ビジネスジャーナル > 企業ニュース > 報じられないコロナ自殺者急増の懸念  > 2ページ目
NEW
片田珠美「精神科女医のたわごと」

報じられない“コロナ自殺者”急増の懸念…中小企業倒産→失業問題への経済対策急務

文=片田珠美/精神科医

 新型コロナウイルスの治療薬もワクチンも開発されていない現在、感染拡大を食い止めるには、人と物の動きを制限するしかない。だから、レストラン閉鎖や外出禁止などの措置を取っている国もあるほどだ。東京オリンピック・パラリンピックについても、IOC(国際オリンピック委員会)委員が「延期は決定された」と述べたとアメリカの全国紙「USAトゥデー」で報じられた。

 この流れの中で経済活動が収縮するのは、ある意味では仕方がない。何よりも大切なのは命だからだ。しかし、こうした経済的停滞が続くと、休業や失業で収入が激減する人が増えるだろう。また、中小企業を中心に倒産が続出し、失業者が街にあふれる可能性も十分考えられる。

 そうなれば、不況( Depression )どころではなく、大恐慌( Great Depression )とも呼べる状況になるのではないか。結果的に、うつになる人も自殺者も急増するのではないかと懸念する。

 そういう事態を防ぐためにも、政府は経済対策をしっかりとやるべきだ。年間自殺者数が3万人を超えて以来、われわれ精神科医は自殺予防のための啓発活動に携わってきた。もちろん、われわれの努力だけが功を奏したわけではなく、失業率が改善したことが大きく貢献したのだとは思う。いずれにせよ、せっかく自殺者が減少したのに、また急増するような事態は何としても防がなければならない。

(文=片田珠美/精神科医)

参考文献

公益社団法人日本医師会 (編集)西島英利 (監修)『自殺予防マニュアル【第3版】地域医療を担う医師へのうつ状態・うつ病の早期発見と早期治療のために』明石書店 2014年

片田珠美/精神科医

片田珠美/精神科医

広島県生まれ。精神科医。大阪大学医学部卒業。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。人間・環境学博士(京都大学)。フランス政府給費留学生としてパリ第8大学精神分析学部でラカン派の精神分析を学ぶ。DEA(専門研究課程修了証書)取得。パリ第8大学博士課程中退。京都大学非常勤講師(2003年度~2016年度)。精神科医として臨床に携わり、臨床経験にもとづいて、犯罪心理や心の病の構造を分析。社会問題にも目を向け、社会の根底に潜む構造的な問題を精神分析学的視点から分析。

Twitter:@tamamineko

報じられない“コロナ自殺者”急増の懸念…中小企業倒産→失業問題への経済対策急務のページです。ビジネスジャーナルは、企業、, , , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!