とはいえ、私たち一般庶民の願いは「普通に流通しているマスクを、それまでどおりの当たり前の価格で買いたい」だけなのである。このささやかな願いが叶うまでに、あとどれだけ待てばいいのか。

 ニーズや品薄感が高まれば、値が上がるのは世界の常識。そもそも使い捨てマスクの価格は、人件費の安い中国で作ったものを輸入していたので、安かったのである。需要が急拡大すれば、原材料費が高騰するうえに、国内で生産するなら人件費も上乗せされる。市場原理と経済原則から考えれば、新型コロナウイルス騒動が発生する前の従来価格でマスクを売るのは、赤字覚悟の出血大サービスか、ボランティア活動以外にありえない。つまり、騒動が完全に終息しない限り、従来の価格でマスクを買うのは難しい。

 しかし、機能はそのままなのにかなり高価になったマスクなら、今でも買える。ここにきてインターネット上には、マスク価格を安い順に並べて表示する「在庫速報.com」が登場。いわゆる「転売ヤー」は排除されており、マスクだけでなく、消毒用のアルコールジェルやアルコールスプレーも購入できる。難があるとすれば、手元に届くまで1~2週間ほど待たなければならないことくらいだ。

 サイトを確認した3月28日時点での最安値は10枚入り税込み580円(送料別)。1枚当たりの単価は58円である。以前に箱買いしていた者からすれば、5倍から6倍に値が上がっているので、一瞬躊躇はするものの、手に入れることはできるので、買い置きのマスクが尽きた際にはこうしたサイトを利用するほかない。

国民全員にマスクを行き渡らせるのは政治の役目

 今回検証してみてわかったことは、単にマスクの生産量も供給量も需要に全然足りていない――ということだった。日本国民全員にマスクを行き渡らせることを目標とするなら、政治の介入が不可欠だ。補助金という名の税金をマスク業者に投入し、たくさん作らせるだけではなく、どうやって多くの国民の手元にマスクを行き渡らせるか、ということまでを、政治が主導してきちんと決めてかからないと、“買いだめ”の餌食になって消えるのがオチであり、マスクの感染拡大防止効果も望めない。

 政府が市場経済を無視し、マスクの強制買い上げを実施し、国民一人ひとりにマスクを無料で配給するのも、一つの手段かもしれない。だが、市場経済を上手に利用する手がないわけでもない。例を挙げる。

 今まさにマスクを必要としている人が多い現状を踏まえるならば、使い捨てマスクを「50枚1セット」の箱にして売るのではなく、「5枚で10セット」に小分けして売るのである。1人が50枚を後生大事にしまっておいては何の意味もないのだから、10人が1週間でもマスクを確実にしてもらうことを目指したほうが、感染拡大防止の面からも大変有意義だと思う。

 マスクの販売サイトにしても、「医療関係者向け」「患者向け」「一般向け」と分けて販売するやり方が考えられるだろう。「医療関係者」には、医者や看護師をはじめ、医学生や看護学生、そして医療施設や介護施設で働く職員も含めるといい。身分の確認方法は今後考えるとして、マスクが不可欠なところに効果的に行き渡らせるため、供給数や優先度を考慮しながら調節するのだ。それができるのは、まさに「政治」であり、今こそ「政治」の出番なのである。

        ※

 経済原則からすれば、よりニーズが高く、お金をたくさん払うところにマスクは流れていく。これまで安値で作っていた中国などは、よりお金を出す国に喜んで売るだろうし、品質面から「メイド・イン・ジャパンが良い」と考える国なら、中国産マスクより高値でも買ってくれる。となれば、日本国内のマスク業者であっても輸出しない道理はない。

 それだけにマスクメーカーさんには、従業員の長時間労働などによる労災発生を防ぐため最大限の配慮をしつつ、これまで以上にマスクの生産量拡大に取り組んでいただきたい。従業員が倒れれば、その先のマスク生産にも支障をきたすわけだから、何としても労災は避けてもらわなければならない。

 新聞の中には、「感染が収束に向かえば需要も消えるため、メーカーも大規模な設備投資に踏み出しにくい」(朝日新聞デジタル3月25日 17時30分)と報じているところもある。だが、今後1年は間違いなく、世界中に莫大なマスク需要があるのである。みすみす商機を逃すことなく、これからの1年で一生分を稼ぐ勢いで設備投資に勤しみ、ついでに雇用を増やしてもらったほうが、世界中で冷え切っていくばかりの景気の下支えにもなると思う。

(文=明石昇二郎/ルポライター)

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