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厚労省、『モーニングショー』に反論でデマ流布…原因は首相官邸の“素人”介入だった

文=編集部
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総理大臣官邸(Keiko Hiromi/アフロ)

 厚生労働省の公式Twitterアカウントが、テレビ朝日系『羽鳥慎一モーニングショー』を名指しし、番組内容に異を唱えたことが波紋を呼んでいる。番組内容に誤りがあり、訂正を促す内容なのかと思いきや、厚労省側の説明は二転三転。状況は混とんとしている。いったい何があったのか。

番組終了後、厚労省が突如異論をTwitterに投稿

 『モーニングショー』は4日、厚労省がメーカーに対して、国民生活安定緊急措置法に基づきマスク400万枚を同省へ売り渡すよう指示したことを伝えた。加えて、厚労省が入手したマスクは、当時、感染が急拡大していた北海道中富良野町や北見市の各世帯に配布する方針も報道された。これに対し、テレ朝社員コメンテーターの玉川徹氏が「医療機関に配るべきだったんじゃないか」などと発言。補足するかたちで、白鴎大学教育学部教授(感染症学、公衆衛生学)の岡田晴恵氏が次のように話した。

「まずは医療機関に配らないと駄目です。みなさん欲しいのはごもっともですが、医療を守らなかったら治療できませんから、医療機関、特に呼吸器関係をやっている人に重点的に配っていかないと」

 賛否はどうあれ同番組のこれまでの報道スタイルからすれば、今回の放送が取り立てて過激な内容だったようには思えない。ところが、厚生労働省の公式Twitterアカウントは5日、突如として同番組を名指ししながら下記のような異論を唱え始めた。

「3月4日午前8時からの『羽鳥慎一モーニングショー』の出演者から、『まずは医療機関に配らなければだめ。医療を守らなければ治療ができないから、医療機関、特に呼吸器関係をやっている人に重点的に配っていく』とのコメントがありました」(原文ママ、以下同)

「厚生労働省では、感染症指定医療機関への医療用マスクの優先供給を行ったほか、都道府県の備蓄用マスクの活用や日本医師会や日本歯科医師会のルートを活用した優先配布の仕組みをお知らせしています」

「最終的に全ての医療機関に十分なマスクが届くことが必要であり、引き続き、マスクの増産や全ての医療機関を対象とした優先供給を進めてまいります」

モーニングショーは再反撃、厚労省は主張内容を変更

 『モーニングショー』は6日、この厚労省のツイートを受け、同省に取材した結果をパネルで説明した。パネルには5日夜、厚労省担当者からの回答として「『マスクの優先供給を行った』については言いすぎた表現 『行っている』『開始した』が正しい」と記載してあった。またこの厚労省担当者との談話として、医師会を活用した優先配布の仕組みについて「訂正したい そんなことは国会でも言っていない」「日本医師会 日本歯科医師会に協力してもらって、マスク配布の仕組みを医療関係者に広く知ってもらいたい というつもりで書いた」と書かれていた。

   厚労省の公式アカウントはこの日の番組終了後、次のように投稿した。

「2月25日、厚生労働省の指示の下、メーカーと卸業者が協力して、医療機関の必要度に応じて、一定量の医療用マスクを優先的に供給する仕組みを作りました」

「2月28日にサージカルマスク約41万枚を14自治体、サージカルマスク約18.8万枚を68感染症指定医療機関に対して、まずは優先供給を行ったところです」

「3月4日午前8時からの『羽鳥慎一モーニングショー』の出演者から、『医療機関に配らなくてはだめ』とのコメントを受け、3月5日に、既に厚生労働省は医療機関に優先供給をする方針を自治体や医師会に明確にしていたので、この事実関係をお知らせしたところです」

 実際にこの間、全国の開業医からはインターネット上で「どこの医師会にマスクが流れているのか」「うちには来ていない」などと疑問の声が上がっていた。そのうえで5日から6日にかけて、変更された厚労省の主張をよく見てみよう。

「感染症指定医療機関への医療用マスクの優先供給を行った」(5日の投稿)→「68感染症指定医療機関に対して、まずは優先供給を行った」(6日同)

 国家公務員の最も大切な仕事は、国会で審議された法令や法律の条文を作成することだ。一般的に優秀な官僚は事実を巧みに積み上げて、解釈の余地をわざと残したり、逆に余談を許さなかったりするような緻密な文章を書くものだが、今回の投稿はかなり「ガバガバ」な内容だったことがわかる。

 いったい誰が書いたのか。政府関係者は次のように語る。

「この新型コロナウイルス問題では、まず首相官邸が表に出す文章を確認しています。大臣はもちろん、官邸に出向中の各省職員や副大臣、政務官などを通じて内閣官房に広報概要が伝わり、官邸が情報の整合性を確認して、各省でリリースしていると思います。

 各社報道で指摘していますが、コロナ問題対策の事実上のトップは今井尚哉首相補佐官です。まさか、ご自身が広報内容を添削するほど暇ではないでしょうし、どこまで関わっているのかはわかりません。ただ、現在の官邸は各社の報道内容をよく分析しているそうなので、今井補佐官らが『モーニングショーのあれはなんだ』くらいの指摘はしたのではないでしょうか。

 今井補佐官はもともと経済産業省の出身です。今年3月11日で9年になる東日本大震災と東京電力福島第1原発事故後、資源エネルギー庁の次長になりました。当時、急激に加速していた脱原発の流れを、旧民主党政権幹部や各原発立地県の知事を説き伏せて『原発再稼働』の流れに持って行った主要人物です。『原発はクリーンエネルギー』『アベノミクス新三本の矢』『一億総活躍社会』などのスローガンをつくるのは得意ですが…。どちらかというと、緻密に制度や法令を組み立てて、社会をまわすというタイプの官僚ではありません。

 今回の件も、原発事故と同じく『国家の危機』ということで今井補佐官が大車輪の活躍をされているそうですが、いかんせんウイルスや医療行政に関しては門外漢なところは否めません。そのため指示や事実関係の確認が大雑把になったり、今回のようなガバガバな広報文になったりしているのでしょう。厚労省内部からも、官邸の統制のあり方に疑問の声が上がりはじめています。

 縦割り行政の弊害で対策が遅れてはなりませんが、各省や専門家に任せるところは任せ、危機的な状況だからこそ、現場の職員を信頼して指揮をとってもらいたいです」

 今回の厚労省が番組を名指しして異論を唱えたことに対して、テレビ朝日広報部にも見解を求めたところ、次のような回答が寄せられた。

「特にお答えすることはありません。放送したことがすべてです」

(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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