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「風営法の管轄だけ職業差別」…水商売協会が悲痛な訴え、支援策から除外されている実態

構成=長井雄一朗/ライター
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日本水商売協会が自民党の岸田文雄政調会長に要望書を提出する様子

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言の発令、さらには東京都の小池百合子知事による休業要請により、各産業が未曾有の危機に瀕している。中でも被害が大きいのが、夜の街から人の姿が消えた影響が直撃しているナイトクラブやバーだ。

「緊急支援策では職業差別をしないでほしい」と訴える日本水商売協会は4月9日、自民党の岸田文雄政務調査会長と面会し、「接待飲食業は暴力団と並列して厚生労働省や経済産業省などの支援施策から除外されている」と指摘する要望書を提出した。それを受けて、岸田政調会長は「各省に確認し、差別しているなら対処を要請する」と答えた。

 外出自粛要請に加え、東京都の休業要請には、ナイトクラブ、ダンスホール、バーなどの遊興施設が対象となったことで、夜の街の打撃は大きくなるばかりだ。政界への要望の狙いと夜の店の窮状について、日本水商売協会の甲賀香織代表理事に話を聞いた。

キャバクラ嬢やホステスは個人事業主

――今、夜の店をめぐる状況はどのようになっていますか。

甲賀香織氏(以下、甲賀) 地域差があるので一概には言えませんが、顧客に大企業の社員が多い銀座の店は早々に休業し、ほぼ全休の状態です。一方、歌舞伎町は一部で開店している店もありますが、人通りは普段の半分以下になっています。

――夜の店で働く方々はどのような雇用形態なのでしょうか。

甲賀 キャバクラ嬢、ホステス、ホストは個人事業主が多く、電話や会計の対応を行うスタッフは事業主と雇用契約を結んでいるケースが多いです。個人事業主のホステスたちは、店の売り上げがゼロになれば自分の給料もゼロになります。ただ、従業員を守りたい一部の店舗オーナーは、けっこうな金額を身銭を切って支払っていると聞いています。100人ほどのホステスを抱える店では、売り上げゼロの状態が続いていますが、月総額1200万円を支払っているそうです。

――売り上げがないのに月1200万円を支払うというのは、大変な状況ですね。

甲賀 新型コロナウイルスが収束して店を立て直そうというときに、ホステスがいなくては再開できません。そのため、接待飲食業の事業主は再開を前提に動いているのです。大切な人材が他店に流出してほしくないという思いも込められています。

 また、収入がなくなったため、お客様と個人的に食事などに行って金銭面を援助してもらう「パパ活」のようなことをやる人も出てきますが、衛生面も含めてよろしくはありません。事業主は、そうしたことを防ぐために当面の生活費を支給しているのです。

――9日には、自民党の岸田政調会長に要望書を提出しました。

甲賀 これまで、接待飲食業はさまざまな助成金などの対象外となってきました。今回、国の雇用調整助成金についても、厚労省は接待飲食業に対して不支給の方針を示していました。菅義偉官房長官が見直す方針を示しましたが、これが覆る可能性もあるため、岸田政調会長に「大丈夫ですよね」と念押しする目的がひとつ目です。

――再確認したということですね。

甲賀 2つ目の目的が、一連のセーフティーネットについてです。これも、過去に接待飲食業は対象外となってきましたが、「前向きに検討する」との回答をいただきました。また、日本政策金融公庫など政府系金融機関の融資先に接待飲食業も含めるように要請しました。政府系金融機関は接待飲食業に融資をしないという、暗黙の了解があります。そこで、「少なくとも融資については除外しないでほしい」と要請し、前向きな回答をいただきました。

 3つ目は賃料です。家賃が高い銀座や六本木の店の経営状況は本当に深刻です。そこで、家賃も含めた月額の固定費が1店舗あたり1800万円という具体的な数字を示し、「不動産のオーナーの固定資産税を減免することで、最終的に賃料も減免できるような措置がとれないでしょうか」という相談を申し上げました。ただ、これは現実的には難しいので、個別の訴訟案件に発展していく可能性があります。

「風営法の管轄業種だけ差別されてきた」

――このままでは、廃業する店も出てくるのではないでしょうか。

甲賀 さまざまな施策が曖昧なため、接待飲食業は宙ぶらりんの状態となっています。もちろん、厳しいのは夜の店だけではないことは理解しています。世間で誤解されているようですが、今回の要望は「経営が厳しいから補填してほしい」ということではありません。これまで接待飲食業は他業種と同等なセーフティーネットなどの恩恵に預かることができず、いわば風営法の管轄だけ差別されてきたのが実情です。そして、それが当然のように受け止められてきました。しかし、「やっぱり、それはおかしいのではないか」と声を上げたということです。

 30万円の給付金についても、接待飲食業の従事者はほとんどもらえないだろうな、と思っています。中小・小規模事業者向けの最大200万円の給付金については、もし認められれば地方の店などはかなり助かるはずです。これまでのように接待飲食業を除外するのではなく、他業種や一般市民と同じ土俵で議論の対象にしてほしい。これが、一国民としての切なる願いです。接待飲食業だけが虐げられているような現状が当たり前になっていてはいけません。

(構成=長井雄一朗/ライター)

長井雄一朗/ライター

長井雄一朗/ライター

建設専門紙の記者などを経てフリーライターに。建設関連の事件・ビジネス関係で執筆中。

Twitter:@asianotabito

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