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小林敦志「自動車大激変!」

新車販売不振でもトヨタが“一人勝ち”できる理由…カローラ、再びベストセラーに君臨か

文=小林敦志/フリー編集記者
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トヨタ自動車の豊田章男社長(写真:つのだよしお/アフロ)

 本連載前回記事で、トヨタ自動車カローラ」について「継続的に登録車年間販売台数ナンバー1を狙っている」事情についてお伝えした。今回も引き続き、その可能性について見ていきたい。

 自販連(日本自動車販売協会連合会)による2020年3月の販売ランキングを見ると、カローラのほかにランキングベスト10に入っているトヨタ車は、今回の全店舗での全車扱い実施前から全国的に全店舗扱いになっていたモデルや、「ヴォクシー」のように「ノア」や「エスクァイア」や、「ルーミー」のように複数店扱いで、さらに「タンク」という兄弟車がある(販売台数が分散しやすい)ので、全トヨタ車が全店舗扱いとなっても飛躍的に販売台数を伸ばす余裕はあまりないともいえる。

 一方で、今までカローラ店の専売車であったカローラは、全店舗扱いにより販売台数が増える“伸びしろ”が十分にありそうだ。ただ、ネッツ専売であった「ヤリス」も今回全店全車種扱いとなるので、ヤリスはカローラと同じく伸びしろがけっこうありそうだ。

コロナショックの自動車販売への影響は?

 さらに、世間を騒がせている新型コロナウイルス問題も、カローラの継続的な年間販売トップの道を後押ししそうである。ここで、新型コロナウイルスについては罹患され亡くなられた方へのお悔やみ、罹患された方へのお見舞いを申し上げておきたい。

 現状の日本国内での新車販売の傾向は、今風にいえば“不要不急”な新車購入というものはあまりなく、“わけあってすぐ欲しい”という理由で新車を購入する傾向が目立っている。十数年乗ってきて調子があまり良くないなか、車検の有効期限が近づいた、長年乗り続けている間に致命的な故障が発生したなど、“そのとき”にどうしても必要だから新車購入をするといったパターンが目立つと、販売現場で聞く。

「“初回車検がきたから”とか“気になった新車が登場した”などといった、今すぐ代替えされる必要性はそれほどないですが、クルマへの興味が高く積極的に新車へ代替えされるお客様よりは、モデルが古くなりすぎてメンテナンスコストなど維持費が上昇したり、長く乗り続けるなかで致命的な不具合が発生したりするなど、必要性があって代替えされるお客様のほうが目立ちます。今回の新型コロナウイルス問題のような社会不安を増大させる事象が発生すれば、“不要不急”の新車への代替えは今以上に減っていくでしょう」(新車販売業界に詳しいA氏)

 2019年10月の消費税率引き上げ以降、不振傾向がやや増しているのが今の日本国内の新車販売の状況。ただ、もともと若年層を中心とした“クルマ離れ”や、高齢ドライバーの運転免許証の自主返納の加速などもあり、景気動向などに左右されずに日本国内は新車販売の不振傾向が続いているので、消費税率引き上げ後に際立って不振傾向が増しているとまではいえない状況となっている。

「新型コロナウイルス問題発生後はフリー(まったくの新規)で来店されるお客様はほぼいなくなりましたが、社会情勢に関係なく、必要性があって“そのとき”に新車の購入を検討されるお客様は、社会不安がますます増大する今後もいらっしゃることでしょう。確かに、新型コロナウイルス問題で今後は販売不振傾向に拍車はかかるでしょうが、そうかといって致命的なダメージを受けるまで深刻なものにはならないのではないかと、現状では考えております」(トヨタ系ディーラーセールスマン)

 もちろん、新型コロナウイルスによる新車の生産調整などによる供給の滞りや、緊急事態宣言発出により、発出地域の新車ディーラーの営業活動自粛も含む事実上の経済活動の停止などが起こったりすれば話は別だが……。ただ、そうなったとしても、販売統計上は深刻なダメージとなるかもしれないが、これは販売台数の上積みのための、軽自動車やコンパクトカーで特に目立つ、ディーラー名義などによる“自社登録(軽自動車は届け出)”や、レンタカーやカーシェアリングなどへのフリート販売の減少傾向がより多く統計に反映されている結果ともいえる。

 個人消費者レベルに限っていえば、繰り返すが、販売現場に致命的なダメージを与えるような販売不振までには、今のところはいかないのではないかとされている。

非常時にはトヨタ車がよく売れる理由

 このような社会不安が増大しているなかでは、より確かな買い物をしたいという判断で、国内販売シェアトップということや圧倒的な国内販売&サービス網の充実などもあり、トヨタ車全般がよく売れるといったこともあると聞く。全国規模での充実した販売ネットワークと、圧倒的なシェアでの国内トップブランドということに、消費者は平常時より安心感や信頼感を持つのが大きいとされている。

 さらに、表現は微妙だが、店頭での接客などにより“お客が新車を買うお手伝いをする”だけでなく、新車への代替えを直近では検討していなかった既納客などへ積極的な販売促進活動を行い、結果的に“新車を買ってもらう”ということをトヨタ系ディーラーは全般的に得意としているので、販売環境が悪くても他メーカー系ディーラーよりは、しっかり新車を売ることができるともいわれている。

 そして、結果的には、新車販売全体の不振傾向が目立つなかでも販売ランキング上位にトヨタ車が多数名を連ねることとなるようである。

 こうなると、抜群の知名度を持つカローラシリーズが2020年も、暦年締めとなるか事業年度締めとなるかは別としても、年間販売台数トップになる可能性は、今後社会不安がますます増大するであろうとされるなかでも、まだまだ高いといっても過言ではないだろう。

 平成には「プリウス」がベストセラーカーとなり、“平成のカローラ”などとも呼ばれた。しかし、元号が令和へと変わった今、“あのころをもう一度”ではないが、昭和時代にベストセラーカーとして名を馳せたカローラが再び令和の時代にベストセラーカーとして君臨していけるかどうか、おおいに注目していきたい。

(文=小林敦志/フリー編集記者)

小林敦志/フリー編集記者

小林敦志/フリー編集記者

1967年北海道生まれ。新車ディーラーのセールスマンを社会人スタートとし、その後新車購入情報誌編集長などを経て2011年よりフリーとなる。

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