるヒューマニズムが強調された内容に仕上がっており、時代や媒体に即したものになっていたのではないかと思います。

CTスキャンを信用しないブラック・ジャック

 時代、ということでいえば、医学という絶えず進歩する分野を扱っている性質上、医学それ自体の進歩が、『ブラック・ジャック』の後続作品にどのように反映されているか……という点も、医療者の視点からは注目すべきポイントのひとつです。

 元祖『ブラック・ジャック』が連載されたのは1973年からの10年間。たとえば、現代ではあって当然のものとなっているCTスキャンについて、ブラック・ジャックが疑問を呈する場面があったりします。

「わたしゃァ、今はやりの医用電子機器とかCTスキャンとかは信用しねえんだ」
第225話「されどいつわりの日々」

 もちろん、現在では画像診断技術の進歩は正確な診断・治療において欠かせないものとなっており、画像診断医を主人公に据えた作品さえ存在します。

参考:モリタイシ著『ラジエーションハウス』(集英社)

 しかしこれはブラック・ジャックないし著者である手塚本人の無知うんぬんということではなく、当時の画像診断の技術水準はまだ低く、そしてその時代に想像されていた以上にその後その技術は早く進歩し、またそれが一般診療の場に普及したことを示す事例と考えるべきでしょう。