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永濱利廣「“バイアスを排除した”経済の見方」

やっぱりMMT(現代貨幣理論)は万能ではないことの説明…主流派経済学との根本的違い

文=永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト
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 事実、国際金融論が専門のハーバード大学ロゴフ教授は、2019年4月のIMF本部の講演で「MMTは経済理論とすら呼べない」と酷評している。また、パウエルFRB議長やサマーズ元財務長官らも含め、主流派経済学者はMMTを「異端の経済理論」としている。

主流派経済学者も財政出動容認

 日本の政府債務はGDPの240%に達し、主要先進国で突出して高い。しかし、円建ての日本国債を日銀が4割以上買い上げるだけでなく、民間貯蓄を裏付けとした国内の金融機関等が買い入れることで長期金利はマイナスである。そして何よりも、低インフレが依然として解消されていない。

 そこで注目されたのが、完全雇用と物価安定を達成するには金融政策ではなく、財政政策への依存度を高める必要があるとする現代貨幣理論(MMT)である。MMTでは、完全雇用の機会を作るのは金融政策ではなく財政政策である。このためMMTでは、インフラや教育、研究開発へ投資することで国の長期的な潜在成長率が高まるとしており、景気が回復すれば、政府が保証した雇用は民間部門に移り、財政赤字も縮小するとしている。

 実際、MMTの提唱者であるニューヨーク州立大のケルトン教授は、日本経済新聞社の取材で「日本が『失われた20年』と言われるのはインフレを極端に恐れたからだ」と述べており、日本がデフレ脱却を確実にするには財政支出の拡大が必要との認識を示している。

 また、MMTではハイパーインフレ懸念への対応も必要となる。実際にケルトン教授は、財政拡張策にインフレ防止条項を入れることを提唱している。例えば、5年間のインフラ投資計画を通したとしても、2年目にインフレの兆しが出れば支出を取りやめるべきと提案している。つまり、MMTは財政で物価をコントロールすると結論付けているのである。

 こうしたMMTほど異端ではないが、主流派の経済学者も長期では財政再建が必要としながらも、流動性の罠にはまり金融政策が効かない現状では、景気刺激のための財政出動を容認している。実質金利が低い環境では国債を発行してインフラ整備等をすべきと主張してきたサマーズ氏らも「想定より財政余地はありそう」と認めている。また、MMTを批判していたMIT(マサチューセッツ工科大学)名誉教授のブランシャールPIIE(ピーターソン国際経済研究所)上級研究員も「長期金利が成長率を下回る環境にあれば財政拡張できる」と指摘している。

流動性の罠から脱すればMMTは困難

 特にブランシャール氏は、2019年5月に公表したPIIE客員研究員の田代毅氏との共同執筆の政策提言の中で日本経済のデータを分析し、「日本は財政均衡を忘れて無限の将来まで財政赤字を出すべき」としている。そして、2019年10月に実施された消費税率の引き上げを中止する代わりに、新たな財政政策で財政赤字を増やすように要請していた。

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11:30更新
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