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新型コロナ、テレワーク(在宅勤務)の見えない罠…なぜ逆に仕事が非効率に?

文=矢島新子/産業医、山野美容芸術短期大学客員教授、ドクターズヘルスケア産業医事務所代表
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新型ウイルス肺炎が世界に拡大 韓国で感染相次ぐ(写真:ロイター/アフロ)

 新型コロナウイルスの影響で出社制限をする企業が増え、都心はめっきり人影が減りました。一部企業では感染拡大防止のために在宅勤務を進めております。特に外資系企業やIT企業では、もともと在宅勤務に対応する体制が整っており、私のクライアント企業のなかでも、外資系、特に米国系の対応は迅速でいち早く全社在宅勤務に切り替えています。

 私自身も産業医として、海外勤務中の社員や休職中の社員の自宅をつなぐ遠隔産業医面談を3年前から始めていますが、今回の件でその利用範囲も広がり、人事部との打ち合わせにもテレビ会議システムなどを活用しています。またクリニックでの禁煙外来ですが、これはそもそもオンライン診療のため、普段となんら変わりなく、患者様と当方、双方にとって「安全な」診療ができております。この「遠隔での対応」は今まで国の規制や企業のコンプライアンスによりなかなか進まない部分があったのですが、今回をきっかけに加速的に普及するのではないかともいわれています。

 在宅勤務といえば、過酷な通勤はなく、働く女性にとって子育てにも優しく、合理的、私たちの理想、と目に映ります。しかし、実はそこには見えないリスクがあるのです。

 今回はこのリスクについてお伝えし、その解決法のご提案をしようと思います。

在宅勤務のある独身社員の告白

 今日は会議が午後に30分だけであとは事務作業、明日は会議もないので一日中一人で作業です。通勤がないから身体は楽だし、余計なことを言う上司の顔を見なくて良いので、精神的にもずいぶん気楽。必要な時には電話が来るだけで、オフィスにいるときよりも断然仕事に集中できる。でも、

「あれ? そう言えばこの2、3日一歩も外に出ていないかな……」

「スマホの歩数計を見たら、え! 150歩?」

「家の机と椅子、なんか会社のと違って仕事向きじゃなく肩が凝る」

「どうしてだろう、ずっと家にいるとついつい食べてしまう」

などと気づく方も。そして週に1、2回、用があり行く職場、なぜか実はそこでホッとする。こう感じることありませんか?

 在宅勤務は、他の人に邪魔されず仕事に集中できるのですが、完全な巣ごもり状態になりがち。日によっては誰とも会わないどころか、話しもしないまま一日が過ぎ、1週間で一歩も外に出ていないということも。こんな日が数日続き、肉体が疲労しないせいか、夜も眠れなくなり、なんとなく夜更かし、朝も早く起きられなくなってしまった。ダラダラ生活になりかねず、この状態で本当に効率的に仕事ができているのか疑問です。

引きこもりによる生活リズムの乱れ、運動不足に要注意

 私が産業医として、休職後の復職可否判断のためにその社員にお願いすることは、生活記録表の記載と通勤訓練の2つです。生活記録表は、昼夜逆転などがないか等、生活のリズムを確認するため。通勤訓練は会社まで来る、体力、気力の回復を促すため。実は休職明けは、想像以上に体力が低下しているため、「訓練」が必要なのです。在宅勤務も同じで、「いざ、出社」という時に、体力が落ち都会の「過酷な」通勤への適応が困難となるかもしれないのです。

「都会の人は地方の人よりよく歩く」といわれていますが、実際これを示すデータがあります。

 厚生労働省の「平成28年国民健康・栄養調査」によると、東京・神奈川・大阪などの都市部では1日の歩数平均値が全国平均より多く、成人男性では大阪が8762歩(全国平均7779歩)、成人女性では神奈川が7795歩(同6776歩)となっています。

 実は都会では歩かされるように仕組まれています。通勤電車を利用し、自宅や会社から駅までの移動、乗り換えなどで相当な距離を歩く。一方、車が移動手段である地方では、ほとんど歩かないということなのでしょう。都会人は軟弱なイメージがあるようですが、そんなことはないのです。今後、在宅勤務が増えることで、都会人を「鍛えていた」通勤がなくなり、運動不足に注意が必要となってきます。

普段はストレス発散で健康に良いが、COVID-19が流行する今は避けたい場所とは

 健康のためにジムに通う人が最近は増えていますが今はお勧めしません。閉鎖空間・人口密度が高い状態で運動をすることにより飛沫が飛び、滞留しクラスターとなりえます。以前私は保健所に勤務し結核管理の現場にいましたが、換気が悪く、人との距離の近い密閉空間であるサウナ・カラオケボックスなどが、感染源となりやすいことを経験しました。

 あるメディアが、「COVID-19に勝つために免疫を高めるのが有効」とサウナを勧めていましたが、この閉鎖空間はハイリスクなので、やめたほうが良いでしょう。カラオケボックスも唄う時の飛沫が問題です。韓国の新興宗教で感染が拡大したのも、膝がつくほど近い環境で人々が情熱的に讃美歌を唄っていたのが原因だといわれています。今は熱唱は我慢しましょうね。

何をしてストレスを発散したらいいの?

 外に出ましょう。飛沫は2メートル離れていればほぼ問題はないので、人が密集していないなら外出はまったく問題ありません。散歩やランニングなどがお勧めです。スマホなどにある歩数計を利用して、一日1万歩を目標にするなど良いと思います。ちょっと古いかもしれませんが、ポケモンGOも楽しいかも。自宅であっても軽いストレッチや筋トレは可能ですね、私もゴルフのパターマットを買いました。

 いまや新型コロナウイルスには誰が感染してもおかしくない状況です。あるサービス業の方が、「うちのスタッフもお客様も若い人ばかりで、感染しても軽症で済むのであまり心配していません」と言っていましたが、これは大間違いです。

 お客様の後ろには、ご家族がいます。そのなかには高齢者がいるかもしれません。その方が犠牲にならないよう、我々は最大限の努力をしなくてはならないのです。正しく恐れて、体力維持をしながら在宅勤務を乗り切りましょう。

(文=矢島新子/産業医、山野美容芸術短期大学客員教授、ドクターズヘルスケア産業医事務所代表)

矢島新子/産業医

矢島新子/産業医

矢島新子
山野美容芸術短期大学客員教授。ドクターズヘルスケア産業医事務所代表。東京生まれ。東京医科歯科大学医学部卒。パリ第1大学大学院医療経済学修士、WHO健康都市プロジェクトコンサルタント、保健所勤務などを経て産業医事務所設立。10年にわたる東京女子医科大学附属女性生涯健康センターの女性外来、産業医として数千人の社員面談の経験より、働く女性のメンタルヘルスに詳しい。著書に『ハイスペック女子の憂鬱』(洋泉社新書)ほか。
株式会社ドクターズヘルスケア

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