浜田和幸「日本人のサバイバルのために」

【コロナ】米国、予備役兵100万人を緊急応召…第3次世界大戦の初戦と認識し戦時体制

 第3、ポンペオ国務長官は海外に暮らすアメリカ人すべてを対象に「緊急帰国命令」を発した。表向きは「コロナウィルス蔓延の影響で民間の航空機も政府の帰国者運搬用のチャーター機も飛ばなくなる」との理由で、「早急に最寄りのアメリカ大使館や総領事館に連絡し、帰国の手段を確保するように」促した。「自由の国」を標ぼうするアメリカで国務長官が海外在住の全アメリカ人に緊急帰国を命令するということは前代未聞である。もちろん、帰国を希望しない場合は本人の自由意思が尊重されるわけだが、その帰国命令の強い口調にはただならぬ気配が感じられる。

 こうしたトランプ政権による非常事態対応にはコロナウィルスの感染拡大を防ぐための「都市封鎖」や「医療体制強化」とは別の狙いが込められているに違いない。日本における中途半端な自粛要請とは明らかに違う。そこにはあらゆる手段を講じても「超大国アメリカの地位を死守する」という決意が読み取れる。逆にいえば、アメリカの地位を脅かすほどの深刻な事態が進行しているという危機感が感じられる。

非軍事的手段による新たな戦争

 問題はそうした危機感の源泉が何かということであろう。単に新型コロナウィルスという病原菌への対応とは思えない。言い換えれば、アメリカ政府、特に国防関係者の間では、このウィルスはアメリカの社会や経済の基盤を崩壊させ、アメリカという国家の転覆を狙う非軍事的手段による新たな戦争という受け止め方をしているのである。「第三次世界大戦」の初戦というわけだ。

 海外に展開中の800カ所の米軍基地の多くで、感染者の報告が相次いでいた。現時点ではそうした報道は規制されているが、日本の横須賀基地でも米軍兵士や関係者の感染は問題となっており、厚木基地内に特別の隔離病棟を設置するなど、在韓米軍の感染者を含む患者の搬送受け入れ態勢の整備が進んでいた。

 しかし、こうした米軍内の感染拡大に関する情報はアメリカ軍の即応体制の脆弱性を露呈することになるため、今では家族を含めて感染者情報は一切表に出ない措置がとられている。それだけ事態は切迫しているということだ。

 戦争の手段にはいくつもの武器が想定される。兵士が攻め込んでくるような伝統的な戦闘行為に限らず、その前哨戦としてさまざまな「非対称戦」が繰り広げられる。例えば、経済的な手段としては保有するアメリカ国債の売却もあれば、米ドルに代わる金(ゴールド)に裏付けされた新たな国際機軸通貨の立ち上げなどもあり得る。

 また、EMPと呼ばれる電磁波兵器による通信網の破壊も想定される。通信に限らず、電力供給や交通網も一気に麻痺させることが可能である。さらには、サイバー攻撃もあるだろう。今回の感染症蔓延を受け、在宅勤務やテレワークが広がりつつある。自宅で使うパソコンや通信機器は会社内ほどセキュリティが強くないこともあり、すでに多くの企業情報や個人情報が盗まれる事件が発生している。国家の安全に関する情報も簡単に改ざんされ、悪用されてしまう可能性が高まっているといえるだろう。

 そして、目前に広がる生物化学兵器の可能性を秘めた病原菌(ウィルス)を拡散させるという新たな武器の登場である。では、こうした新たな戦争を仕掛けているのは誰なのか。国家であるのかテロ組織であるのか。その狙いは何か。そうした観点での情報の収集や分析が日本では行われていない。自分たちがそうした戦争を仕掛ける考えがないからだろうが、人類の歴史は戦争の歴史といっても過言ではない。ただ、戦争の形態は時代とともに変化している。平和を守るためには、こうした進化する戦争に関する研究も必要である。

 アメリカにせよ、中国やロシアにせよ、核兵器を開発、保有するのに劣らぬ資金と人材を投入し、それらの国々はさまざまな生物化学兵器の開発に取り組んできた。かつてアメリカはキューバやベトナムに対して大量の枯葉剤などを投下し、その後遺症は世代を超えて被害者を苦しめてきた。もちろん、日本も例外ではない。旧日本陸軍の731細菌兵器部隊は中国大陸で多くの人体実験を重ねた歴史がある。当時の日本陸軍の生物化学兵器の開発能力はアメリカを凌駕していた。そのため日本が敗戦するや、731部隊の幹部や研究者は戦争責任を免除され、アメリカ本土に渡り、米軍施設において細菌兵器開発の主導的役割を担ったものである。

私利私欲に走るトランプ大統領一族

 こうした歴史を紐解けば、日本としても生物化学兵器の廃止に関する国際条約の締結により一層熱心に取り組むべきであろう。しかし、日本からそうした動きはみられない。今から25年前に東京で起きた「地下鉄サリン事件」にしても、オウム真理教による仕業といわれているが、その実態はいまだに闇の中である。

 そもそも、アメリカやロシアの生物化学兵器の専門家によれば、「地下鉄内で撒かれた物質はサリンではない。もし、サリンなら2万人の死者が出ていてもおかしくない。死者が11人ということはあり得ない話」という。実際に使われた細菌兵器の実態がなぜか隠蔽されてしまっている。731部隊の悪名のせいか、日本では生物化学兵器や細菌兵器はタブーになっているようだ。

 しかし、それでは目の前に潜む「見えない敵」と揶揄されるウィルスの実態も暗中模索でなんら解明されないまま、ただ右往左往するだけで、そのうち開発され市場に出回るはずのワクチンや特効薬を高値で買わされてしまうのが関の山であろう。

 実際、「転んでもただは起きぬ」のがモットーで、破産倒産を何度も潜り抜けたトランプ氏は、非常事態宣言を発した裏側で、しっかりとファミリー・ビジネスのチャンスを手にしようと動いている。何かといえば、新型コロナウィルス対策のワクチンと特効薬の開発である。潤沢な政府資金を娘婿のクシュナー氏の関係する医療保険会社に流し込もうという算段だ。

 特効薬をめぐっては、中国企業は言うに及ばず、ドイツや日本の製薬メーカーもしのぎを削っている。もちろん、アメリカ企業も例外ではない。そんななか、トランプ大統領はCOVID-19対策チームを立ち上げ、ペンス副大統領を責任者に指名した。しかし、それとは別にクシュナー氏をトップとする「シャドー対策本部」の設置も認めたのである。クシュナー氏曰く「緊急時には政府機関や役人では対応が遅い。民間のエキスパートを集めて、早急な感染防止策を打ち出す」。

 すでにクシュナー氏の肝いりで、身内の関係する医療保険会社「オスカー・ヘルス」では新薬の試験を始めた。その上、診察を希望する人たちを最寄りの医療機関に紹介するアプリの開発も進めている。こうした開発に係わる経費は全額、国の緊急予備費で賄うという。

 しかも、クシュナー氏の弟の義理の父親は内科医であるが、自らのフェイスブックを通じて「自分はホワイトハウスに強力なコネがある。今回のパンデミックに関連して、何か治療法や予防法について提案があれば言ってきてほしい」とPR活動に忙しい。どう考えても、多くの人命が危機的状況に晒されているときの最高指導者やその親族がとるべき行動とは思えない。

 過去にも数々のワクチンが開発され、市場に投入されたが、副作用で想定外の人命が失われるケースも頻発している。きちんとした動物実験や治験を経ない急ごしらえの「利益優先」の特効薬ほど危険なものはないだろう。アメリカ政府も今回のコロナについては「発生原因が特定できない」と認定しているわけで、「他の病原菌に効果があった」との理由で試験的に投与されている試薬も多いといわれるが、その効果のほどには慎重な見極めが求められる。

 現時点において、アメリカ政府は「第三次世界大戦を勝ち抜く」との思いで、さまざまな戦略を打ち出している。非常事態であるがゆえに、特例的な対策も次々に繰り出されているわけだ。予備役や囚人の大量動員も然り。身内優先の特効薬の開発予算の割り振りも然り。しかし、国防関係者の危機意識と、この期に及んで私利私欲に走るトランプ大統領一族の動きには大きなギャップがある。アメリカの屋台骨を崩そうと意図する勢力は、そうしたギャップこそ超大国のアキレス腱と見なしているのだろう。

 単なる新たな感染症の蔓延ではなく、新たな戦争の始まりという危機感に基づく国防政策が功を奏するのか。超大国アメリカが「アメリカ・ファースト」と内向きになり、いまだにファミリービジネスに執着する最高責任者が権力の座にある事態を目の当たりにする現在、超大国の座を奪おうとするどの勢力が勝利するのか興味深い。一方で、目前に広がる最終戦争に対しても、「見ざる、言わざる、聞かざる」を決め込んでいる日本の敗戦国根性は残念至極である。

(文=浜田和幸/国際政治経済学者)

●浜田和幸

国際政治経済学者。前参議院議員、元総務大臣・外務大臣政務官。2020東京オリンピック招致委員。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士

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