巨大なコロナショックのインパクト

 さらに、新型コロナウイルスの感染が拡大し、日産の事業および経営環境の不安定感は一段と高まっている。

 新型コロナウイルスは日産の生産の継続と販売の両面にかなりの下押し圧力をかけている。重要なことは、世界各国で感染を防ぐために入国制限などが実施され、人の移動が強く制限されてしまったことだ。米国などでは、原則として自宅待機を求める州が増えている。外出できなければ、経済全体での需要・供給ともに大きく停滞してしまう。欧州ではイタリアの感染拡大が深刻であり事態はより深刻だ。この問題は、日産だけでなく世界の企業にも共通するリスクだ。

 欧州、米国では、日産をはじめ各国の大手メーカーが完成車の生産を一時停止し始めた。日産はスペインにある3つの工場で約3000人の一時解雇を決めた。この決定は、新型コロナウイルスの感染拡大によって、日産の事業運営が縮小均衡に向かい始めたことを示唆する。人の移動が制限されたために、世界全体でサプライチェーンが寸断され部品調達が困難だ。同時に、感染対策のための外出自粛や企業の操業停止を受けて需要が低下してしまっている。日産など各国の製造業が生産を再開できたとしても、新型コロナウイルス発生以前の販売水準を回復することは容易なことではないだろう。

 日産はこれまで以上に厳しい状況を迎えつつあるように見える。新型コロナウイルスによる経済環境の不安定化から、コーポレートガバナンスをはじめとする経営体制と収益性の両面で、日産のリスクは高まっていると考えられる。同社は、できるだけキャッシュの流出を抑え、財務内容の悪化を防がなければならない。感染が長びけば、市場参加者を中心に日産の事業体制への不安が追加的に高まる展開は排除できない。

 見方を変えれば、新型肺炎の感染がいつまで続くかによって日産をはじめとする自動車業界、さらには世界経済にかなりの影響がある。比較的短期間で感染が収まればよいが、イタリアなどの状況を見ていると先行きは楽観できない。

国有化を検討し始めたフランス

 この状況下、ルノーの筆頭株主であるフランス政府は、自国経済を守るために、大手企業の国有化を検討し始めた。

 フランス政府が重視していることの一つとして、雇用環境の悪化を食い止めることが考えられる。新型コロナウイルスの影響から企業の生産が落ち込み、業績の悪化が深刻化すると、企業はコストを削減して、収益を守らなければならない。その結果、失業者が増える可能性がある。失業者の増加は社会心理を悪化させる。世論の不満が高まるとともに為政者への批判は増え、右派への支持が拡大する展開などが想定される。マクロン政権はその展開をどうにかして防ぎたい。

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