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中曽根陽子の教育最前線

近大附属中高はネットで学習継続、花まるはZoom自学室…問われる学校の存在意義

文=中曽根陽子/教育ジャーナリスト、マザークエスト代表

「政府の発表を受けて、3月2日から我々も2週間の休講を決めました。しかし、子どもたちが、家でストレスを抱えたり生活が乱れたりすることが予想できる中、課題を出すだけでいいのか、何かできることはないのかと考えて、急遽オンライン自学室を開講することにしました。」(松島さん)

 活用したのはZoom新型コロナウイルスで一挙に需要が高まっているといわれている会議システムだ。どのようにやっているのか、筆者もオンライン上で参加してみた。

 指定されたURLから会議室に入ると、自宅のさまざまな場所で勉強をしている10名ほどの子どもたちとその様子を見守る講師の様子が画面に映し出されていた。全員マイクをミュートにしているので音はしないが、様子を見ていると皆思い思いの場所で静かに勉強をしているようだ。2名の講師がその様子を見守り、必要に応じて声をかけたり、生徒からの質問に対応する。質問があるときには、子どもはマイクをオンにしてホスト役の講師に声をかる。すると、ホスト役の講師が、Zoomのブレイクアウトセッション機能を使って、担当の先生と子どもを個別のセッションルームに移動させ、そこで1対1の個別指導が行われるという仕組みだ。

 自分ひとりだと続かない勉強も、友達が勉強している様子が映っていると頑張ろうという気持ちにもなるのだろう。自学室は毎日午前10時から19時まで開けられているが、毎日200名ほどが利用している。規則正しい生活リズムを確保できると、保護者からも好評だ。

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子どもたちのために学ぶ環境を整えたかったと語る松島伸浩さん

離れていてもつながっている空間の中で、自ら勉強する習慣が身につく

「もともと、『自学できる子を育てる』ということを指導理念の一つに掲げていて、普段から1年中自学室を開放しています。また、授業の合間にも自分で勉強する自学タイムを設けています。必要に応じて質問等に答えながら、自ら勉強する習慣を身に着けさせたいという思いから、やっていることですが、こういう学びを止めたくないと思いから、オンライン自学室という発想が生まれました」(松島さん)

 4日間で生徒・保護者・社員向けのマニュアルをつくり、3月4日から始まった自学室。運営側も不慣れでバタバタしている中、10時の開講と同時に会議室に入り始めた子どもたちは、特別な指示も出さないうちに勝手に自習を始めたという。その様子を見ていて、「自ら進んで勉強する子を育てたいという我々の理念が子どもたちに届いていると感じて、嬉しかった」と松島さん。もともと自分で計画を立てて勉強するという習慣が身についていたからこそ、オンライン自学室という試みも、うまく機能したのだろうが、離れていてもつながっている感覚を持てるオンライン自習室というこの試みは、教育の新しい可能性を開く扉になるのかもしれない。

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モニターを通して生徒の様子を見守るホスト役の講師

ICT化は、100年前から変わらない学校の姿を変える

 2つの事例から、見えてきたことは、学びの主体者は子どもたちであり、大人が信じて任せれば、子どもたちは持っている力を発揮し始めるということ。そして、それを後押しするのが、ICTのさまざまな機能だということだ。

 前述の乾先生は言う。

「日本の教育現場へのICT機器の導入を遅らせてきたのは、『学校の中でしか学べない』という思い込みが強かったことと、教える側と教わる側のヒエラルキーを崩さないという圧力が強かったからです。教育の世界では、先生以外からは教わる手段がなかった明治時代から変わらない情報伝達システムが今も行われています。しかし、今は誰からでも学べる時代です。日常的に教育現場でICTが活用されるようになると、いっきに教育改革が進むのでは」

 今回の取材を通して、教育×ICTがもたらす可能性に改めて気づかされるのと同時に、これが今後学校のあり方や学び方を根底から変える起爆剤になるのかもしれないと感じた。

 思ってもみない事態が起こったときに、自分で考えて行動できるかどうかは、日頃から主体的に取り組む経験があるかどうかにかかっているが、管理だけをしていたら、決して主体性は育まれない。国が打ち出した、一人一台の端末を持たせるという「GIGAスクール構想」が、日本の教育を変える起爆剤になりうるかどうかは、大人たちの「子どもは管理しないと何もできない」というブロックを外せるかどうかにかかっているのかもしれない。

(文=中曽根陽子/教育ジャーナリスト、マザークエスト代表)

●中曽根陽子/教育ジャーナリスト、マザークエスト代表  

教育機関の取材やインタビュー経験が豊富で、紙媒体からWEB連載まで幅広く執筆。子育て中の女性に寄り添う視点に定評があり、テレビやラジオなどでもコメントを求められることも多い。海外の教育視察も行い、偏差値主義の教育からクリエイティブな力を育てる探求型の学びへのシフトを提唱し、講演活動も精力的に行っている。また、人材育成のプロジェクトである子育てをハッピーにしたいと、母親のための発見と成長の場「マザークエスト」を立ち上げて活動中。『一歩先いく中学受験 成功したいなら「失敗力」を育てなさい』(晶文社)、『後悔しない中学受験』(晶文社出版)、『子どもがバケる学校を探せ! 中学校選びの新基準』(ダイヤモンド社)など著書多数。ビジネスジャーナルで「中曽根陽子の教育最前線」を連載中。

オフィシャルサイトhttp://www.waiwainet.com/

マザークエスト https://www.motherquest.net/

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