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村井英一「お金の健康法」

ネットでのマスク転売は悪くない、むしろ人助け…政府の転売規制は不足を長引かせる

文=村井英一/家計の診断・相談室、ファイナンシャル・プランナー
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「gettyimages」より

 新型コロナウイルスの影響で、マスク不足が続いています。ネットオークションでは、通常の数倍もの価格で取引されています。マスク不足に乗じて、荒稼ぎをしている出品者もいるようです。一方、病気などでどうしてもマスクが必要な人もおり、高値で売却した人のモラルを問う声が挙がっています。ただ、この批判、実はあまり適切ではありません。今この時期にマスクを出品する人は“いい人”なのかもしれません。

ネットでマスクが高騰したわけ

「オークション」という取引の仕組みは、もっとも高い価格で購入を希望した人が購入できる売買で、いろいろな取引に活用されています。その中でもネットオークションは、売る場合も買う場合も参入の制約が少ない、比較的自由な取引市場です。入札が増えると価格が上昇しますが、出品が多いと安くなります。

 価格がすぐに動くのが特徴で、需要と供給が均衡する点で価格が決まります。需要が多いと価格はどんどん上昇していきますが、「売り切れ」はほとんどありません。この点が店舗での販売と違うところです。店舗での販売の場合、人気があっても急に値上げをすることはあまりありません。品不足で大幅な値上げをすると、「消費者の足元を見ている」とお店の評判を落としてしまうからです。その代わり「売り切れ」となってしまいます。

 今回、マスク不足となったのは、多くの人が不安になって急にマスクを購入したからです。マスクが飛ぶように売れても、店舗販売では価格が据え置かれています。たいした金額ではありませんので、今までマスクをしなかった人が念のため購入したり、いつもマスクを使っている人が余分に購入して、備蓄をしたからです。急激な需要増に対して供給が追い付かず、マスク不足となりました。スーパーやドラッグストアの店頭では、値上げこそしていないものの完売状態で、購入することができません。

 一方、ネットオークションでは常に出品はありますが、価格が高騰しています。これこそが、オークションの特徴です。ネットオークションはすぐに価格が上昇しますので、今までよりかなり高い価格でしか購入できません。しかし、それでも必要とする人は購入することができます。これはとても大切なメリットです。価格が上昇すると、「念のため買っておこう」という人は購入をためらいます。医療関係者や病気の人など、どうしてもマスクが必要な人は、高い価格にはなりますが、確実に入手することができるのです。

価格が上昇するメリット

 もしネットオークションがなければ、どうしても入手しなければならない人は、ドラッグストアの前で、入荷ができるまで待ち続けなければなりません。入荷ができ、店頭に並べられたとたんに、「念のため」という人も含めて多くの人が殺到し、完売してしまうのですから。結局、どんなに必要な状況の人でも「入手できない」ということになります。オークションという制度は、価格の変動で、「本当に必要としている人」と「念のために買う人」を選別しているのです。

 価格が上昇すると、「生活用品の入手にまで貧富の格差が影響する」との批判があります。確かにその一面はあります。しかしマスクのような生活用品では、富裕層ばかりが買い占めるということはありません。価格が上昇したら、富裕層であっても、不要な購入は避けるでしょう。使いきれないほどのマスクを購入しても意味がないからです。

 さらにネットオークションには、価格の上昇によって、供給を増やすというメリットもあります。在庫がある会社は、ここぞとばかりに出品を増やすでしょう。自宅に未使用のものがたくさんある人も出品するかもしれません。その結果、出品が増えてくれば、価格は下がり、必要としている人が購入しやすくなります。

マスク・バブルが発生か?

 ただ“バブル”のようになると、状況が変わってきます。「もっと価格が上がったところで出品しよう」と、転売目的で買い占める会社や人がいるからです。今回マスクが高騰しているのも、転売目的の購入が影響しているようです。

 しかし、これは長続きしません。転売目的の人は、価格が上がっているうちに売り切らなければなりません。転売目的の人が増えると出品が増えて、いずれは需要と供給が逆転し、価格が下がりだします。転売目的の人は、あわてて売りに出ますので、価格は一挙に下がることになります。

 株式と違い生活用品は、大量な在庫は負担でしかありません。早く売り切る必要があり、売りが出やすいのです。株式でもバブルは崩壊しますが、生活用品のバブルはもっと早く崩壊します。うまく売り逃げて大儲けをした人もいるでしょうが、実際は損失となる人のほうがはるかに多いでしょう。マスクもすでに価格の上昇は止まっており、価格が上昇をしてから転売目的で購入した人の多くが損失を抱えていると推測されます。

 このたび、政府はマスク転売に規制を掛けますが、供給不足の時に供給を制限することになり、マスク不足を長引かせる可能性があります。早急にバブル退治をするには、むしろ購入に制限を掛けるほうがよいでしょう。「1回の購入は1人1箱まで」のような規制で、需要を抑えるのです。実際に台湾で実施され、効果を挙げています。マスクの価格を上げている原因は、売却(転売)ではなく、“買い占め”なのです。

 病気のためにどうしてもマスクが必要で、このところのマスク・バブルの高値で購入した人にとっては気の毒ですが、それでもネットオークションでなければ、入手すらできません。その意味では、ネットオークションによって助けられた人はいるでしょう。ネットオークションで価格が高騰しているのを見て自宅の備蓄を出品した人は“人助け”をしたとも言えるわけです。

(文=村井英一/家計の診断・相談室、ファイナンシャル・プランナー)

村井英一/家計の診断・相談室、ファイナンシャル・プランナー

村井英一/家計の診断・相談室、ファイナンシャル・プランナー

ファイナンシャル・プランナー(CFP・1級FP技能士)、宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー、証券アナリスト、国際公認投資アナリスト。神奈川大学大学院 経済学研究科卒業。
大和証券に入社し、法人営業、個人営業、投資相談業務に13年間従事する。
ファイナンシャル・プランナーとして独立し、個人の生活設計・資金計画に取り組む。個別相談、講演講師、執筆などで活躍。

Facebook:@eiichi.murai.39

Twitter:@coreca

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