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関電、新会長に前経団連会長・榊原氏就任で調整…金品受領問題で“過去の呪縛”と決別

文=編集部
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19年10月、会見に応じた当時の八木誠会長(左)と岩根茂樹社長(写真:日刊現代/アフロ)

 世界保健機関(WHO)は、新型コロナウイルス感染症について「パンデミック(世界的大流行)」と宣言した。日本は消費増税と新型コロナのダブルパンチで令和の大恐慌に突入する懸念も指摘されている。今年6月までに就任する新社長は、暴風雨に向かって船出することになる(以下、文中に就任日の記載がない場合は4月1日就任)。

日本電産は日産元副COOの関氏

 カリスマ創業者、永守重信会長兼最高経営責任者(CEO)が白羽の矢を立てたのは、また社外の人材だった。日本電産は日産自動車の関潤副COOが、社長執行役員兼COOに就く。永守氏が日産から引き抜き、社長に抜擢した。

 現在の吉本浩之社長は副社長に降格する。「吉本氏は販売は強かったが、文系でものづくりに弱い。ものづくりのプロを招かないといけなかった」。永守氏は社長交代の理由をこう説明した。吉本氏が文系であることは最初からわかっていた。

 社長交代を考え始めたのは、米中貿易戦争などを背景に業績が伸び悩み始めた19年夏ごろだという。「吉本氏の経験が足りなかった。経験がないと人心掌握は難しい」とみて、関氏を後継者として口説いた。

 永守氏は2年前に、同じ日産の海外子会社の社長を歴任した吉本氏に社長の椅子を譲った。主要役員が集う「COO会議」で経営課題を議論し、永守氏の決裁を得る集団指導体制に移行した。永守氏はこれについて「創業以来、最大の間違いだった」と指摘した。

 今回の人事でシャープ元社長の片山幹雄氏は副会長から副社長に、宮部俊彦副社長、佐藤明副社長の2人は取締役専務執行役員に降格する。永守会長兼CEOと関新社長兼COOに権限を集中させ業績回復を目指す。電気自動車(EV)用駆動モーターなど車載事業の成長を加速させ、30年度に売上高10兆円を達成するシナリオは、関体制がスタートする前からハードルが一気に高くなった。

IHI、川重は傍流から社長

 IHIは井手博常務執行役員が6月末の株主総会を経て社長に昇格する。満岡次郎社長は代表権のある会長に就く。航空エンジンやターボチャージャーなどに強みを持つIHIで、資源関連の営業が長い、事務系の井手氏が社長に就くのは異例だ。社長は満岡氏まで航空の技術系トップがタスキをつないできた。航空・防衛・宇宙事業が連結営業利益の半分以上を稼ぎ出すIHIの大黒柱だからだ。営業畑出身の井手氏が就任するのは、液化天然ガス(LNG)、機械、自動車など幅広い分野で新規事業を育成し、海外の顧客を開拓する狙いがある。

 川崎重工業も従来とは異なる分野から社長を登用する。橋本康彦取締役常務執行役員が6月下旬の株主総会を経て社長の椅子に座る。金花芳則社長は代表権のある会長に就く。新社長の橋本康彦氏は、川重の主流の鉄道や航空宇宙事業の出身ではない。精密機械・ロボット事業出身の初めてのトップだ。半導体ロボットや協働ロボットを立ち上げた手腕に期待がかかる。

 日立造船は三野禎男副社長が社長兼COOになる。谷所敬会長兼社長は代表権のある会長兼CEOになる。新社長の三野氏は環境事業出身。ゴミ焼却発電施設の採算は良いが、海外が手薄。海外にごみ処理プラントをどうやって売り込むかが喫緊の課題だ。

 総合重機各社は造船の衰退と石炭火力への逆風という2大泣きどころを抱えており、生き残りを賭けた構造改革が急務だ。本流以外からトップが輩出するのは、過渡期特有の現象である。

TOTO、エプソンは本流から

 TOTOは清田徳明副社長が社長に昇格する。社長交代は6年ぶり。喜田村円社長は代表権のある会長に就く。清田氏は生産畑が長く、温水便座「ウォシュレット」の開発に黎明期から携わってきた。喜田村氏が主導してきた中国、ベトナムを軸に「ウォシュレット」のアジア展開を進める。グローバルな成長のドライブ役を「ウォシュレット」が担う。20年4月、タイで現地生産を始めるほか、22年にはベトナムに第4工場を建設する。

 セイコーエプソンは小川恭範取締役常務執行役員が社長になる。碓井稔社長は代表権のない会長に。社長交代は12年ぶりだ。碓井氏はインクジェットプリンターを中心に事業の多角化に取り組んだ。小川氏は碓井氏と同じ技術出身で、主力の1つとなっているプロジェクター事業に携わってきた。

 三井化学は橋本修取締役専務執行役員が社長に。淡輪敏社長は代表権のある会長に。社長交代は6年ぶりだ。三井化学で50代の社長が就任するのは初めて。歴代社長の多くが本流される石油化学品など基礎化学の出身であるのに対して、橋本氏は不織布など機能化学品の出。自動車向けなど高機能材料に一層注力することになる。

迷走を続けた関電のトップ人事決まる

 関西電力のトップ人事は迷走した。役員らが高浜原子力発電所の地元である福井県高浜町の元助役から多額の金品を受け取った問題が19年9月に発覚。同10月、八木誠会長は辞任。岩根茂樹社長は、弁護士らでつくる第三者委員会による報告書が提出される日に辞任すると表明していた。

 社外取締役を中心とする人事・報酬等諮問委員会と臨時取締役会は3月14日、森本孝副社長が後任の社長に昇格する人事を決めた。森本氏は企画畑出身で「人財・安全推進室担当」として人材戦略などを指揮した。

 弁護士でつくる第三者委員会は、14日午前、関電に調査報告書を提出した。経営の透明性向上のため会長職は外部人材の活用を提言した。関電は提言を受けて、すでに東レ出身で前経団連会長の榊原定征氏に会長就任を打診していたが、3月19日、榊原氏は就任要請を受諾した。6月の株主総会を経て、非常勤の取締役会長となり、社長以下を監督する。関電は6月の株主総会で、社外取締役の権限を強める「指名委員会等設置会社」への移行を決める。

 中部電力は林欣吾専務執行役員が社長に昇格する。勝野哲社長は会長、水野明久会長は相談役に就く。社長交代は5年ぶり。林氏は営業畑出身。「電気やガスといった枠を越え、新たなビジネスモデルをつくっていきたい」と抱負を述べている。

 東北電力は樋口康二郎副社長が社長となり、原田宏也社長は代表権のない取締役に退く。体調不良が理由だ。20年6月の株主総会後に取締役を退任し、特別顧問となる。樋口新社長は女川原子力発電所2号機(宮城県)の再稼働が最重要課題となる。

三菱UFJの新トップは初の理系

 三菱UFJフィナンシャルグループ(MUFG)ではメガバンク初となる理系出身のトップが誕生、亀沢宏規副社長が社長兼CEOになる。亀沢氏は産官横断の量子コンピュータ開発責任者を任されるなど、理系の知見・知識が高く評価された。

 デジタル化が進む金融サービスで、メガバンクはIT企業との激しい競争にさらされている。亀沢新社長は金融界のリーディングカンパニーのデジタル化をいかに加速させるか手腕が試される。

 三毛兼承社長は代表権のある副会長に就任するとともに、兼務していた三菱UFJ銀行の頭取に専念。平野信行会長は続投する。亀沢氏は三毛氏より入行年次が7年若い。持ち株会社と子会社である銀行のトップ年次が逆転するのは初めて。頭取を経験していない初の持ち株会社の社長でもあり、初ものづくしだ。理系初のトップには旧弊の打破の意図が込められている。

 りそなホールディングス(HD)は、大手銀行で初の平成入行のトップが登場する。南昌宏取締役が社長に昇格する。東和浩社長(りそな銀行頭取兼務)は、それぞれの会社の代表権のない会長に退く。南氏は大手銀行グループで最年少のトップとなる。りそなはメガバンクと異なり、海外の収益源が乏しい。新しい顧客の開拓や手数料収益をどう上積みするかにかかっている。

 HD傘下のりそな銀行社長には岩永省一HD取締役。同じく、福岡聡HD取締役が埼玉りそな銀行社長に就任する。3人の新社長は出身行は異なるが、そろって1989(平成元)年入行の54歳。南、福岡両氏は旧あさひ銀行(あさひ銀行の前身は埼玉銀行)、岩永氏は旧大和銀行の出身。大和、あさひの両行が合併して、りそなが発足したのは2002年。その翌年5月に実質国有化に追い込まれた。金融再編後の旧行対立の“しがらみ”のない経営陣が大手銀で初めて誕生する。国有化後のりそなは3メガバンクとは対照的に、赤字決算が一度もなく、2015年に公的資金を完済した。りそなから目を離せない。

イオンはデジタル化、H2Oはスーパーの立て直し

 イオンは3月1日、吉田昭夫副社長が社長に昇格した。創業家出身の岡田元也社長は、代表権のある会長に就いた。社長交代は実に23年ぶりのことだ。岡田氏はイオングループを流通最大手に成長させたが、近年は米アマゾンなどネット通販が台頭。デジタル化の遅れに、強い危機感があった。吉田氏は19年3月からデジタル事業の担当となり、英の大手ネットスーパー最大手、オカドグループとの業務提携をまとめ上げた実績がある。イオングループ内には、岡田氏の長男、岡田尚也ビオ・セボンジャポン社長がいる。吉田氏は尚也氏がイオン社長になるまでの中継ぎとみられている。

 エイチ・ツー・オーリテイリング(H2O)は、傘下の阪急阪神百貨店社長の荒木直也氏が持ち株会社の社長に持ち上がる。荒木氏は阪急うめだ本店を関西随一のデパートに育てた。百貨店での成功体験を生かし、苦戦している食品スーパーのイズミヤや阪急オアシスの立て直すことができるかどうかが最初の試金石となる。鈴木篤社長は会長になる。

BusinessJournal編集部

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