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垣田達哉「もうダマされない」

新型コロナ専門家会議、根拠なく「若者が感染拡大の原因」…不必要に世代間対立を助長

文=垣田達哉/消費者問題研究所代表
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新型ウイルス肺炎が世界に拡大 日本国内でも警戒(写真:アフロ)

 2日、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議は、以下の見解を発表した。

「若年層は重症化する割合が非常に低く、感染拡大の状況が見えないため、結果として多くの中高年層に感染が及んでいると考えられます」

「10代、20代、30代の皆さん。若者世代は、新型コロナウイルス感染による重症化リスクは低いです。でも、このウイルスの特徴のせいで、こうした症状の軽い人が、重症化するリスクの高い人に感染を広めてしまう可能性があります。皆さんが、人が集まる風通しが悪い場所を避けるだけで、多くの人々の重症化を食い止め、命を救えます」

 これではまるで、感染源が10~30代の若者であり、感染が拡大しているのは若者のせいだと指摘しているかのようにも受け取れる。これは、若者にとってあまりにも酷な発表だろう。

 今までに感染した方々が、若者にウイルスをうつされたという科学的証拠はあるのだろうか。WHO(世界保健機関)も含め、「若者が感染を広めている」と言っているのだろうか。「症状の軽い人」とは断っているが、症状の軽い人は若者で、その若者が高齢者にうつしたという根拠はあるのだろうか。

 専門家会議はこの見解の中で、「この一両日中に北海道などのデータの分析から明らかになってきた」と述べているが、本当に若者がうつしたという証拠はあるのだろうか。仮にこの見解が正しいとしても、もっとも問題なのは、誰が軽症者なのかわからないことだ。そして「若者はうつすが高齢者はうつさない」という言い方にも受け取れ、若者が加害者で高齢者は被害者だと断定しているような印象を与えている。

 軽症の高齢者は誰にもうつさないのだろうか。高齢者同士の感染は少ないといえるのだろうか。若者より高齢者のほうが、出歩くと感染を広めてしまう可能性が低いといえるのだろうか。たまたま大阪のライブハウスの感染者のなかに30代の女性がいたからといって、その方が他の人にうつしたのか、年上の人からうつされたのかは、わからないだろう。

 スポーツジムも卓球クラブも展示会も、皆、感染源は10代から30代の若者だったのだろうか。若者さえ外出しなければ、新型コロナウイルスは終息するのだろうか。

世代間の対立を煽る

 政府の専門家会議がこのような見解を発表すると、若者層と高齢者層の世代間対立を生んでしまう懸念がある。

 電車に一緒に乗り合わせた若者が感染していないのか、軽症者なのかは、わからない。だから高齢者は若者を避けることになり、若者も自分は軽症者じゃないとわかっていても、高齢者を心配させてはまずいと考え、離れることになる。高齢者が感染した時に「電車の中で隣に若者が座っていたせいだ」と言われたらたまらない。

 そうなると、若者は電車にもバスにも乗れない。飲食店で隣の席に高齢者が来たら、席を立って離れなければならない。高齢者も若者の近くで食事をすることを避けなければならない。若者か高齢者か、どちらかが避けるようになるだろう。たとえ風通しがよい道であっても、高齢者を見れば若者は避けるし、高齢者も若者を避けるだろう。いや逃げるように立ち去るかもしれない。

 政府の専門家会議にこんなことを言われると、若者も高齢者もどうしてよいのかわからなくなってしまう。40代以上の人は軽症にならないのだろうか。それとも、40代以上の人はウイルスをうつさないのだろうか。これでは、若者と高齢者の断絶、分断を生みかねない。専門家会議は、国民に無用な不安を与えている気がしてならない。

(文=垣田達哉/消費者問題研究所代表)

垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

1953年岐阜市生まれ。77年慶應義塾大学商学部卒業。食品問題のプロフェッショナル。放射能汚染、中国食品、O157、鳥インフルエンザ問題などの食の安全や、食育、食品表示問題の第一人者として、テレビ、新聞、雑誌、講演などで活躍する。『ビートたけしのTVタックル』『世界一受けたい授業』『クローズアップ現代』など、テレビでもおなじみの食の安全の探求者。新刊『面白いほどよくわかる「食品表示」』(商業界)、『選ぶならこっち!』(WAVE出版)、『買ってはいけない4~7』(金曜日)など著書多数。

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