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木下隆之「クルマ激辛定食」

幻の名車アルピーヌ「A110」が華麗に復活!想像以上のエンジンパワー&刺激的な操縦性

木下隆之/レーシングドライバー
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アルピーヌ「A110S」

 仏アルピーヌが展開する「A110」シリーズに、もっとも攻撃的な「A110S」が加わった。これにより、安価で軽量な「A110ピュア」と、やや豪華な仕様である「A110リネージ」という2ラインナップに加え、速さを意識したスポーツモデルが陣営を組むことになった。理想的なフォーメーションが完成したのである。

「A110S」を紹介する前に、そもそもアルピーヌというメーカーを紹介しておかねばならないだろう。なんといっても、アルピーヌのフランス工場は年産約6000台という小規模生産能力しか持たず、日本の正規販売代理店も約14店舗にとどまっているほどの希少モデルだ。その名を聞いても、ピンと来る人が少ないのも道理だと思う。

 ただし、ベテランのクルマ好きには、その名はハートに響くであろうと想像する。というのも、アルピーヌは1955年、南フランスの片田舎で創業した。そこで生産した初代が思いのほか高性能で、イタリアの伝統的自動車競技であるミッレ・ミリアで活躍し、知名度が高まった。その後、ルノーのエンジンやシャシーを流用した初代「A110」を開発。それが、参戦した数々の国際ラリーで活躍したことで世界にその名を知らしめたのである。

 経営危機に陥ったこともある。その時にルノーの100%資本を受け入れた。そのため、「ルノー・アルピーヌ」といったほうが耳に馴染みがあるかもしれない。

 モンテカルロラリーでの活躍だけでなく、ル・マン24時間でも好成績を収めた。オフロード/オンロードを問わず、モータースポーツを席捲。その意味では、ポルシェ「911」とイメージが重なる。それも道理で、「A110」の個性的なクーペフォルムは「911」との共通性が垣間見える。リアルスポーツモデルという点でも同質である。実際に「911」と覇を競ったのである。

 その「A110」が、世代を越えて現在に蘇った。日本の導入されたのは2018年暮れのことである。そして今、冒頭で紹介した3ラインナップを完成させたのだ。

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 今回の主役「A110S」の特徴は、標準モデルに比較して40ps増したエンジンパワーにある。1.8リッターターボの過給圧を引き上げることで、292psという数値に達している。トルクは320Nmだから、1110kgに軽量されたボディを軽々と引っ張る。筑波サーキットでドライブした印象からすると、とにかくパワフルで、強引に速度を乗せていく感覚である。

 筆者は不肖、“武闘派ドライバー”を自認しているから、500psや600psのモデルに体は慣れている。だから292psなどでは、あくびが出そうになりはしないかと心配していた。だが、結果はまったく別で、あまりにアップテンポな走りのリズムに息が上がってしまった。エンジンの爆発的な感覚は、絶対的なパワーの大小で決まるものではないことを実感した。アクセルレスポンスや回転の比例する過渡特性などにより、十分に刺激が味わえることを知ったのである。

 エンジン特性は、高回転域で弾けるタイプである。トップエンドの伸びが良い。過給圧アップだけの安易なチューニングなどではまったくなく、丁寧にパワー特性をアジャストしていることが理解できた。

 息が上がったのには別の理由もある。操縦性が刺激的なのである。エンジンを背中に積むミッドシップだから、旋回挙動はシャープである。だから、気を張っていないとシャープなその動きに反応し切れない。それでいて、タイヤは過剰にグリップを高めたタイプではないからスライドもする。限界領域では暴れ馬なのである。わずか1周のサーキットアタックをしただけで、背中に汗が流れた。

 さすがにアルピーヌを名乗るだけはある。初代が残した歴史的な活躍は、現代でも健在のようだ。かつてを偲ぶ姿形は、イメージの中のオマージュではなく、中身にも受け継がれていた。
(文=木下隆之/レーシングドライバー)

●木下隆之
プロレーシングドライバー、レーシングチームプリンシパル、クリエイティブディレクター、文筆業、自動車評論家、日本カーオブザイヤー選考委員、日本ボートオブザイヤー選考委員、日本自動車ジャーナリスト協会会員 「木下隆之のクルマ三昧」「木下隆之の試乗スケッチ」(いずれも産経新聞社)、「木下隆之のクルマ・スキ・トモニ」(TOYOTA GAZOO RACING)、「木下隆之のR’s百景」「木下隆之のハビタブルゾーン」(いずれも交通タイムス社)、「木下隆之の人生いつでもREDZONE」(ネコ・パブリッシング)など連載を多数抱える。

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