コロナ感染対策を口実に官邸がマスコミを制御か…「忖度報道」はびこるメディア業界の危機の画像1
MICの南彰議長

 新型コロナウイルス対策として、今月7日、7都府県に発令された「非常事態宣言」。外出制限や現金給付などが不十分である一方、「指定公共機関」として、政権がNHK等の報道内容に介入できるようになった。首相の記者会見も「感染リスク」を口実に、参加できる記者数が制限されている。それでなくても、政権に“忖度”しがちな日本のメディアが、新型コロナ対策に伴う圧力に、ますます萎縮しかねない状況だ。

業界に蔓延する忖度体質と同調圧力

 緊急事態宣言が発令された際、首相から「必要な指示を受ける」対象としての「指定公共機関」(特措法20条、33条)にNHKも含まれており、国会質疑によれば、首相は放送内容についても指示できると政府側は説明している(今年3月11日衆院法務委員会)。さらに、「指定公共機関」に民放各局を指定できるかの法解釈上の可否については明言しておらず、今後の運用に不明瞭さを残している。

 問題は、「非常事態宣言」以前に、既に日本のメディア業界が“忖度”体質になってしまっていることだ。日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)が、今年2月下旬から同4月にかけて行ったアンケート調査【註】には、現場の職員達の切実な訴えが多数集まっている。

「国会論戦を紹介しなかったり、或いはやっても短い、官邸記者が政権に都合の悪いニュースを潰す、番組にクレームをつける。これは日常茶飯事」(放送局社員)
「組織体制も報道現場の幹部職員はほぼ政治部出身で記者クラブや官邸との距離が近いことは簡単に想像できる」(放送局社員)
「自主規制。内側にいる我々が勝手に忖度し、『中立公平』という謎の概念に、ジャーナリズムを放棄する判断が多々見られた」(制作会社社員)
「スクープを取るためには多くの場合、情報が最も集中する政権側と伴走するのが好都合。結果として、与党政治家などからもらったスクープネタを餌に名を上げる、御用記者が後を絶たなくなる」(放送局社員)

 などなど。

 こうしたメディアが、非常事態宣言による政府の「指示」を受けた場合、ますます忖度体質になってしまう恐れがある。

 「感染リスク」を口実にした同調圧力も深刻だ。感染対策ならば、広い会場を確保し、十分に距離をとって会見を行えば良いのだが、MICの南彰議長は「首相や官房長官の会見も、一社一人と人数制限がかけられています」と懸念する。

「こういう時こそ、科学的な観点を含めてあらゆる角度からの記者の質問が必要でしょう。緊急事態宣言についての安倍首相の会見も、フリーランスなど記者クラブ外の記者の枠は10人しかなく、抽選にもれて参加できなかった記者達も何人もいました。今こそ、会見の門戸を開くべきです」(南議長)

 「感染リスク対策」としての会見参加者数の制限は、政権に都合の悪い記者の排除にも悪用されているフシもある。内閣官房長官会見で厳しく政権を追及することで知られる東京新聞の望月衣塑子記者は、今月9日、自身のTwitterに官房長官会見の「一社一人」の人数制限により、彼女が来月6日まで会見に参加できない見込みだと投稿した。

 新型インフル特措法は、今年3月改正では新たに付帯決議で放送の自律の保障、言論その他表現の自由の確保に特段の配慮をすることが明記されている。MICのアンケート回答には「報道の自由の自主自立を守ろうとする気骨ある職員が少なからずいるのも事実で、今こそ他社の同じ思いを抱くジャーナリストと連携していくことが重要な局面にある」(放送局社員)との声もあった。

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