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【新型コロナ】集団感染が懸念されたK-1決行問題、埼玉県が「自粛要請」に失敗

文=藤野光太郎/ジャーナリスト
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さいたまスーパーアリーナ(「Wikipedia」より)

集団感染が激増する中で決行された格闘技イベント「K-1」

 新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化する中で今、各国がそれぞれ「感染拡大の経緯と事情」によって、また「情況の理解と解釈の違い」によって、さらには「当該政府の思惑と施策」によって、各々異なる対策を講じながら、それぞれが危急存亡の事態に直面している。

 その真っ只中で、国内外のさまざまな場面に不測の事態や契約上のトラブルが相次いでいる。日本におけるその顕著な一例が、直近で起きた格闘技イベント「K-1 WORLD GP」のケースだ。

 感染激増の渦中で「さいたまスーパーアリーナ」での決行が予定されていた同イベントの開催に対して、集団感染を怖れた政府と埼玉県は主催者に繰り返し「自粛」を求めていた。しかし、K-1側はマスク配布や消毒液設置などの対策を講じ、3月22日に観客6500人を集めて予定通りにイベント開催を決行した。万が一のために、埼玉県は観客全員の住所・氏名・連絡先を把握するよう指示したという。

 イベント会場を訪れた大野元裕埼玉県知事は、会見で「イベントの自粛をお願いしてきた」「今後、無症状感染者が出る可能性もないわけではない」「強制的に中止させる権限はないが、こういう形でイベントが開催されたのは残念だ」とコメントした。

 K-1側は、ファンの期待にこたえたい気持ちと大赤字を回避したいために開催を決行したのだろう。集団感染のリスクに無頓着か理解が追いつかないK-1ファンは、予定通りに開催されたことを喜んだ。当然、マスメディアも世論もそのなりゆきに眉をひそめ、この“事件”が耳目を集めた。

 しかし、自治体首長の言動には看過できない点がある。この機会に曖昧な部分を洗い出し、要点を整理して問題の焦点を絞り込んでおく必要がある。後述するように、これは「一話完結」の出来事ではないからである。

「県の意思を反映できる」はずの埼玉県が「自粛要請」に失敗

 さいたまスーパーアリーナは埼玉県が所有する「公の施設」で、その運営は「指定管理者」である「株式会社さいたまアリーナ」に委託されている。指定期間は、2019年4月1日から2024年3月31日までとされている。

 そもそも、非常時の決定権は県民の資産を預かる埼玉県にある。「強制的に中止させる権限」はなくとも、埼玉県が本気で集団感染を懸念し開催を止めたければ、施設営業の一時停止を指定管理者に通告して、払い戻し等の補償を肩代わりするという選択肢もあったはずだ。

 事実、埼玉県は県民に対して、同アリーナの事業企画と運営に「県の意思を反映させる必要がある」「同社に対して県が30%超の出資をし、取締役の過半数も占めているため、運営に県の意思を反映できる」と公示しているからだ。念を押すように記されたこの文面で明らかなように、「(同アリーナの)運営には県の意思を強く反映できる」のである。

 それにもかかわらず、県知事は「残念」とコメントし、結果として「県の意思」は反映されなかった。知事の言い分は「指定管理者と利用者の契約に県は立ち入ることができないから」というものだ。

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