NEW
木村隆志「現代放送のミカタ」

『スカーレット』視聴率以上に評価される“攻めた朝ドラ”に…描き続けた喜美子の喪失感

文=木村隆志/テレビ・ドラマ解説者、コラムニスト
【この記事のキーワード】

, , , ,

『スカーレット』視聴率以上に評価される攻めた朝ドラに…描き続けた喜美子の喪失感の画像1
連続テレビ小説『スカーレット』|NHKオンライン」より

 3月28日の最終回に向けて、いよいよクライマックスに突入した朝ドラスカーレット』(NHK)。

 全話平均視聴率は8作ぶりに20%台を下回ることが濃厚など、手放しで「成功した」とは言い難い。しかし、ネット上の盛り上がりはここ数年間でもトップクラスであり、その過半数を称賛が占めるなど、「記録よりも記憶に残る作品」と言えるのかもしれない。

 まもなく迎える最終回を前に、『スカーレット』はどんな物語だったのか? 川原喜美子(戸田恵梨香)はどんなヒロインだったのか? そして、どんな結末が予想されているのか?

 クライマックスをより楽しむために、一足早く作品の全体像を見極めていきたい。

近年ではまれに見る地味なヒロイン

 昨年10~12月に放送された前半パートを振り返ると、喜美子は苦労続きだった。幼い頃は、漢字が読めず給食費も払えないほどの貧乏暮らしの中でも家族のために尽くし、中学卒業後は単身大阪へ。女中として懸命に働き、実家にお金を送っていた。

 そこで喜美子は美術学校への進学を夢見るようになり、女中の仕事に加えて内職もこなすが、家族の窮状を知って信楽へ戻ることに。「丸熊陶業」の社員食堂で働くことになるが、意を決して深野心仙(イッセー尾形)に弟子入りし、絵付けの修行を始める。しかし、絵付け師として歩み始めた頃、経営方針の変更で絵付けの仕事が減り、師匠との別れを余儀なくされてしまう……。

 ここまで喜美子に朝ドラのヒロインらしい幸せはほとんど訪れず、「夢や目標を抱いても、すぐにくじかれてしまう」という、つらい人生続き。辛抱の日々でも家族を思い、ひたむきに生きる喜美子の姿は、近年の朝ドラヒロインには見られない地味なものだったが、女性視聴者を中心に支持を集めた。喜美子は『おしん』に象徴されるように、「往年の朝ドラらしいヒロイン」とも言えるだけに、当然なのかもしれない。

 風向きが変わり始めたのは、前半の物語も終わりが見えた12月。喜美子は丸熊陶業の商品開発室で働く十代田八郎(松下洸平)から陶芸を教えてもらうことで急接近し、ほどなく相思相愛の仲になる。「独身の女性と2人きりになるのはよくない」「交際女性以外は下の名前で呼ばない」という、喜美子よりさらにまじめな人柄の八郎に女性視聴者たちは熱狂した。

 八郎は朝ドラ史上に残る誠実な男性像であり、演じる松下洸平が「朝ドラ定番の若手イケメン俳優ではない」という意外性も加わって、喜美子との恋愛は大盛り上がり。これまで喜美子をさんざん振り回してきた父・常治(北村一輝)からの反対を受けたが、2人はめでたく結婚し、独立して「かわはら工房」を立ち上げた。ここが、『スカーレット』の中で最高の幸せなシーンだったのではないか。

 前半パートの最後で、喜美子はようやく陶芸家としての第一歩を踏み出した。つまり、女性初の陶芸家を描く物語であるにもかかわらず、前半パートでその片鱗はほとんど見られなかったのだ。アンチ視聴者から「地味」と揶揄された最大の理由は、成功とはほど遠い晩成型の物語によるものだろう。

『話しかけなくていい! 会話術』 「話がうまい人」になる必要はない。無言でも、ひと言でも、人に好かれるための画期的コミュニケーション術! amazon_associate_logo.jpg
『嵐の愛され力~幸せな人生をつかむ36のポイント~』 嵐に学ぶ人から好かれる、人を好きになれる人間力の磨き方。明日から使える36個の“○○力”。年齢・性別を問わずマスターできる。 amazon_associate_logo.jpg
プレスリリース入稿はこちら サイゾーパブリシティ