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樺太で何が起こっていたのか…直木賞受賞作『熱源』が見せる実在した2人の男の生きざま

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※画像:『熱源』(文藝春秋刊)

 今年1月に発表された第162回直木賞を受賞したのは、川越宗一氏の『熱源』(文藝春秋刊)だった。


 川越氏は、2018年にデビュー作『天地に燦たり』で第25回松本清張賞を受賞。そして、第2作目の『熱源』で直木賞に選ばれた。


 さらに『熱源』は2020年本屋大賞にもノミネート。今、最も話題を呼んでいる小説の一つだ。


 物語の舞台は、北海道の北に位置する極寒の地・樺太(サハリン)。南端西能登呂岬と北海道宗谷岬は43kmの距離で、成田空港から飛行機で約2時間と実は近い。


 時代背景は、明治維新後の明治時代から第2次世界大戦にかけて。縦に細長いこの島は、日本とロシアの領土であったり、1905年のポーツマス条約で北緯50度から南が南樺太として日本の領土になったりと、日本とロシアの間で領有権が揺れる島でもある。


 1875年、日本とロシアが結んだ樺太千島交換条約で、アイヌ民族が北海道の対雁に強制移住させられる。日本の同化政策によって苦難を強いられたのが、樺太の先住民族であるアイヌの人々だ。


 本作の主人公は、樺太出身のアイヌのヤヨマネクフ。


 彼は、アイヌのために学校をつくったり、集落の近代化に力を尽くす。


 もう一人の主人公が、ポーランド人でロシア皇帝暗殺を謀った罪でサハリン(樺太)に流刑となったブロニスワフ・ピウスツキ。この地でブロニスワフは、サハリンに住む人たちと交流し、写真や音声などで記録しながら独学で民俗学の研究をすることになる。


 現代の日本では、どう生きるかは、自分で決められる。今の時代では当たり前のことが、当時の樺太では困難な状況だった。


 アイヌの同化政策によって、自由や人権、文化までもが奪われてしまう。時代に翻弄され、民族の文化を失われそうになり、アイデンティティをも揺るがされながら、どんな状況でも人は生き続けなければならない。


 故郷を奪われ、集団移住を強いられ、天然痘やコレラで妻や多くの友人たちを亡くしたヤヨマネクフは、白瀬矗の南極探検隊に犬ぞり担当として参加している。この南極の地で、


「生きるための熱の源は、人だ。人によって生じ、遺され、継がれていく。それが熱だ。自分の生はまだ止まらない。熱が、まだ絶えていないのだから」(p.371より引用)


 と、ヤヨマネクフは語る。そんな強く生きる姿を実在した主人公二人の人生を中心に描いていく。


 当時、樺太で何が起きて、そこに生きる人たちは何を想い、どう生きたのか。今を生きる私たちも知っておくべきことを、本作は伝えてくれる。(T・N/新刊JP編集部)


※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。

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