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大阪のカジノ誘致、入札は1チームのみ…事実上の独占決定でも批判されない理由

文=編集部
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IRの候補地である大阪・夢洲(「Getty Images」より)

 新型コロナウイルス感染拡大の話題に隠れ、全国的には大きな話題とはならなかったが、大阪のIR(カジノを含む統合型リゾート)誘致の入札が事実上、1社独占という状態だったのは由々しき問題だろう。大阪府は2月14日、事業者公募を締め切った。それによると、なんと応募は日本MGMリゾーツとオリックスの共同体1チームのみという散々たる事態が明らかになったのだ。つまり、大阪が誘致に成功した場合、そのままMGMとオリックスが運営することになる。2019年の春時点では、実に7社程度の事業者が大阪IRに参画すると取り沙汰されていた。それが、なぜ続々と撤退していったのか。

「大きな理由としては、横浜がIR誘致に参戦を表明したことがあるでしょう。関西よりも市場のポテンシャルが高い関東地方で具体的な動きが出たことで、業者はより“うまみ”がある地域へと流れていったわけです。かねて、関係者間で『大阪はMGM』との声が大きかったことも、次々と業者が撤退していった一因でしょう。さらに、25年の大坂万博までにIRを誘致できる可能性が低くなったことも影響していると思います。いずれにしても、大阪府は難しい状態に立たされ、IR誘致の岐路に立たされていることは間違いないといえます」(IR議連関係者)

 仮にこのまま1社独占で話が進んだ場合、どのような事態が想定されるのか。夢洲という立地条件も踏まえて、相当なリスクがあると指摘する声もある。前出のIR議連関係者が続ける。

「このまま大阪IRの話が変更なく進んだ場合、正当な競争は望めず、事業者と行政のパワーバランスが崩れていくことが第1のリスク。1社独占の場合、事業者からの提案や価格などに対して代替案がないまま、いわば言いなりのような状況で事業が進んでいくことが危惧されます。特に埋立地である夢洲には災害リスクもあり、交通や環境面、インフラ面の整備のために、莫大な税金が投入されることが目に見えています。数社と競合の上での決定ならまだしも、今の状態では無謀としかいいようがなく、大赤字となる可能性があるます。横浜の事業者が決まった後なら、大阪に再び業者が戻ってくるかもしれません。このまま進めるのは非常に大きなリスクを伴うことを、市民や関係者はしっかりと理解する必要があります」

IR事業に入札が1社のみという異常事態、なぜメディアは報じない?

 本来、IR誘致に伴う業者の選定は、自治体が厳しい視点で行うべきだ。IR法案成立後、カジノの可否は連日報道された。だが、さまざまなリスクが想定されるなか、手を挙げたのが1社のみという“異常事態”にもかかわらず、その点について活発な議論が交わされているとはいいがたい。では、なぜメディア報道が少ないのだろうか。そこには、大阪ならではの事情があるという。

「今、大阪では万博もIRも大きな関心事ではないんです。なぜなら、大阪を実質的に支配している維新の会にとって悲願である『都構想』の住民投票が11月に控えており、その対応や活動、さらに新型コロナウイルスへの対応でてんてこ舞いな状況にあるからです。IRや万博という遠い未来のことまで手が回らないというのが、正直なところですね。だから、万博もIRも『なんとなく明るい話題』であり、細かいことをツッコむような声はほとんどないんです。

 在阪のメディアも維新の会にべったりで、批判的な記事は非常に限定的。とりあえず勢いのある維新の会の流れに乗る、という姿勢の社が目立ちます。今回のIR事業への応募結果は、大阪にとってマイナスであることは間違いないですが、逆に新型コロナウイルスのおかげで強い批判の声が上がらなかった面もありますよ。大阪市では、住民投票を見越して給食の無償化を前倒しにするなど、新型コロナウイルス対応をしっかりしている、という姿勢は出していますから」(大阪市議会議員)

 市の職員や議員たちは、新型コロナウイルスへの対応に追われ、激務をこなしている。さらに、都構想住民投票も控えており、IRや万博どころではないということだ。その影響は、大阪市以外の府内の市にも影響を及ぼしている。住民投票を担当する、別の市の関係者がいう。

「住民投票を控え、大阪市の上層部からの圧が日に日に増しています。なかには、『こんなキツイことを言われるなら、もう辞めます』という職員もいるほどです。『大阪市がこれだけ動いているのに、お前らの市はどうなってるんや』と、詰められていますよ。僕らからすれば、IRや万博、今は新型コロナと、いろんなことに対応しないといけないなか、大阪市は住民投票のことばかり。そういう上の姿勢が、単独入札という事態に陥っても悪びれることなく事業を進めようとする異常さにつながっていると思います」

 大阪にとってIRは成長戦略の一貫であり、本来であれば、誘致の経緯については厳しい監視が必要なはずだ。事業者たちに逃げられた格好となった大阪IRの未来は、市民が考えるように本当に明るいものなのか。今ならまだ、再考できる時間は残されている。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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