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【新型コロナ】五輪延期決定後に東京都の感染者数が急増…安倍政権の“長期的対策”の欺瞞

文=藤野光太郎/ジャーナリスト

 検査の範囲や数量が少なければ、膨大な検査漏れがデータから除外される。そのため、時々刻々と増えつづける感染者の実数からは遠のくばかりだ。近似値の実数を集計・分析できなければ、感染の分布を含む実態は把握できない。日本がこれまで国内外に公表してきた感染者数は、ほとんど当てにならないのである。

 これに対して、専門家からは「欧米のように検査漏れの感染者が日本に多数徘徊している、と考えるのは現実的ではない。学説に基づく致死率で死者数を割り戻せばわかる」という説明が行われている。その場合、割り戻して推定される感染者数は約6000人程度か。

 しかし、前述のように、現在治療中で表面化しない患者には人工呼吸器や集中治療室で延命中の重症者が多く、日常的な感染リスクに晒されて治療に没頭する医療従事者たちの努力と高いレベルの医療環境を持つ日本の場合、延命治療でかなりの患者がまだ持ちこたえているのが実態なのである。

 その結果、ある時期に死者数が急増すれば、その数を学説の致死率で割り戻して出た数値こそ、実は感染者数の近似値となる可能性が高いのである。前段で「いつ死者が激増するかわからない」と書いたのは、そのためだ。現在の死者数から感染者数を割り出しても、国内感染者総数の近似値は得られないのである。

 検査を抑制し続けて、結果的に感染の実態を推定できず、従って適切な致死率を割り出す母数の近似値にも向かえず、感染の地域分布も把握できない状況で、日本の執政者がなしたことは「一部休校」ではなく「全国一斉休校」という拙策だった。

重症化の原因が抗原抗体反応の過剰発生なら対策の根本的見直しも

 とはいえ、PCR検査は一時的なものであり、検査結果は「長期的な対策」の材料にはなり得ない。仮に検査結果が「陰性」と出ても、その後に感染するからである。

 PCR検査は医療現場における短期的な速攻対処であり、素早く感染者を特定して隔離・治療し、一気にウイルス感染を遮断するための判別策だ。時間が経過すれば結局、感染実態の全体像は把握できない。

 今後、感染拡大を抑えながら抗体が数年かけて広がっていけば「集団免疫」ができて、その間に治療薬とワクチンが開発されればパンデミックは終息する。日本では、厚生労働省と専門家会議が「PCR検査の抑制で医療現場における感染拡大を回避しつつ、薬の開発を待ちながら無症者間の免疫拡大を期待する」という長期的対策を立てた。

 そこには、「治療薬とワクチンが開発されれば、いずれは季節性インフルエンザと同様の伝染病として落ち着くだろう」との想定があったものと思われる。実際、免疫が拡大しないまま感染を止めてしまえば、近い将来、訪日外国人から国内にウイルスが還流し、日本は再び新型コロナ・パンデミックの危機に陥る火種を抱えることになるからである。

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