急増する新型コロナウイルス感染者が病院に担ぎ込まれ、同感染者以外の病気や怪我の患者が治療を受けられなくなったり、多くの軽症感染患者が入院して先にベッドを塞ぎ、重症感染患者の治療ができなくなったりする事態をマスメディアは「医療崩壊」と呼んでいる。こうした事態を避けるべく、国や自治体は「不要不急」の外出を控えるよう市民に呼びかけたり、軽症感染患者を退院させてホテル等へ移動させ、重症感染患者のためにベッドを空ける「ホテル療養所」策が導入されたりしているわけだが、まさに「医療崩壊」はこの永寿総合病院ですでに起こっていた。

 ベッド数400床を誇り、東京・下町の中核病院でもある同病院では、3月25日から外来診療の受付を中止していた。同病院の惨状を伝える3月30日付「朝日新聞デジタル」の記事「大病院で院内感染『これ以上増えたら…』地元は危機感」によれば、

「区によると、ウイルスを外部に出さないように気圧を低くした『陰圧室』はすでに埋まり、防護服の着用や手すりの消毒などを進めているが、感染者とそれ以外の入院患者が隣り合った病室にいるケースもある」

という。

感染は「一般病棟」から拡大していた

 永寿総合病院のホームページでは「院内感染に配慮した設計」として、各病棟に陰圧の病室と陽圧の病室が用意されていることを紹介している。また、同病院には糖尿病、がん、呼吸器疾患といった重症化リスクの高い人が入院していることも、ホームページから窺い知ることができる。それでも、大規模な院内感染を防ぐことはできなかった。その理由は何なのか。残念なことに、これまでの報道でその謎を解き明かしたものはない。

 しかし、ヒントになる報道はあった。4月2日付「朝日新聞デジタル」の記事「止まらぬ院内感染の連鎖 診察・転院介しコロナ拡散か」は、台東区役所を取材した結果として、「永寿総合病院では海外からの帰国者が診察を受けたこと」があるとする一方で、「厚生労働省のクラスター班からは、今年2月にクラスターが確認された屋形船の感染者と院内感染がつながっている可能性を伝えられた」と報じていた。

 この2月の時点で永寿総合病院は、感染者への対処を誤ったのだろうか。たとえ感染者が来院していようと、そこで確実に感染拡大の芽をつぶしていれば、日本最大規模のクラスターにまで発展することはなかったのである。いくら院内感染対策の設備が整っていようと、それを有効に使えなければ“宝の持ち腐れ”にすぎないということを、永寿総合病院の「大規模院内感染」事件は私たちに突きつけていた。

 そこで4月6日、東京都の感染症対策課に訊いた。4月3日以降、永寿総合病院における感染者総数が報道されなくなっていたことに加え、4月2日、4日、5日の新規感染者数を報じた記事が見当たらなかったからである。都のホームページにも載っていなかった。すると、電話に出た担当者は、

「報道発表している以上の数字は出せない」

と、けんもほろろの応対。4月2日、4日、5日の新規感染者数も、さらには最新の感染者総数さえも教えてもらえなかった。唯一、教えてもらえたのは、都のホームページ内にある「区市町村別患者数(都内発生分)」をまとめた資料の中に、4月4日時点の累計値として「永寿総合病院関連140を含む」との記述があることだけ。実に人を食った対応である。

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