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山陽新聞会長、地元・加計学園の理事だった…記事見出しで「加計」使用避けるルール

文=編集部
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 ところが、事実は違った。三宅氏は次のように話す。

「編集局内で学園への『忖度』疑惑が噴出したのが、山陽新聞労働組合と会社の話し合いでした。18年6月5日の『生産活動協議会』で、労組書記長が同社取締役に対して『加計報道のあり方』について質問したことが端緒です。

 当時、加計学園問題は正念場を向かえていました。にもかかわらず、山陽新聞の紙面はほとんどが共同通信の配信原稿が使われていました。しかも、共同原稿の整理作業(見出しなどをつける編集作業)では、『加計』という言葉を使わないような暗黙の決まりがあったそうです。

 本来であれば1面にいくようなニュースでも、内政面(2、3面)に掲載するなどワンランク下の扱いをしていたそうです。労組はこれを問題視し、きちっと地元紙として取材、編集すべきではないかと問いました。これに対して、会社幹部は共同原稿が(内容的に)偏りすぎているのでバランスを取っているなどと説明しました」

 一般論だが、共同原稿に不備がある場合、地方紙は自社の記者を使って補足取材をさせて再構成したり、ゼロから取材をして独自記事を出稿したりする。そもそも共同原稿の真偽や論調に疑問があるのなら、その原稿の掲載を見送るのが自然だろう。5W1Hの明記を旨とする新聞社で、特定の固有名詞を使用しないで見出しをつくって掲載し、「バランスを取る」という編集方針は奇妙だ。三宅氏は次のように続ける。

「安倍首相は加計孝太郎氏と古くから懇意にしていたことは事実でしょう。しかし、安倍首相は加計学園が獣医学部を新設する意向を知ったのは、国家戦略特区会議で獣医学部新設校に決定された2017年1月20日で、それ以前は知らなかったという説明をしました。

 そんななか、愛媛県の記録が公表されました。記録には2015年2月25日に安倍首相と加計理事長が会い、獣医学部新設計画に首相が前向きな姿勢を示したとの記載があったのです。当時の報道関係者は誰もが、事の真偽を加計理事長に聞いてみたいと思っていました。ところが、加計理事長はいっこうに姿を現しませんでした。唯一、メディア関係者で声を聞く機会があったのは越宗氏だったのではないかと思います」

加計理事長の会見で外部のメディアを締め出す

 労使の会議後の同年6月19日、加計理事長は岡山市北区の学園本部に騒動以来はじめて姿を見せ、記者会見を開いた。会見で加計理事長は愛媛県作成の文書に記載された安倍晋三首相との面会について「記憶にも記録にもない」と否定。学園事務局長が虚偽の情報を愛媛県側に伝えたと釈明した。

 そして、この記者会見でも山陽新聞は重要な役割を果たした。この会見を仕切ったのが幹事社である同社だったのだ。この記者会見には、地元記者クラブ加盟の会員しか参加できず、多くのメディア関係者が締め出された。

「あの会見が、この問題のターニングポイントになったと思います。稚拙なやり方ではありましたが、結果としてこの問題は収束に向かいました。報道も縮小していきました。ちなみに翌日の山陽新聞の1面はサッカーワールドカップと前日に発生した大阪の地震が掲載され、この会見の記事はありませんでした。

 そもそも加計理事長はなぜ、越宗氏を名指しで学園理事に据えたのでしょうか。また越宗氏はなぜ理事を受けたのでしょうか。越宗氏は編集出身の人間でしたが、社長就任以降は落ち込む販売部数や広告対策のために各業界団体の役員に名前を連ねるようになったと聞きます」(三宅氏)

加計学園の理事には岡山県知事の父の名前も

 それでは現在の加計学園の役員の面々を見てみよう。

理事長 加計晃太郎

副理事長 加計役

専務理事 北村良人

理事 柳澤康信(岡山理科大学学長)

   河野伊一郎(倉敷芸術科学大学学長)

   木曽功(千葉科学大学学長)

   越宗孝昌

   加計正弘

   村田誠四郎(SID創研代表取締役)

   伊原木一衛

監事 唐井一成

   川添利賢

 SID創研は加計学園の子会社だ。理事で学園や加計家と関係がないのは、越宗氏と伊原木氏の2人のみ。ちなみに伊原木一衛氏は岡山市の百貨店の天満屋前取締役会長で、現岡山県知事の伊原木隆太氏の父だ。学園のコネクションが全県に及ぶものであることがあらためてわかる。

 加計学園と岡山県の関係について、同県経済団体関係者は話す。

「地元の政治家や事業家が政権中枢に近ければ、新規事業への支援や公共事業誘致を陳情します。どこの地方でもやっていることですし、地方経済はそのように回っています。今回の一件はその延長線上に過ぎません。越宗さんと山陽新聞もそう。地元のことを考えてくれる自民党岡山県連と現政権を支持しているだけでしょう。

 岡山の経済界は努力して地元政治家を応援しています。加計学園も、何度も獣医学部新設にむけてチャレンジをしていたのに、岩盤規制の壁に跳ね返された。首相との関係がどうなのかは知りませんが、それを突破するために持てる限りのコネを使って地元に仕事を持ってきただけのことです。そもそも政府と近いことに何か問題があるんでしょうか」

 政権やそれに付随する事業者との癒着、権力とメディアの立ち位置、記者会見のあり方。いずれも政府の新型コロナウイルス感染症対策でも話題になったテーマだ。加計学園疑惑からは、今もなお日本社会のいびつな構造を透けて見ることができる。

(文=編集部)

 

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