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木村誠「20年代、大学新時代」

大学無償化で逆に中退率が急上昇?大学生の学力低下を招く可能性も

文=木村誠/教育ジャーナリスト
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 まして、警告後に打ち切りとなるケースのGPA(平均成績)等が下位4分の1や出席率8割以下の例は、相当数の学生が該当する可能性がある。学生数の多いマンモス大学では、警告と打ち切りを実行する学校当局と該当学生の交渉次第では、支援を打ち切られた学生の退学が増加し、中退率の急上昇を招きかねない。大学経営にとっても、頭の痛い問題が多くなるだろう。

 逆に、大学が学生とのトラブル発生を恐れて成績管理や出席管理を甘くすれば、長い目で見て大学生の学力低下を招きかねない。

高卒で就職する若者にも支援の手を伸ばすべき

 アメリカ大統領選挙の民主党候補の1人であるバーニー・サンダース氏の「公立大学の授業料無償化」という公約と違い、今回の無償化の本当の狙いがよくわからない。公金なので、いろいろと条件をつけたくなるのだろうが、学生のやる気と向学心を信用して、長い目でサポートすべきだ。

 家計の事情から進学せずに就職する高校生もまだ多いが、最近は地方公務員も大卒対象の採用枠が広がり、金融機関も高卒の採用人数を絞っている地方が多い。大都市や求人が多い地方工業都市を除けば、思い通りの就職口は選びにくい。そのような、高卒で就職する若者にも支援の手を差し伸べるべきだ。

 それには、息の長い産学連携が必要である。たとえば、静岡銀行は27年ぶりに高卒採用を実施する。静岡県内の高校を卒業し、大学の夜間コースまたは通信制大学に進学することが条件だ。在学中の4年間は、昼間は支店などに勤務しながら大学で学ぶ。受験料や学費は同行が全額負担する。このような地方の有力企業の施策を大学側が積極的に活用することで、高等教育の無償化が地方創生に結びつくことになる。

 その点で、最近増加しつつある地方の専門職大学なども、無償化の恩恵を受けて進学した地方の高校生が地元就職をするルートとして注目したい。

(文=木村誠/教育ジャーナリスト)

●木村誠(きむら・まこと)
早稲田大学政経学部新聞学科卒業、学研勤務を経てフリー。近著に『「地方国立大学」の時代–2020年に何が起こるのか』(中公ラクレ)。他に『大学大崩壊』『大学大倒産時代』(ともに朝日新書)など。

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