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片田珠美「精神科女医のたわごと」

ゴーン氏、YouTube対談で傲慢症候群…堀江貴文個人の発信力がテレビを超えた

文=片田珠美/精神科医
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「ホリエモンチャンネル」より

 レバノンに逃亡した日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告と実業家の堀江貴文氏がベイルートで対談した動画が、You Tubeで配信された。この2人が指摘する日本の司法制度の問題点は、もちろんあると思うが、それよりも私が気になったのは、ゴーン被告が「何人かの日産の人々によって人格攻撃が始まりました。私は欲深い独裁者であると多くの人に知られており、何年も前から続いている独裁者と宣伝された」と語ったことである。

 このように語ったのは、自分が「独裁者」だったことに気づいていないからではないか。リストラや工場の閉鎖などによって日産のV字回復を成し遂げたゴーン容疑者は、「コストカッター」として称賛を浴びたが、コストカットを強引に進める過程で、独裁的な手腕が怒りや反感を買ったことも、切られた社員や下請けから恨まれたこともあるだろう。

 それに気づけなかったから、部下からクーデターを起こされたのであり、そのクーデターに検察を巻き込んだのが突然の逮捕劇の真相のように私には見える。だから、「私の逮捕は日産の役員と検察官の緊密な協力によって行われた」というゴーン被告の主張は、まんざら嘘でもないと私は思う。

ゴーン被告は「傲慢症候群」

 ただ、自分が「独裁者」であるという自覚がなく、怒りや反感を買っていることに気づけなかった点で、ゴーン被告は「傲慢症候群(ヒュブリス・シンドローム)」なのではないかと疑わざるをえない。

「傲慢症候群」は、イギリスのデービッド・オーエン元外相・厚生相が提唱した概念である。オーエンは「権力の座に長くいると性格が変わる人格障害の一種」と説明している。たしかに、「権力を握ってから、おかしくなった」とか、「権力を振るえる立場になってから、とんでもないことをするようになった」と言われる人はいる。

 権力の座につくことによって、おごりや自信過剰が生まれ、そのせいで周囲が見えなくなり、冷静な判断ができなくなるのが「傲慢症候群」の特徴だ。オーエンは政治家であると同時に神経科医でもあるので、国家のトップが周囲の助言に耳を傾けず、暴走する姿を医師のまなざしで冷静に観察していたのだろう。

「傲慢症候群」になりやすいのは強い自己愛の持ち主である。自己愛が強いと傲慢になる最大の要因は、「自分は特別」という特権意識が強くなることだ。ゴーン被告も、自己愛も特権意識も強そうだが、それに拍車をかけたのが、フランスのエリート養成校のグランゼコール出身であること、そして過去の成功体験によって「カリスマ経営者」ともてはやされたことだろう。

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