ゴーンの逮捕後、ルノーは経営統合を追求するよりもアライアンス体制の維持を重視した。それは、業績が悪化するなかで日産に圧力をかけ、人材が流出するなどして事業体制が不安定化することを避けたかったからだろう。人材が流出してしまえば、EVをはじめとする日産の技術力を吸収することは難しくなる。

 しかし、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、フランス政府、およびルノーが日産に配慮し続けるゆとりはなくなりつつある。事態が一段と悪化すれば、フランス政府が本当にルノーの国有化に踏み切る展開は排除しきれない。仮に、ルノーの国有化が実現した場合の一つのシナリオとして、マクロン政権がルノーの事業継続性の向上を目指して日産との経営統合を目指す展開が考えられる。そうなると、日仏の両政府を巻き込んだ利害の対立が一段と表面化し、日産の事業体制への不安等は一段と高まるだろう。

 仮に新型コロナウイルスの感染が短期間で収束したとしても、米中を中心に世界経済の成長率は低下し、各国の自動車販売にはブレーキがかかる可能性が高まっている。日産が経営体制の安定と業績の立て直しをどう進めることができるか、先行きは不透明だ。新型コロナウイルスの発生とともに、日産は正念場を迎えているとみられる。

(文=真壁昭夫/法政大学大学院教授)

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