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鈴木貴博「経済を読む“目玉”」

街中で新型コロナ感染者に偶然出会う確率をフェルミ推定で推論してみた

文=鈴木貴博/百年コンサルティング代表取締役
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 この2つのデータを参考に、日本でも先進的な医療体制がまだ崩壊せずに保たれている本日時点での致死率を(2つのうちの低いほうの)1.4%と仮定してみましょう。そうするとフェルミ推定として54人の死亡者から逆算して日本国内の感染者は3857人程度だと推論できます。うち1866人の存在は把握されているので、把握されておらず市中を出回っている可能性のある感染者は2000人程度だと概算できるのです。これがフェルミ推定というテクニックです。

 もう少し推定を精緻にしてみましょう。感染者のうち治癒して陰性になった人が日本には結構いらっしゃいます。この治癒率は、直近では判明している1866人の患者に対して22.7%です。判明している患者が時間がたって陰性になった比率ですからこれは統計的には全体にも利用できると考えましょう。そこで、この数字を使って先ほど推論した患者数のうち治癒した人を除いてみます。すると残りはだいたい1600人。

 この過程はいろいろと試してみると、推計値はより満足がいくようになります。試したうえでそれほどケタ数が変わらなくなれば、予測数値はだいたいそれぐらいだと考えるようにします。今回の記事では1600人程度という数字をフェルミ推定による「今、自分が感染したと知らずに外出している日本国内の新型コロナ陽性の人の推定人数」としてみます。

 では、このひとたちに街中で出会ってしまうリスクをどれくらいだと考えるべきでしょう。東京都を例にとって概算してみますと、ここ数日で感染者が急増したせいで全国の確定感染者の23%が東京在住です。そこでフェルミ推定した1600人の潜在感染者のうちその23%を計算すれば都内にいるのは360人程度だと考えられます。

 その360人と「運悪く飲食店で同席してしまう危険性」をどれくらいだと考えるべきでしょうか。ひとつわかりやすく表現すると、それは飲食店でめちゃくちゃ有名な芸能人が隣の席に座っている確率とだいたい同じだと考えることです。

 日本人が交通事故で死亡する数は毎年3000人程度です。現時点のパンデミックの状況であれば、飲食店で偶然1600人の感染者に出会って自分が感染してしまうのは自動車事故で死ぬのとそれほど変わらないか、やや小さい確率です。コロナ感染者とすれ違う心配をする人の気持はわかりますが、それは外出のときに「今日、車に轢かれて死んだらどうしよう?」と心配するようなものです。要するにその程度の心配なのだと私は友人に話しておきました。

再生産数が上がる可能性も

 ただ一方で間違えてほしくないのですが、気づかずに市中を出回っている人が1600人いることで、将来は確実に感染者は増えます。ひとりの感染者が何人に感染させるかという数字を再生産数といいますが、今のところ日本ではそれがおおむね1程度に抑えられていたので日本での感染者は爆発的には増えない状況にはありました。

 ただ4月に入れば「いつまでも自粛していられない」という事情からまた町に人が戻り、再生産数が上がる可能性があります。実際日本の新規感染者数も死亡者数も緩やかに増える傾向にあって減ってはいない。つまり再生産数の実態は今でも1よりもやや多いということです。

 そして今回の記事でのフェルミ推定はまだ日本の死者数が少ないという前提での話です。今後、フランスのように死者2000人、スペインのように5000人、イタリアのように10000人と状況が変わったとしたら、当然今回フェルミ推定した感染リスクも変化します。

 さらに飲食店のリスクでいえば、隣の席に感染者がいる確率は低くても、その店を感染者が同じ日に利用したというリスクはもう少し大きい数字になります。飲食店の一日の利用者数は小規模な飲食店で50人、居酒屋チェーンで150人、ファミレスで300人ぐらいですから、洗面所のドアノブやドリンクバーのボタンなど大人数が触る場所を触る確率を考えたら、その確率は50倍から100倍ぐらいに跳ね上がるかもしれません。

 つまり忘れてはいけないことは外出先では頻繁に手洗いをすることです。新型コロナの感染リスクは過度に心配することはないという今回の記事ではありますが、できる予防はしっかりとするに越したことはないということも重要なのです。

(文=鈴木貴博/百年コンサルティング代表取締役)

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