また我が国では、3月26日に米国を出発する航空便から、入国する人への「2週間の自宅待機要請」が始まることになっていた。この行動制限を避けるべく、3月25日前後は“駆け込み帰国”が殺到。多くの人が帰国、あるいは入国していた模様だ。こうした人たちの多くがそれまで滞在していたのは、患者が爆発的に発生している欧米諸国であり、それなりの数の人々が感染していたとしてもなんの不思議もない。問題があるとすれば、感染者の内訳に「帰国者」の数がきちんと含まれていないことのほうだ。

 つまり、3月下旬になって都内の感染者数が急増しているのは、「クラスター」の永寿総合病院の存在と、海外からの帰国者・入国者によるところが大きい――と見たほうが、実態に即しているようである。

 そんななか、3月27日の朝日新聞デジタルに、こんな書き出しの記事が載った。

「東京で26日、新型コロナウイルスの感染者が新たに47人確認された。25日は41人で、今後、感染の拡大が深刻化するおそれがある。同じような大都市のニューヨーク市では13日に49人、14日に48人の新規感染者を確認しており、現在の東京と似たような数字だった。だが、その後は爆発的に増加しており、26日夕の時点で、感染者数は2万3112人と、前日から3千人以上増加。死者も365人に上る」

 筆者が小学生の頃に人気のあった連載マンガ『恐怖新聞』(つのだじろう作。週刊少年チャンピオン掲載。未来の出来事を予測している同新聞の記事を読むごとに、寿命が100日縮まるという設定)を思い出してしまった。2週間後の東京に、ニューヨーク市と同じ運命が待ち受けているかのような書きぶりだ。だが、ニューヨーク市で3月13日に確認されたという肝心の「49人」の内訳は、記事中に示されていない。内訳が定かでない数字同士を単純に比較してしまっていいものだろうか。はなはだ疑問である。

「自粛要請」が解除される日はいつ?

 小出しにされる情報には、こんなものもあった。3月26日の朝、NHKが報じたものだ。

「関係者によりますと、国の対策班は都内の繁華街にある夜間営業中心の飲食店でクラスターと呼ばれる感染者の集団が発生している疑いがあり、今後も感染者の急増が続く可能性があると分析しているということです」

 これだけでは、庶民が「外出自粛」を検討するうえで、何の役にも立たない。「繁華街にある夜間営業中心の飲食店」とは、いったいどんな店のことを指すのか。銀座や赤坂あたりの高級クラブなのか、それとも新宿や池袋あたりのキャバクラのことなのか。そういえば、小池都知事も3月25日の緊急記者会見で、「夜間の外出も控えて」と言っていたが、もしかすると同じ「繁華街にある夜間営業中心の飲食店」を念頭に置いた発言だったのか。感染者が集団発生している「繁華街にある夜間営業中心の飲食店」が何軒かあって、それを国の対策班では把握しているのだろうか。感染を避けるために役立つ重要情報を対策班内にとどめ、公表を控えることに、いったい何の意味があるのか。税金の使い方としてもおかしい。

 悶々としていると、翌3月27日の夕刻、読売新聞オンラインが「銀座や六本木、高級クラブで『夜の街クラスター』発生か」と題する記事を配信した。関心のある向きは元記事をご覧いただくとして、要約すると、国(厚生労働省)のクラスター対策班が調査したところ、複数の感染者が銀座や六本木の高級クラブなどを利用していたことが判明したのだという。同記事中で、国の専門家会議のメンバーである押谷仁・東北大教授は、「人が密集していなくても、1人の従業員が近距離で多数の客に次々に接客するような場合は、クラスターが発生しやすい」とコメントしていた。私たちはこうした記事を待っていたのだ。庶民が今後の行動を考える上で大変参考になる良記事だと思う。

       ※

 説得力のある根拠をもとに、「自宅勤務」や「週末や夜間の外出自粛」を呼びかけるならまだしも、「感染爆発」「重大局面」「都市封鎖」なるショッキングな言葉で脅しながら、とても容易にはできないことを、知事の責任が伴う「命令」ではなく、一方的に都民に「要請」する――。罪のない多くの都民を「不要不急」の買いだめへと走らせたのは、この小池都知事の不用意な「要請」にほかならない。この小池氏のミスリードによって市中感染が発生していたら、取り返しのつかないところだ。

 一方、2月28日に「緊急事態宣言」を出し、北海道民に週末の外出自粛を求めた鈴木直道・北海道知事は、その2日前の26日の臨時会見で道内の一斉休校を道民に呼びかけた際、「政治判断は結果がすべてだ。結果責任は知事が負う」と述べていた。どちらが政治家としての「あるべき姿」だろうか。鈴木道知事は3月19日、「緊急事態宣言」を解除していた。小池都知事が出した「自粛要請」が解除される日は、いつだろう。「責任は自分が取る」とした鈴木北海道知事と、感染するのはまるで自己責任であるかのごとく振る舞う小池都知事。現に当社(ルポルタージュ研究所)のスタッフでさえ、小池知事の「要請」報道を耳にして、出社を一瞬ためらったという。

 一都民として、小池都知事に要請する。都民に「判断」や「決断」を委ねるのであれば、患者個人が特定されてしまう情報を除き、自分たちが集めた情報はすべて公開するよう努めなければならない。即刻実行に移すことを求める。

(文=明石昇二郎/ルポライター)

 

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