NEW
木下隆之「クルマ激辛定食」

日産「GT-R」、世界の常識覆す“和製スーパーカー”健在!全天候で最速、乗り心地も快適

文=木下隆之/レーシングドライバー
【この記事のキーワード】

, , ,

【完了】日産「GT-R」、世界の常識覆す和製スーパーカー健在!全天候で最速、乗り心地も快適の画像1
日産「GT-R」

 日本にも世界の常識を覆すスーパーカーがある。サーキットで速く、速度無制限のドイツのアウトバーンで300km/hを記録し、路面が雨に濡れても雪が積もっても最速タイムを叩き出し続けるマシンがある。それが日産自動車の「GT-R」である。

 現行型のR35型GT-Rが誕生したのは、2007年のことだ。世界に通用するスーパーカーを生み出そうと、日産は本気になった。新車開発の聖地であるドイツ・ニュルブルクリンクに、テニスアリーナのような巨大なGT-R開発専用ガレージをつくった。そこを拠点に、数年間にも及ぶ“サーキット籠り”をして開発した力作である。

 その性能は頭抜けており、ニュルブルクリンクでの最速記録を樹立したばかりか、世界のサーキットに道場破りを挑み、ことごとく最速の称号を手にした。それはデビューから13年もたった今でも色褪せることない。

 このGT-Rが世界の常識を覆したことは2点ある。1点は、「全天候型スーパーカー」を標榜したことだ。サーキットでの走りの性能を求めると、その性能を発揮できるエリアは限られてくる。車高を低くし、タイヤを太くし、コストアップを無視してでも軽量素材を多用する。その挙句、路面の安定したワインディング、もしくは高速道路かサーキットでしか速く走れなくなる。だがGT-Rは、最低地上高を確保しつつ4WDシステムを採用することで、雪路すらも最速で駆け抜けるのだ。実際に筆者は昨年の暮れ、雪深い北海道でGT-Rを振り回してみたところ、深いわだちの刻まれた雪路でもスタックすることなく駆け抜けてくれた。

 乗車定員は4名だ。エンジンはフロントにあり、トランクスペースにも余裕がある。スーパーカーのひとつの形態である「2名乗りミッドシップ」ではない。こう言ってよければ、乗用車と同様のレイアウトで最速タイムを叩き出す。荷物を積み込んで旅をすることだって許してくれる。そんな常識外のスタイルで、最速を記録したのである。

【完了】日産「GT-R」、世界の常識覆す和製スーパーカー健在!全天候で最速、乗り心地も快適の画像2

 そしてもうひとつの常識外が、日常のドライバビリティを得ていることだ。世界のスーパーカーは、車高の低いミッドシップのレイアウトを採用し、足回りをガチガチに固めている。乗り心地を犠牲にしてでも走りを追い込んでいるからだ。

 だがGT-Rは、乗り手への優しさを捨てていない。特にそれが顕著なのは、最新の2020年モデルだ。デビュー当初は、それでもサスペンション系は堅く締め上げられており、脳天に響く突き上げに閉口した。だが、最新モデルは格段にマイルドになったのである。その気になれば、通勤通学の足に使えなくもない柔軟性である。

 ちなみに、搭載されるエンジンは3.8リッターのV型6気筒ツインターボであり、最高出力は570psに達する。低回転域からパワーを発揮するから、市街地でも扱いやすい。前後の駆動トルクを自在に可変するトルクスプリット方式を採用することで、コントローラブルな操縦性を得ている。スーパーカーにありがちな、ごく一握りの腕利きにしかコントロールできないタイプではない。万人を受け入れてくれるのだ。

 もちろん、優しくなった最新の2020年モデルであっても“戦闘力”は衰えておらず、むしろ走りの性能は研ぎ澄まされている。それが証拠に、自らが記録したサーキットでのタイムをことごとく更新しているのだ。戦闘力を高めながら、乗り味が優しくなった。世界の常識を覆す和製スーパーカーは、まだ健在だった。
(文=木下隆之/レーシングドライバー)

●木下隆之
プロレーシングドライバー、レーシングチームプリンシパル、クリエイティブディレクター、文筆業、自動車評論家、日本カーオブザイヤー選考委員、日本ボートオブザイヤー選考委員、日本自動車ジャーナリスト協会会員 「木下隆之のクルマ三昧」「木下隆之の試乗スケッチ」(いずれも産経新聞社)、「木下隆之のクルマ・スキ・トモニ」(TOYOTA GAZOO RACING)、「木下隆之のR’s百景」「木下隆之のハビタブルゾーン」(いずれも交通タイムス社)、「木下隆之の人生いつでもREDZONE」(ネコ・パブリッシング)など連載を多数抱える。

RANKING
  • 連載
  • ビジネス
  • 総合