「相馬勝の国際情勢インテリジェンス」

中国、新型コロナ撲滅“勝利宣言”…中国の隠蔽で世界の初動が2カ月遅れパンデミックに

新型ウイルス肺炎が世界に拡大 武漢市の臨時病院を閉鎖(写真:新華社/アフロ)

 中国の習近平国家主席は10日、新型コロナウイルスの感染源とされる湖北省武漢市を視察し、湖北省での感染について「基本的に抑え込んだ」と宣言。「初期の取り組みの成功によって状況は安定し、湖北省と武漢市における潮目は変わった」と指摘し、新型肺炎撲滅に向けた「人民戦争」の事実上の勝利宣言を行った。

 ワシントン在住の中国人民主化運動指導者の王丹氏は自身のツイッターで「中国共産党は3月末までに新型肺炎対策の規制措置を全面的に解除することになろう」と予測しているが、今回の新型肺炎対策によって露呈された党指導部による情報隠蔽体質や、問答無用の都市の封鎖措置、住民の人権無視などの一党独裁体制の弊害が改めてクローズアップされた。

 さらに、問題なのは世界第2の経済大国である中国で、いったんこのような問題が起こると世界経済に大きな影響を及ぼすということであり、米ニューヨーク市場が1日で2000ドル以上暴落したり、日経平均株価もわずか数日で1万7000円台を割り込む局面も出てくるなど、中国に頼ると痛い目を見るということが明らかになった。

 中国との人的交流が活発だった欧州においては、新型肺炎が大流行し、米国にも波及するなど、世界保健機関(WHO)がパンデミック宣言を行わざるを得なくなっている。中国と付き合うには大きなリスクが伴うということが、今回の新型肺炎の蔓延で改めて明らかにされた。

中国当局、医師に口止め

 このようななか、オブライエン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は11日、ワシントンの政策研究機関「ヘリテージ財団」で講演し、新型コロナウイルスに関する中国政府の初動の対応について「隠蔽活動だった」と断じ、「そのせいで世界各国の対応が2カ月遅れた。中国の行動は最初から間違っていた」と述べ、感染が全世界に拡大したのは中国の責任であるとの認識を明らかにした。

 また、中国政府当局者や中国メディアが「ウイルスの感染は中国から始まっていない可能性がある」などと述べていることに対し、補佐官は「ウイルスは武漢市が発生源だ」と言明した。しかし、これに対しても、中国外務省スポークスマンがツイッターで「米軍がウイルスを武漢市に持ち込んだのかもしれない」と主張するに至っている。この発言については、中国内でも「今やるべきは他国のせいにすることなのか」などとの批判的な書き込みもでてくるほどで、客観的な事実をもとにコメントを発表すべき外務省スポークスマンとしては失格というべきだろう。

 中国の責任転嫁体質は以前から指摘されていたが、香港の英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」によると、新型コロナウイルス感染者は11月17日時点で武漢市で初めて発見されていたが、当局が発見した医師に口止めをしていたことで対応が遅れ、昨年の大みそかの時点で確認された症例数は266件に増加していたという。また、今年の1月1日には381件にも達し、中国共産党最高指導部によって事実が全面的に公表された1月下旬の時点では中国全土に感染が拡大していたとされる。いまや韓国や日本にも達し、世界中のほとんどの国に広がっている。

 このような事実を習近平指導部はどうとらえるのか。中国で感染を抑え込んだことを誇示するよりも、当初の情報封鎖を素直に認めて、中国の国民はもとより各国政府に謝罪するなど、責任を明確にしたうえで、ウイルスの感染阻止に向けた国際的な協力活動に積極的に参加すべきではないだろうか。

(文=相馬勝/ジャーナリスト)

相馬勝/ジャーナリスト

1956年、青森県生まれ。東京外国語大学中国学科卒業。産経新聞外信部記者、次長、香港支局長、米ジョージワシントン大学東アジア研究所でフルブライト研究員、米ハーバード大学でニーマン特別ジャーナリズム研究員を経て、2010年6月末で産経新聞社を退社し現在ジャーナリスト。著書は「中国共産党に消された人々」(小学館刊=小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作品)、「中国軍300万人次の戦争」(講談社)、「ハーバード大学で日本はこう教えられている」(新潮社刊)、「習近平の『反日計画』―中国『機密文書』に記された危険な野望」(小学館刊)など多数。

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