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【コロナ】JALとANA、事実上の休業状態に…航空業界、未曾有の経営危機に直面

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
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新型コロナウイルスの感染拡大とANA

 中国を震源地に新型コロナウイルスが世界に拡散したことがANAの事業、業績、財務内容に与える影響はかなり深刻だ。リーマンショック後、世界各国は、中国の需要取り込みなどを重視した。それに沿って、世界的に、中国を中心とするアジア地域向けの航空旅客輸送が増加した。2018年ごろからは米中の通商摩擦の影響や、中国経済の成長の限界などから中国向けの旅客需要には鈍化の兆しが表れた。それでも、米国の労働市場の改善や低金利環境に支えられ、世界経済全体はそれなりの落ち着きを維持した。それが、航空業界の収益を支えた。

 その中、欧州を中心に中国の需要取り込みを重視する国が増えた。2019年、イタリア政府は中国の提唱する広域経済圏構想である「一帯一路(21世紀のシルクロード経済圏構想)」への参加を表明した。これはG7参加国で初めてだった。その上、両国政府は文化・観光面の振興を重視し、直行便を増発した。景気の低迷や財政難などの難題に直面するイタリアにとって、中国の需要にアクセスすることは自国経済の安定を目指すために欠かせなかった。

 イタリアで新型コロナウイルスの爆発的な感染が発生した背景には、こうした中国への接近が無視できない影響を与えたはずだ。さらに、欧州各国は人の自由な移動を認めることによってEU域内の経済関係の強化を目指した。人の自由な移動によってコロナウイルスがドイツやスペイン、フランスなどに拡散され、各国で医療体制は限界に直面している。

 この状況下、日米欧をはじめ世界各国が人の移動を制限し、新型コロナウイルスの感染拡大を抑えようと必死だ。感染を抑えるために各国は国境の封鎖や外出の制限あるいは禁止など人の動線を絞らざるを得ない。

 渡航制限などの影響から、4月、ANAは国際線を通常の85%に削減する。当たり前だが、航空業界で飛行機を飛ばすことができなければ旅客収入は得られない。羽田空港などのカウンターを訪れる人もまばらであり、ANAをはじめとする航空業界全体が事実上の開店休業状態に陥り始めている。

広範な経済活動への影響の懸念

 ANAが直面している状況は、他の企業にとっても他人事ではない。人の移動が制限されると、経済活動全体が縮小する。重要なことは、どの程度の期間、このような状況が続くかが読めないことだ。ワクチンの開発には1年程度の時間がかかるとみられる。その状況下、いつ、どのように感染が収束に向かうかが見通せない。感染の影響が長引けば、その分、航空需要は落ちる。欧州各国や米国、さらには日本での感染状況を見る限り、企業も個人も政府も、長期化を念頭に置いて今後の方策を練ることが重要だろう。

 ANAが直面する航空旅客需要の急減は、世界経済全体で需要と供給のバランスが大きく崩れていることを示す。実体経済の悪化は避けらず、2020年の世界経済の成長率がマイナスに落ち込むことは不可避の状況にある。

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