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木下隆之「クルマ激辛定食」

“若者のクルマ離れ”は間違い?首都圏にサーキット場が林立、クルマ好きの二極化が加速か

文=木下隆之/レーシングドライバー
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「GR Garage宇都宮 つくるま工房 つくるまサーキット那須」公式サイト

 栃木県那須塩原市に3月、クルマ好きが走りを堪能できるエリア「GR Garage宇都宮 つくるま工房 つくるまサーキット那須」が完成、4月から営業を開始した。舗装されたサーキットだけではなく、未舗装のダートトラックが連結しているという。流行のドリフトも可能で、さまざまな競技に対応しているのだ。

 元は「丸和オートランド那須」で、かつてダートコースとして名を馳せた。全日本格式のダートトライアルが開催されていた由緒あるサーキットがベースである。それが完全リニューアル。トヨタカローラ栃木がネーミングライツを取得。本格的な運用が始まったばかりだ。

 なぜ、今ごろサーキットなのか――。モータースポーツファンでなければ不思議に感じるのかもしれない。世間では“若者のクルマ離れ”と騒がしい。クルマ競技を楽しむ人口が減っているとの話も聞く。日本自動車連盟(JAF)のモータースポーツライセンス取得者は増加していないとも噂されている。モータースポーツ観戦は相も変わらず人気を博しているが、自らステアリングを握って走る人々が減っていると報道されている。

 クルマはCASE(Connected、Autonomous、Shared、Electric)の潮流に流されている。通信によるコネクティビティ、自動運転、シェアリングサービス、そして動力源としての電動化を含めた造語だが、それらはクルマを所有せずに移動手段とさせる方向性がある。コネクティビティは直接ステアリングを手放すものではないとしても、シェアリングサービスは文字どおりマイカーを持たずに共有する道筋をつけるものだ。

 そんな世界がすぐそこに迫っているというのに、愛車を所有して自らステアリングを握って走るためのサーキットを、多額の資金を投じて建設する必要性があるのか――。

 筆者は、意味があるのだと想像する。CASEが迫っているからこそ、ステアリングを握って楽しみたい層が存在するのも事実。そんなドライビングファンのためのサーキットなのである。

 クルマ好きは二極化しているとも聞く。単に移動手段と割り切り、CASEの利便性を享受する層とは対象的に、だからこそ趣味としてステアリングを握りたいという欲求である。おそらく、後者が大挙して「つくるまサーキット那須」に訪れるのではないかと予想する。

 実は関東圏内にも、たくさんのサーキットが林立している。F1の開催も可能となる数十万人もの観客を集められるサーキットは、「富士スピードウェイ」と「スポーツランド鈴鹿」に限られるが、サンデードライバーが気軽に走りを楽しむためのサーキットは数多いのである。茨城県には「筑波サーキット」があり、埼玉県には「本庄サーキット」がある。「袖ケ浦フォレストレースウェイ」は千葉県だ。さらに、ゴーカート場を数えれば数かぎりない。東京から2時間圏内で20カ所ほどのサーキットが存在するのだ。山の中にあるために目立たないだけかもしれない。

 若者のクルマ離れは、進行していない――。それが筆者の肌感覚である。それをつくるまサーキット那須が証明してくれているような気がした。
(文=木下隆之/レーシングドライバー)

木下隆之/レーシングドライバー

木下隆之/レーシングドライバー

プロレーシングドライバー、レーシングチームプリンシパル、クリエイティブディレクター、文筆業、自動車評論家、日本カーオブザイヤー選考委員、日本ボートオブザイヤー選考委員、日本自動車ジャーナリスト協会会員 「木下隆之のクルマ三昧」「木下隆之の試乗スケッチ」(いずれも産経新聞社)、「木下隆之のクルマ・スキ・トモニ」(TOYOTA GAZOO RACING)、「木下隆之のR’s百景」「木下隆之のハビタブルゾーン」(いずれも交通タイムス社)、「木下隆之の人生いつでもREDZONE」(ネコ・パブリッシング)など連載を多数抱える。

Instagram:@kinoshita_takayuki_

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