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ASKA、新型コロナ死滅する機械開発と発表し投資勧誘…医師が重症化の危険性を警鐘

文・構成=編集部、協力=岡田正彦/新潟大学名誉教授、医師
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ASKA公式ホームページより

 歌手のASKA(62)が開発したという「水道水をオゾン水に変換する機械」が物議を醸している。水道水にオゾンを添加し変換した「オゾン水」を対象物にスプレーすると一瞬にして殺菌が可能になるというシロモノで、大学の研究機関で検証してもらい、殺菌力を検証したという。果たして、ウイルスや細菌が簡単に死滅する物質が「人体だけに影響がない」ということがあるのだろうか。この装置の安全性をめぐってインターネット上では賛否両論の議論が続いている。

 事の発端は新型コロナウイルス感染症の拡大に伴って、ASKAが先月、次のような内容の動画をYouTubeにアップしたことだった。

「一刻も早くこの機械を世界にお届けしたい! その一心です。世界の投資家の皆さん、ぜひ僕に投資してください。世界が助かります。いま世界は新型コロナウイルスの脅威の前になす術がありません。すべての匂いを無臭化してしまう。すべての雑菌、ウイルスを死滅させてしまうという機械を思いつきまして、すでに7年前から開発に入っておりまして、2年前には開発に成功しました」

「この地球上のすべてのバクテリア、雑菌、ウイルスはオゾンによって簡単に死滅します。1ppmのオゾン濃度があれば、死滅してしまいます。われわれが今回開発した機械は、オゾン濃度5ppmまで達しました。これを全世界の皆さんのご家庭に早くお届けしたい」

「頑張って、頑張って、1万台作って3万6000円」

「全世界に公開したい。全世界の投資家が、この機械に投資していただければ、みなさんのご家庭で、ほんと数千円の価格になる。決してコロナは怖くない。コロナは(殺菌できるという)検証したか? 検証できないんです! この国では! させてもらえないんです」

週刊女性の検証記事にASKAが猛反論

 一連の動画の内容とオゾン水変換装置に関し、ネット版「週刊女性PRIME」(小学館)は3月28日、検証記事を公開。新潟大学名誉教授で医療統計の第一人者と呼ばれる医学博士の岡田正彦氏によるオゾンの危険性を指摘した。ところがASKA氏は翌29日、ブログ上で『「オゾンガス」と「オゾン水」を間違えている週刊女性』と題して次のように猛反論した。

「昨日の『週刊女性』の記事は、そもそも『オゾン水』がどのようなものであるのか、予備知識がないライターの方が、書かれた記事でした。記事の中で『博士』という肩書を持った方が、『5ppmのオゾンは人体に影響がある』と、コメントされていました。『オゾンガス』と『オゾン水』は、違うんです。ここを一緒にされては困ります」

 オゾンガスとオゾン水が違うのなら、では安全性を示す根拠は何なのか。そもそもASKAが販売しようとしているオゾン水生成器は医療機器なのか。それとも人の健康に影響を与えない健康グッズなのか。たとえばガーゼ付き絆創膏は「医療機器」(患部に直接触れるため)、体脂肪計は「健康グッズ」と、厳格な区別がある。少しでも人体に影響が及ぶものを商品化するためには、厳しい基準をクリアする必要がある。そして仮に医療機器であるのなら、厚生労働省の承認が必要になる。

独立行政法人 医薬品医療機器総合機構経営企画部広報課の担当者は「基本的に『医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律』(通称:医機法)で定められている通りに申請され、厚生労働省に認可されています。個別の商品がそれにあたるかどうかのデータはインターネット上などに公開されていません。メーカーさんに聞いていただくしかないと思います」と話す。

 ちなみに医機法第2条4項では医療機器は次のように定義されている。

「ヒトまたは動物の疾病の診断、治療又は予防を目的とし、ヒトまたは動物の構造・機能に影響を及ぼすことが目的とされている機械器具(再生医療等製品を除く)で、政令で定めるもの」

 同装置が医療機器なのか健康グッズなのか、ASKAは言及していない。改めて、岡田氏にASKAの装置を含めたオゾン関連商品の医科学的な解説をお願いした。

岡田氏の解説

 オゾン水とオゾンガスは、濃度の定義がまず違うことを理解する必要があります。美容液などのオゾン水の場合、これは血液クレンジングなどでも同じですが、1ppmは1ℓにオゾンガス1㎎が溶け込んだ状態、つまり1㎎/ℓを指します。一方、オゾンガスの1ppmは、空気1m3中に1㏄のオゾンが溶け込んだ状態を指します。これをオゾン水と同じ単位の㎎に換算すると、1ppmは約0.002㎎/ℓになります。同じ1ppmでも両者には約500倍の違いがあるのです。

 では、巷間のオゾン水関連の商品が謳っている1ppmとはどちらの数字を指すのか。実際のところ、どちらの定義が使われているのかをきちんと示していないことが大半です。

 他方、海外の論文では重量比0.2ppmのオゾン水を人の肺の培養細胞に添加する実験を行った事例があります。同実験では、試験管の中で肺の細胞を増やし、0.2ppmから1ppmまで濃度をあげ細胞の変化を分析しています。肺の細胞は、0.2ppmの段階で分裂速度が低下し、壊れはじめ、1ppmで死滅してしまうという結果でした。オゾンの怖さを表していると思います。

 ちなみに日本の法律では、オゾンの取り扱いはどうなっているのでしょうか。空気中の有害物質の濃度を規定している労働環境許容濃度では、オゾンは0.0002㎎/ℓ以下とされています。

 オゾンは放置しておくと自然に酸素分子に戻っていきます。その半減期は環境条件によって大きく異なりますが、室温20°で40分程度とされています。

 ASKAさんの例のほかにも一流家電メーカーなどが、新型コロナウイルス感染症対策グッズとしてオゾン発生器を続々と商品化しています。1時間あたり600㎎のオゾンを発生するなどとしているものがありますが、いったい有効濃度をどう換算すればよいのでしょうか。どの程度の広さの部屋で、何人くらいの人が、何時間くらいオゾンに接することを想定しているのか、明確な説明がなされていないことが多いのです。いずれにしても高濃度のオゾンは、ウイルスの死滅させる効果もさることながら、肺の細胞を傷つけ、かえって感染のリスクと重症化を促してしまう可能性があります。

 国民生活センターでは2004~09年、「家庭用オゾン発生器」に関する相談が410件寄せられたと発表しました。そのうち「利用したら気分が悪くなった」「オゾンガスが体によくないとの情報があり不安」など、安全性に関するものが67件あったそうです。そのうえで、「使用方法によっては危険なオゾン濃度となるものがあり、また、オゾン発生量等の表示を見ても専門知識のない消費者が安全に使用することは難しいと考えられた。このような現状のもとでは、購入等は避けた方がよい」との見解を示しています。

 最近では、この国民生活センターの見解に対してメーカー各社は「わが社の製品は濃度が低いので大丈夫」と反論しています。

 海外では、卵巣の感染症に対して60ppmの高濃度液体オゾンを投与した事例や、がん患者にオゾンを投与した事例などが報告されています。しかし、いずれの論文でも「1~2人の患者に投与した」という事例を示すだけにとどまっていて、副作用の有無やオゾンを投与しなかった人と比較検討した結果など、科学的なデータがありません。投与をした人、していない人の差異、投与後の経過観察、効果の持続性など必要な検証がなされていないのです。

 いずれにしても、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い不安になっている人が増えていることから、オゾンをはじめとした様々な対策商品が売り出されていますが、メーカーには基礎となる科学的な臨床データをしっかり示すなど、その安全性を明確にする責任があると思います。

(文・構成=編集部、協力=岡田正彦/新潟大学名誉教授、医師)

 

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