新型コロナ、「口の状態」が悪いと重症化しやすい?歯周病対策+“使える入れ歯”→軽症化

「Getty Images」より

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、健康被害にとどまらず、感染拡大を予防するためにコンサートやスポーツなど各種イベントの中止、旅行、宴会、会食などの自粛による経済活動の停滞を生じ、さらに安倍晋三首相の唐突とも思える全国すべての公立校の臨時休業の要請など、社会に混乱を招いています。

 こうした過度とも思える対策を取らざるを得ない要因は、新型コロナウイルスに感染し、発症した場合の決定的な治療法や、発症を未然に防ぐワクチンが現時点ではないことだと考えられます。

 しかし、時間の経過とともに新型コロナウイルスの実態も報告されるようになってきました。

 WHO(世界保健機関)は2月20日までに、中国で感染が確認された5万5924人のデータについて分析した結果を、以下のように発表しました。

・感染から発症までは、平均で5日から6日。
・感染者のおよそ80%は症状が比較的軽く、肺炎の症状がみられない場合もある。
・呼吸困難などを伴う重症患者は全体の13.8%。
・呼吸器の不全や敗血症、多臓器不全など命にかかわる重篤な症状の患者は6.1%
・重症や死亡のリスクが高いのは、60歳を超えた人や高血圧や糖尿病、循環器や慢性の呼吸器の病気、がんなどの持病のある人。
・全体の致死率は3.8%(5万5924人の感染者のうち死亡したのは2114人)
・80歳を超えた感染者の致死率は21.9%

 新型コロナウイルスがインフルエンザなどと違うもうひとつの特徴として、子どもの感染例が少なく症状も比較的軽いということ。19歳未満の感染者は全体の2.4%で、重症化する人はごくわずかとも報告されています。

NHK NEWS WEB「WHO調査報告書 症状の特徴・致死率など詳しい分析明らかに」

 この報告からわかることは、感染しても軽症で済むひとが80%と高率であること、子どもの感染率が低いこと、また重症化するのは高齢者や持病があるなど体力、免疫力が低下している人だとも考えられることです。

したがって、たとえ感染し発症しても軽症で終わらせることができるように、体力、免疫力が低下しないようにすることが肝心です。

体力や免疫力の低下防止の基本は「口の健康」

 免疫力を上げる方法は、メディアでも多く取り上げられています。それらによると、腸内環境を整える、粘膜を正常に保つ、内臓温度を上げる、血流を促進するなどで、そのための食品としては、ヨーグルト、納豆、しょうが、長ねぎ、にんにく、きのこ類、みそ、レバー、ブロッコリースプラウト、わかめなど、飲み物では、緑茶、紅茶、りんごジュースなどが良いそうです(ウイルスから身を守る!免疫力を高める最強食品BEST10「介護ポストセブン」より)。

 しかし、これらをよくみると、何も特別なことではなく、要は栄養バランスの良い食事をすることです。それに適度な運動と十分な休養(睡眠、ストレスの軽減)をプラスすれば自然に免疫力も維持され、新型コロナウイルス対策だけでなく病気全般に罹りにくい健康な体でいられることになります。

大切なのは「自分の口で食べる」こと

 また、新型コロナウイルス感染で重症化しやすいとされる高齢者や持病を持つ人は、口の状態が悪く、食事に困る人も少なくありません。

 口の状態というのは、健康な歯の本数ではなく、使える入れ歯が装着されているなどして左右の歯でよく噛めるかどうかが問題なのです。

 本連載記事『寝たきり高齢者が“使える入れ歯”にしたら歩けるようになった!健康寿命伸長&認知症予防のカギは歯』でも紹介しましたが、寝たきりだった93歳の高齢者が、入れ歯を入れて「自分の口で食べる」ようになったことで、栄養状態が改善されるとともに体力がつき、やがて歩けるようになり、介護認定も4から2になった実例があります。この例が示すように、高齢者や持病を持つ人が「自分の口で食べる」ことで体力や免疫力を上げ、ウイルス感染のリスクを下げるのです。

歯周病対策は持病軽減につながる

 さらに、歯周病対策も新型コロナウイルスの軽症化につながります。歯の二大疾患は虫歯と歯周病です。子供を中心に虫歯の数は減っているのですが、歯周病は若い20代でも4人に1人が罹患しており、年齢が上がるにつれ、その割合も増えています。

厚生労働省による平成28年度歯科疾患実態調査から作成

 歯周病は歯茎からの出血や排膿、痛みなど不快症状を伴う病気で進行すると歯を失う要因になりますが、最近の研究では、歯周病の原因となる歯周病菌そのものが糖尿病、心臓病、動脈硬化、がんなどを引き起こす原因のひとつであると報告されています(からだの健康は 歯と歯ぐきから – 8020推進財団より)。

 つまり、歯周病を改善することも新型コロナウイルスの重症化の要因となる持病を遠ざけることにつながるのです。

 目に見えない新型コロナウイルスの感染予防には、手洗いの徹底やマスクの着用、人混みを避けるなどですが、それらにも自ずと限界があり、残念ながら100%の感染予防は不可能です。だからといっていたずらに恐れる必要もなく、たとえ感染したとしても軽症で済むように、歯周病のコントロールと使える入れ歯などで栄養バランスの良い食事が摂れる「健康な口を維持する」ことが大切なのです。
(文=林晋哉/歯科医師)

林晋哉/歯科医師

1962年東京生まれ、88年日本大学歯学部卒業、勤務医を経て94年林歯科を開業(歯科医療研究センターを併設)、2014年千代田区平河町に診療所を移転。「自分が受けたい歯科治療」を追求し実践しています。著書は『いい歯医者 悪い歯医者』(講談社+α文庫)、『子どもの歯並びと噛み合わせはこうして育てる』(祥伝社)、『歯医者の言いなりになるな! 正しい歯科治療とインプラントの危険性』(新書判) 、『歯科医は今日も、やりたい放題』(三五館)、『入れ歯になった歯医者が語る「体験的入れ歯論」: -あなたもいつか歯を失う』(パブフル)など多数。

林歯科・歯科医療研究センター

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