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(3)日本以外の国の立場
各国の新型コロナウイルスの感染状況、終息状況が異なるなかで、世界中の人々が集まる東京に、五輪だからといって観戦に来るだろうか。たとえWHO(世界保健機関)が終息宣言を出したとしても、未知なことが多い新型コロナウイルスである。危険を承知の上で、東京に来る人は、アスリートの家族や関係者に限られるだろう。
送り出す各国の立場としても、せっかく収まった新型コロナウイルスを再び持ち込まれるようなことがあってはならない。東京五輪を観戦に行くこと自体を自粛するよう国民に呼びかける可能性もある。
決断が遅くなれば世界から批判
日本側が開催にこだわる理由は、世界中から観光客が集まる五輪の経済効果を期待しているからだろう。箱物はすべて完成しているので、箱物の経済効果は終わっている。もし、観光客が半減、あるいは、ほとんど来ない五輪を開催するなら、開催する意味がなくなる。それなら1年あるいは2年後に、世界中の人々が安心して来日できる環境をつくって迎えることこそ、本当の「おもてなし」といえるのではないだろうか。
政府も関係者も、国民も、皆、東京五輪開催はほとんど無理だと思っている。そうであれば、延期または中止の宣言をできるだけ早くしたほうが良い。それは、アスリートのためでもあり、日本のためでもある。早ければ早いほど、痛みは小さく済み、処置も早くできるので回復も早くなる。
五輪がなくなれば、北海道は札幌で予定通り北海道マラソンを開催すればよい。開幕が延びたプロ野球は日程に余裕ができる。開催しないことで救われる面もある。「まだ4カ月ある」のではなく「もう4カ月しかない」のだ。もしも安倍首相が3月中に「東京五輪延期」を宣言すれば、世界中から称賛されるだろう。しかし、それが遅くなればなるほど「そんなこと当然じゃないか。なんでもっと早く言わなかったのか」ということになる。WHOやIOCに期待していても、おそらく何も結論は出ないだろう。開催国の責任として、一刻も早く延期を表明するべきである。
(文=垣田達哉/消費者問題研究所代表)