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稲田俊輔「外食のディテール」

熱狂的ファンを虜にするファミレス「シズラー」を“200%堪能する”完全マニュアル

文=稲田俊輔/飲食店プロデューサー、料理人、ナチュラルボーン食いしん坊

熱狂的ファンを虜にするファミレス「シズラー」を“200%堪能する”完全マニュアルの画像1

シズラー HP」より

 日本ではなかなか定着しづらい「高級ファミレス」という業態。そのなかで、なんとか長きにわたって命脈を保っているブランドに、ロイヤルホストやてんやなどを擁するロイヤルホールディングスの「シズラー」があります。実はこのシズラーも、最盛期より展開エリアも店舗数も縮小が進み、現在は東京エリアを中心にわずか10店舗。ビジネスとしては決して好調とはいえないのかもしれませんが、それでいて、一部の層に熱狂的といってもいい支持を受けている独特な存在でもあります。

 今回、私はその熱狂的な支持者のひとりとして完全にファン目線で、このシズラーのメインコンテンツともいえる「プレミアムサラダバー」を中心とした攻略法をお伝えしようと思います。あらかじめお断りしておきますが、シズラー未体験の方には未知の用語が頻出するかもしれません。すいません、それは各自ググってください。いや、むしろわからない用語が満載という点もまたシズラーの魅力でもあります。あえてググらず雰囲気だけでもお楽しみいただくのも一興です。

 もう一点、シズラーの熱狂的な支持者は基本「食いしん坊」です。なのでこの記事は食いしん坊にしか刺さらない可能性があります。逆にいえば少しでも食いしん坊を自覚するそこのあなた、あなたにはきっと刺さります。刺さりまくります。確実に刺してみせましょう。

なんといってもデリコーナー

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『人気飲食チェーンの本当のスゴさがわかる本 』(稲田俊輔/扶桑社新書)

 シズラーのシンボルともいえるサラダバー。そのメインテーブルは大きく2つのコーナーに分かれています。誰もがイメージするいかにもサラダバー的な生野菜のコーナーと、ラペやクスクス、コールスローなどのデリコーナー。これ、実は私はいつも不思議でしょうがないんですけど、生野菜コーナーにはお客さんが群がっていますが、デリコーナーはあまり人気がありません。

 しかし、ここでうっかり惑わされてはいけません。シズラーのサラダバーの主役はこのデリ側のほうです。日本人にはあまり馴染みのない食材の組み合わせや、ハーブやスパイスを効果的に使ったフレイヴァーなど、全体にエキゾチックな外国の味です。あくまでこれを中心に組み立てるのが大事です。一般的なサラダバーとはあきらかに一線を画するオリジナルの魅力が溢れています。

 かといって生野菜サイドを無視して良いわけではありません。野菜の質の良さはもちろん、ビーツやアーティチョークなど気の利いた素材もありますし、ドレッシングもよくあるファミレスのそれとはレベルひとつふたつ違うレストランの味。そして使っている人を自分以外ほとんど見たことがないのですが、一見なんの変哲もないマヨネーズが実は尊いです。あきらかにそれは自家製で、市販品とはあきらかに異なるフレッシュ感とコクがあいまった逸品。マヨネーズがカロリーの化身であることを改めて思い知らせてくれる悪い味がします。

 刻んだ茹で卵やハムが気前よく置いてあるのも何気にうれしいポイント。僕はミックスレタスと刻み卵でミモザサラダを作成するのが常です。季節によってはミックスピクルスにグリーントマトが使われていることがあり、これもそこにアクセントとして絶対に外せません。そして驚くべきことにこのサラダバーにはトリュフオイルも置かれており、これでミモザサラダは突然ご馳走の味に化けます。

 季節がわりで3種類置かれているスープも、もちろん外せません。必ずあるのはコーンスープで、これも確かに素晴らしいのですが、これ以外のが素晴らし過ぎて完全にかすみます。特に準定番のニューイングランドクラムチャウダーは、もうこれだけをひたすらお代わりして一食にしてもいいのではないかと思ってしまうほどの逸品。クラッカーが浮き実用として横に置いてあるのもさすがわかってます。

 パンも数種並んでいますが、これはあえて見送りましょう。なぜならテーブルに温かいチーズトーストがサーブされるからです。これは指定した枚数を持ってきてくれます。ふんわりとした食パンに粉チーズのペーストが塗られ、こんがりと黄金色に焼かれたトーストです。これも実に悪い味がします。ついつい追加コールを重ねてしまいたくなりますが、ほかのものが食べられなくなるのでぐっと我慢です。我慢するのにものすごい精神力を要するので心して臨んでください。なおチーズトーストを食べるときは、180度ひっくり返して舌がチーズ面に当たるように食べてください。悪さが3割マシです。

意外なところでシズリングシュリンプグリル

 シズラーでは、サラダバーのみで楽しむこともできますが、肉や魚などのしっかりとしたメインディッシュをそこに加えることもできます。メインに何を選ぶか。(あくまで食いしん坊的な)常識で考えれば、ここはラムチョップグリル一択なのですが、それ以外もおいしいのでぜひ。ただしハンバーグ以外です。

 シズラーのハンバーグ、昔は岩石のような硬さと密度を誇る最高においしいハンバーグでした。肉汁などという軟弱なものには頼らないガチムチの肉塊。もちろん一般受けは最悪、子供は泣きだすレベルでした。現在は、表面はカリッと香ばしく中はふんわりとジューシーな、確かにより万人受けはしそうですが、シズラーならではのスペシャルな魅力を見いだし難い物に変わっています。

 意外なところで、シズリングシュリンプグリル(小海老のバターソース)も個人的にオススメです。高いロブスターよりむしろおいしいような気もします。常に海老にこだわるロイヤルグループの面目躍如といったところです。そしてメインの付け合わせで付いてくるポテトにもトリュフオイルをお忘れなく。

胃が限界でもアップルクランブルを

 もちろんシズラーではメインを頼まない選択肢もあります。この場合、メインとしてサラダバーの端にあるタコスを起用することになると思います。もちろん、野菜はいわずもがな、ミートのせ放題、チーズもアボカドものせ放題、ハラペーニョもオリーブもサルサも無制限なので、欲望のままに凶悪なタコスを錬成することだって可能です。ただし凶悪なタコスは意外とおいしくありません。冷静さを失わず節度を保つことが肝要です。野菜たっぷり、それ以外は程々の、バランス良いタコスを心がけましょう。

 ダメ押しで温かいパスタやグラタンもあるので、これらもトリュフオイルでご馳走化する手もあるのですが、優先度は低いとお考えください。優先すべきはむしろカレーです。辛さやスパイス感は控えめですが、クラシックなホテル洋食風の律儀なビーフカレーです。カレーはスープコーナーにあるので、あえてライスと共にスープカップに盛り付けて「これはスープの一種である」と自分に言い聞かせると罪悪感も消えます。同時にたぶんカロリーも消えると思います。

 そろそろ胃が限界でしょうが、デザートを忘れてはいけません。デザートコーナーのボスはアップルクランブルです。かなりおいしいのですが、日本人の神経を逆撫でする情け容赦ない甘さなので、調子に乗ってたくさん盛ると速攻で詰みます。ご注意ください。その横には安定のソフトクリームもあるので、むしろこちらを主役にしたほうが良いかもしれません。ドリンクバーでエスプレッソを調達してソフトクリームにかけ「アフォガート」を錬成するのがオススメです。

 デザートまで終えて腹をさすっていると、店員さんが小さなミントキャンディーと便箋を持ってきてくれます。便箋にはしっかりとあなたのシズラー愛をしたためてあげてください。私からの最後のお願いです。

(文=稲田俊輔/飲食店プロデューサー、料理人、ナチュラルボーン食いしん坊)

稲田俊輔/「エリックサウス」総料理長

稲田俊輔/「エリックサウス」総料理長

料理人・飲食店プロデューサー。鹿児島県生まれ。京都大学卒業後、飲料メーカー勤務を経て円相フードサービスの設立に参加。和食、ビストロ、インド料理など、幅広いジャンルの飲食店の展開に尽力する。2011年、東京駅八重洲地下街に南インド料理店「エリックサウス」を開店。現在は全店のメニュー監修やレシピ開発を中心に、業態開発や店舗プロデュースを手掛けている。近著は『食いしん坊のお悩み相談』(リトル・モア)。

Twitter:@inadashunsuke

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