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野村直之「AIなんか怖くない!」

GAFA、AI独占の脅威…心臓部=超高速ハードウェアの独占の可能性

文=野村直之/AI開発・研究者、メタデータ株式会社社長、東京大学大学院医学系研究科研究員
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GAFA、BATによるai心臓部支配の可能性

 グーグルが突き抜けているとはいえますが、GAFA (Google, Amazon, Facebook, Apple)、BAT(Baidu, Alibaba, Tencent)は、それぞれAI用の専用ハードウェアをつくっています。

・2019年2月21日付日経bp総合研究所「ものづくり未来図」記事『GAFAから部品メーカーまで、AIチップ大混戦 』

 アマゾンは自社のクラウドコンピューティング基盤提供サービス用に、学習済みaiをハードウェア化しています。このような動きで特徴的なのは、彼らサービス事業者は、自社開発のハードウェアを外販しない戦略をとっていることです。独自の高度なaiの計算能力、スピードをサービスとして提供するために自社ハードウェアを開発し独占する。

 この戦略の恐ろしさを実感したのは、筆者がceoを務めるメタデータ株式会社の優秀なインターンの東大工学部生が、2018年に卒論のための実験をやっていたときのことです。彼は、総当たり的に学習パラメータの組み合わせをトライして一番精度がよくなったものを選ぶ自動チューニングを、遺伝アルゴリズムで実現するというアイディアの研究をやっていました。グーグルのauto-mlに対抗できるテーマです。学習パラメータの組み合わせを多数、いろいろ切り替えて多数回の学習を繰り返さないと研究が進みません。厖大な計算パワーが必要な卒研テーマです。

 手元で、GTX1080Tiという11.5TFlopsのボードで学習させたのと、グーグルが12時間分の計算まで無償提供していたクラウド機械学習の速度を比較したら、後者が10倍程度の速さでした。勝負になりません。結局、12時間ごとにデータを消去される苦労に耐えながらも、速度には代えられないということで、グーグルのクラウド機械学習に卒業研究が全面依存することとなりました。学問の自由、成否が一民間企業の思惑一つ(急に眼の玉が飛び出る価格にまで有料化したりされないという保証があるでしょうか?)に左右されるかもしれない、という状況に慄然としたわけです。他事業で得た利益による体力にものを言わせ、クラウド提供で価格破壊・価格支配をしかけたり、出荷先の国を恣意的にコントロールしたりもできますので。

AIの独占にどう対応するか

 BATをはじめとする中国勢も年間4兆円規模の巨額のAI投資を行っています。BATの3社とも自動運転の研究開発に莫大な投資をしていて、自動車産業にとって代わるMaaS (Mobility as a Service) の覇者たろうと、虎視眈々と狙っています。中央集権国家の中国だけに、道路側の知能化、すなわちクルマや乗員の不調に対応し安全に運転代行、停止などをさせる中央監視センターのオペレーションを研究したりして、本当に実現できる自動運転社会システムを、世界中の協力者とともに、開発しようとしています。他の企業や国、とくに日本にいる我々はどうしたら良いでしょうか。

 次回は、学習用のビッグデータ(SNSやECサイト上の個人の行動履歴などはその典型です)の独占の可能性と、日本がどう挽回できるかについて考察してみたいと思います。AI自体は怖くないけれど、その技術やデータが事実上独占されれば、極端な富の偏在が生まれ得る。そして、一部の分野、技術要素でもいいから世界一になれなかった国は収益をもっていかれ、AIユーザーとしては楽しくやれるものの、AIで勝利した国より相当貧しい、つつましい暮らしを強いられるかもしれない。でも、なんとか光明を見いだしてまいりたいと思います。

(文=野村直之/AI開発・研究者、メタデータ株式会社社長、東京大学大学院医学系研究科研究員)

※本文は2020年3月21日までに執筆した内容です。

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