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すでに中国で証明、「コロナ軽症者の自宅療養」は極めて危険…非現実的なガイドライン

文=明石昇二郎/ルポライター
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 詳細な内訳を自ら確認しようとはせず、行政が発表したうわべの数字だけを追いかけ、「東京都内で97人感染確認 これまでで最多に」「1日あたり初の300人超え」といったセンセーショナルなタイトルをつけた記事を書くのが「報道」だと勘違いしているような記者には、この際、新型コロナウイルス報道から身を引いていただきたいと心の底から思う。

 本当の意味での「感染経路不明」の数は、感染者本人にもどこで感染したのか心当たりがなく、感染源が特定できない「市中感染」の数であり、これから発令されるかもしれない「緊急事態宣言」の際の重要な目安なのである。決して適当に扱ってはならない言葉なのだと、肝に銘じてほしい。

新型コロナ感染は「自宅療養」で確実に広がる

「濃厚接触者」という用語も、繰り返し用いられている。感染が判明した人の周辺で暮らしていたり、一緒に仕事をしていたりして、新型コロナウイルスに感染している恐れが高い検査対象者を炙り出すため、使われている。しかし、いったいどれほどの人がこの用語の正しい意味を理解しているだろうか。

 国立感染症研究所感染症疫学センターによれば、次のように定義されている。

https://www.niid.go.jp/niid/images/epi/corona/2019nCoV-02-200206.pdf

<「濃厚接触者」とは、「患者(確定例)」が発病した日以降に接触した者のうち、次の範囲に該当する者である。

・患者(確定例)と同居あるいは長時間の接触(車内、航空機内等を含む)があった者

・適切な感染防護無しに患者(確定例)を診察、看護若しくは介護していた者

・患者(確定例)の気道分泌液もしくは体液等の汚染物質に直接触れた可能性が高い者

・その他:手で触れること又は対面で会話することが可能な距離(目安として2メートル)で、必要な感染予防策なしで、「患者(確定例)」と接触があった者(患者の症状などから患者の感染性を総合的に判断する)>

 この定義を知っていれば、患者が自宅で療養することがいかに危険であるかを、誰でも理解できるだろう。つまり、家族内でたった一人の新型コロナウイルス感染者が発生しただけで、そのほかの家族全員が「濃厚接触者」と見なされるのである。

 4月2日、厚生労働省は軽症や無症状の患者が自宅で療養するためのガイドライン(以下「ガイドライン」と呼ぶ)を公表した。新型コロナウイルス感染症は、法で定める「指定感染症」であり、陽性と診断された患者は原則、症状の軽重を問わず入院することになっている。この原則を見直し、軽症や無症状の感染者は入院せず、自宅もしくは都道府県が用意するホテルなどで療養する方針へと切り替えることを表明したものだ。

https://www.mhlw.go.jp/content/000618529.pdf

https://www.mhlw.go.jp/content/000618525.pdf

 これによると、同居している者に高齢者がいる場合は、患者と高齢者の生活空間を完全に分けるか、高齢者を避難させる必要があるのだという。でも、その高齢者も「濃厚接触者」と見なされるので、避難先は容易には見つかるまい。

 ところでガイドラインが言う「生活空間」とは、食卓や寝室、トイレのこと。ウイルスは排泄物からも検出されるため「患者専用の洗面所・トイレを確保することが望ましい」とした。いわゆる2世帯住宅でなければ、1軒の家にトイレが2つ以上あるわけがない。1つしかない場合は、患者が使用するたびに「次亜塩素酸ナトリウムやアルコールで清拭」し、「換気する」必要があるとされるが、次亜塩素酸ナトリウムやアルコール消毒液の入手が困難を極める中、どうやって手に入れればいいのか。保健所が消毒液を配給してくれるのか。

 患者は常に手洗いとアルコール消毒を行ない、外出は当然禁止。食料の買い出しに出かけられなければ、患者が一人暮らしの場合は療養以前に飢える恐れがある。だが、一人暮らしの「自宅療養」措置を禁じる規定はガイドラインの中に見当たらない。

 患者と接する家族は、家の中でも1メートル以上の十分な距離を保てという。よほど広い家でなければ実行困難だ。さらに、患者が風呂を使う際は家族の最後に入り、患者が自分の部屋から出入りする時はサージカルマスク等を着用。新しいマスクが自力で補充できなくなった時点で「自宅療養」は事実上ジ・エンドとなる。

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17:30更新
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