NEW

すでに中国で証明、「コロナ軽症者の自宅療養」は極めて危険…非現実的なガイドライン

文=明石昇二郎/ルポライター
【この記事のキーワード】, ,

 患者が住む地域の自治体は、一日に1回は患者に電話し、患者の健康状態を把握することになっている。電話を入れる時間帯は予め決めておくのだろうか。それとも、自治体の担当者の都合によるのだろうか。患者が家で一人だけになる時間帯もあるだろう。そんな時、電話に出られないほど患者の容体が急変したらどうするのだろう。看護している家族にも連絡がつかなければ、玄関の鍵を破壊して救助し、病院に救急搬送するのだろうか。海外での報告事例では、3月25日、米国サンディエゴの自宅で自主隔離中だった25歳男性が新型コロナウイルス感染症で死亡しているのが発見されたとのケースもある(4月2日付け「日経ビジネス」ウェブ版より)。

 概ね2週間が目途とされる自宅療養期間は、家族内で絶対に感染を広げぬよう配慮しつつ、患者を看病しなければならない。看病を担当する家族は1人に絞るのが理想らしい。看病に当たる家族はかなりの緊張を強いられ、精神的に消耗するのは必至である。にもかかわらず、他の家族が感染してしまった場合は、その一家の「自己責任」とされてしまうのか。それではあまりにも惨いと思う。それに、「自宅療養」措置にかかる費用は自己負担なのだという。

 そもそも、日本でも海外でも、医師や看護師でさえ感染を完全に防げていないのだから、まして一般人には至難の業であるということを前提に、物事は決めていく必要がある。

 今後発生する重症患者や重篤患者のために、病院のベッドやICU(集中治療室)、HCU(高度治療室)に余力を持たせるという「自宅療養」政策の目的自体は、理解できる。だが、そのための選択肢が「自宅療養」しかないわけではあるまい。ガイドラインでは、「自宅療養」を免除され、行政が用意するホテルなどでの療養が優先されるケースを、

(1)自宅療養で、生活空間を分けることができない場合

(2)医師や看護師などの医療従事者や、仕事で高齢者と接する福祉・介護職員などと同居している軽症者・無症状者の場合

(3)高齢者や、糖尿病・心臓や呼吸器の持病などの基礎疾患を有する人、免疫抑制剤や抗がん剤等を用いている人、妊産婦など、患者自身の重症化リスクが高い場合

としているが、いっそのこと、自ら強く希望する者以外の「自宅療養」措置はすべてやめ、「ホテル療養」に一本化してはどうだろう。それに、「自宅療養」政策がかえって感染者数を増やしてしまう危険を指摘する、次のような情報もある。

 世界最悪のペースで感染者が拡大しているイタリアに救援で入った中国の専門家チームが、「武漢の医師たちも感染拡大の初期に同じ誤りを犯した」と言及しながら、症状が軽い患者には自宅隔離生活を指示するのではなく、集団隔離施設に移すべきだとイタリア側に助言したことを、3月31日のブルームバーグ通信が報じていた。同記事によれば、武漢では2月上旬、症状が軽い患者を、オフィスやスタジアム、体育館を転用した仮設の病院に隔離し始めてから、感染拡大が劇的に鈍化したのだという。

小池都知事の「ホテル療養所」案

「軽症の方々には自宅で療養するという考え方もあるが、家族にうつしてしまう可能性もある」(4月2日付「NHK NEWS WEB」より)

 4月2日の小池百合子・東京都知事のコメントである。そして小池都知事はその翌日の4月3日、公表された厚労省ガイドラインを受け、「特に自宅で療養することが難しい人も多いと思いますので、療養所の確保を迅速に進めていきたい。まさにその作業をたったいま行っている。皆様に安心して頂けるような態勢をしっかりと組んでいきたい」(4月3日付「NHK NEWS WEB」より)と述べた。小池氏による「ホテル療養所」案の登場である。

 今や世界規模となった感染症の大流行のため、今夏に予定されていた東京五輪の開催は延期され、外国人の訪日旅行(インバウンド)が完全に止まってキャンセルの嵐に見舞われている都内のホテルを「療養所」代わりに確保するのだという。「自宅療養」政策には、同居家族がいる場合に感染を広めるリスクがあるという現実を明確に認めていた。

 すでに東京都は、軽症や無症状の感染者について、入院先の病院から宿泊施設に移動させる方針を固め、都内のホテルを確保。症状の軽い人から、順次移動させるとした。3月25日の夜、緊急の記者会見を開き、罪のない多くの都民を「不要不急」の買いだめへと走らせた「小池ショック」の大失敗を帳消しにするほどの妙手だろう。このニュースを耳にして、もしもの際の「自宅療養」の不安から解放され、ホッと胸を撫で下ろした都民は、きっと多いと思う。政治の面目躍如である。他の道府県もこれに続くことを期待したい。

(文=明石昇二郎/ルポライター)

情報提供はこちら

RANKING

11:30更新
  • ジャーナリズム
  • ビジネス
  • 総合