しかし、これらをよくみると、何も特別なことではなく、要は栄養バランスの良い食事をすることです。それに適度な運動と十分な休養(睡眠、ストレスの軽減)をプラスすれば自然に免疫力も維持され、新型コロナウイルス対策だけでなく病気全般に罹りにくい健康な体でいられることになります。

大切なのは「自分の口で食べる」こと

 また、新型コロナウイルス感染で重症化しやすいとされる高齢者や持病を持つ人は、口の状態が悪く、食事に困る人も少なくありません。

 口の状態というのは、健康な歯の本数ではなく、使える入れ歯が装着されているなどして左右の歯でよく噛めるかどうかが問題なのです。

 本連載記事『寝たきり高齢者が“使える入れ歯”にしたら歩けるようになった!健康寿命伸長&認知症予防のカギは歯』でも紹介しましたが、寝たきりだった93歳の高齢者が、入れ歯を入れて「自分の口で食べる」ようになったことで、栄養状態が改善されるとともに体力がつき、やがて歩けるようになり、介護認定も4から2になった実例があります。この例が示すように、高齢者や持病を持つ人が「自分の口で食べる」ことで体力や免疫力を上げ、ウイルス感染のリスクを下げるのです。

歯周病対策は持病軽減につながる

 さらに、歯周病対策も新型コロナウイルスの軽症化につながります。歯の二大疾患は虫歯と歯周病です。子供を中心に虫歯の数は減っているのですが、歯周病は若い20代でも4人に1人が罹患しており、年齢が上がるにつれ、その割合も増えています。

新型コロナ、「口の状態」が悪いと重症化しやすい?歯周病対策+使える入れ歯→軽症化の画像3
厚生労働省による平成28年度歯科疾患実態調査から作成

 歯周病は歯茎からの出血や排膿、痛みなど不快症状を伴う病気で進行すると歯を失う要因になりますが、最近の研究では、歯周病の原因となる歯周病菌そのものが糖尿病、心臓病、動脈硬化、がんなどを引き起こす原因のひとつであると報告されています(からだの健康は 歯と歯ぐきから – 8020推進財団より)。

 つまり、歯周病を改善することも新型コロナウイルスの重症化の要因となる持病を遠ざけることにつながるのです。

 目に見えない新型コロナウイルスの感染予防には、手洗いの徹底やマスクの着用、人混みを避けるなどですが、それらにも自ずと限界があり、残念ながら100%の感染予防は不可能です。だからといっていたずらに恐れる必要もなく、たとえ感染したとしても軽症で済むように、歯周病のコントロールと使える入れ歯などで栄養バランスの良い食事が摂れる「健康な口を維持する」ことが大切なのです。
(文=林晋哉/歯科医師)

●林 晋哉(歯科医師)
1962年東京生まれ、88年日本大学歯学部卒業、勤務医を経て94年林歯科を開業(歯科医療研究センターを併設)、2014年千代田区平河町に診療所を移転。「自分が受けたい歯科治療」を追求し実践しています。著書は『いい歯医者 悪い歯医者』(講談社+α文庫)、『子どもの歯並びと噛み合わせはこうして育てる』(祥伝社)、『歯医者の言いなりになるな! 正しい歯科治療とインプラントの危険性』(新書判) 、『歯科医は今日も、やりたい放題』(三五館)など多数。近著は『入れ歯になった歯医者が語る「体験的入れ歯論」: -あなたもいつか歯を失う』(パブフル)。

林歯科HP:http://www.exajp.com/hayashi/

RANKING