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インバウンド急失速、安倍政権の政治的失策で観光業界が大打撃…タイ人誘致に躍起

文=小川裕夫/フリーランスライター
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市町村のインフラ整備という思わぬ恩恵

 そして中国人観光客の減少に頭を抱えるのは観光業界だけではない。地方自治体関係者はこう話す。

「地方自治体は外国人観光客の増加をあてこんでホテル税を相次いで導入しています。外国人が落とすホテル税は、多言語化や観光パンフレット・看板、Wi-Fiなどの整備費用に充てられることになっています。そのため、市民などに直接的な恩恵はないという指摘もありますが、工事などを担当する地元の業者は潤い、地域経済の維持につながっています。そうした面から見れば、外国人観光客は地方都市の経済にも大きな恩恵を与えており、めぼしい産業のない地方の市町村では外国人観光客が落とす金だけではなく、市町村がインフラ整備に投じる金も頼みの綱とされているのです」

 一方、中国人観光客は中国の春節(旧正月)の時期に大挙して訪れる。一気にたくさんの観光客がきても、地方都市では需要をさばけるほどの宿泊インフラがないため、取りこぼしも多い。それらをきちんと取り込むためには、インフラを整備することが第一だが、むやみにインフラを拡大することはできない。急拡大させれば、それは閑散期に重荷となってしまうからだ。

 そうした課題を解決するべく、ここ数年来の観光業界では外国人観光客数を増加させることよりも、観光客数の均等化を目指してきた。繁忙期・閑散期の波を小さくすれば、従業員を季節雇用から正規雇用へと切り替えることができる。観光業界は繁忙期を季節雇用のアルバイトで凌いでいるが、臨時雇用で乗り切ってもスタッフのスキルアップにつながらない。従業員を正規雇用化できれば、宿泊施設・飲食施設などのサービス向上につながり、回り回って観光業界全体の魅力向上にも結びつく。

 こうした背景もあり、観光業界は中国以外の国から観光客を誘致することを模索してきた。当初、中国人の次としてターゲットに据えられたのが、人口が多く経済成長が著しいインドネシアだった。しかし、インドネシア人観光客の取り込みはうまく進んでいない。

「インドネシアはイスラム教徒が多いので、礼拝所の整備やハラール対応といった新たな負担が生じます。もちろん、長期的にはそうした対応もしていかなければなりませんが、そこまで手が行き届かないというのが現状です。個人経営の中華屋やカフェに『ハラール対応を』と呼びかけても、遅々として進んでいません。日本において、イスラム文化は馴染みが薄く、理解が進まないのです。そうした事情も重なって、インドネシアからの観光客を取り込むことは難しいという判断がされているのです」(前出・地方自治体関係者)

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11:30更新
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