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木村隆志「現代放送のミカタ」

『麒麟がくる』中間管理職の共感を集める大河ドラマに?今後の鍵は“新・信長”か

文=木村隆志/テレビ・ドラマ解説者、コラムニスト
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NHK 大河ドラマ『麒麟がくる』」より

 ここまで放送された8話すべてで13%以上の視聴率を記録するほか、待ちきれず2時間早いBSの放送を見る人もジワジワと増えるなど、好調が続く大河ドラマ麒麟がくる』(NHK)。

「視聴率急降下」「早くも失速」なんて記事もあるが、録画を含む総合視聴率が20%超、土曜昼すぎの再放送ですら視聴率5%前後であることを踏まえても、今最も多くの人々に見られているドラマであることは間違いないだろう。

 1年間放送される大河ドラマは「主人公がまだ若く未熟な序盤が難しい」と言われ、実際に昨年の『いだてん~東京オリムピック噺~』は第6話で1桁視聴率に転落し、以降一度も2桁に回復することなく終了した。そんな不安を抱えていた序盤を乗り切ろうとしているのだから、関係者はホッとしているはずだ。

 もともと当作の主人公・明智光秀には若かりし日の史料がほとんどなく、彼を取り巻く人物たちも地味なだけに、なおさら価値は高い。『麒麟がくる』がこれらの難題をクリアし、多くの人々に受け入れられている要因は何なのか。

書き換えられた明智光秀のイメージ

 これまで大河ドラマの約4割を占めるほど人気の戦国時代が舞台だが、現在の視聴者は「戦国モノだから見てもらえる」というほど単純ではない。だからこそ、制作陣は「従来とは異なる新解釈で英雄たちを描く」ことを公言し、これまでのイメージを刷新する新たな物語を見せようとしている。

 その象徴はもちろん、主人公の明智光秀。序盤から「主君の織田信長を討った謀反人」というダークなイメージはまったく見られない。

 若かりし日の光秀は、頭脳派というより情に厚い熱血漢で、帰蝶(川口春奈)や駒(門脇麦)の好意に気づかない鈍感な男。京や堺へ行って鉄砲を調達し、松永久秀(吉田鋼太郎)を救い出し、尾張にも潜入するなど、若さゆえの危うさを漂わせながらもフットワークは軽く、剣の腕も立ち、凛々しさを感じさせる。すでに、視聴者が持つ明智光秀のイメージは書き換えられているのだ。

 大河ドラマの主人公は、1年をかけて成長や円熟を見せなければいけない分、序盤のキャラクター造形が難しい。その点、当作は視聴者に「時折、未熟さを見せるものの、どこか目が離せない魅力を感じさせる男」という好印象を与えられているのではないか。

 また、「武士としては地位が高いとは言えない」という光秀の立場もポイントの1つ。「美濃の蝮(まむし)」という異名を持つ最初の主君・斎藤利政(本木雅弘)の無理難題に戸惑い、葛藤しながらもなんとか消化しようとする姿に、時代劇のヒーローらしい力強さはなく、むしろ各所への調整役としての立場は現代の中間管理職に重なる。

 その意味では『軍師官兵衛』の黒田官兵衛(岡田准一)や『真田丸』の真田信繫(堺雅人)の立場に近いと言えるが、光秀はこの先も織田信長(染谷将太)らに振り回されるだけに、その姿は日本中の中間管理職から共感を集めるのではないか。要は「カッコイイけど、しょせん中間管理職」「中間管理職なのに、それでもカッコイイ」という、三英傑にはない等身大の魅力があるのだろう。

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