元自衛官が指摘 銃を扱うが「弾丸」を知らなすぎる日本の自衛隊

 

※画像はイメージ(新刊JPより)。

 万が一、日本が外国の侵略にあった時やテロが起きた時に、最前線で敵と対峙する自衛隊。今の日本で最も銃火器の扱いに慣れているのは、訓練を通じてそれらを使用している自衛隊員たちだろう。

 ただ、そんな彼らにとって、きわめて重要なものでありつつも、「盲点」となっているものがある。彼らが使う銃火器から発射される「弾丸」である。

■銃を扱うが「弾丸」を知らない日本の自衛隊

『弾丸が変える現代の戦い方: 進化する世界の歩兵装備と自衛隊個人装備の現在』(二見龍、照井資規著、誠文堂新光社刊)は、わずか2年で驚くほど変わるといわれる銃弾の進歩の早さに、日本の自衛隊の認識が追いついていない現状を指摘し、警鐘を鳴らしている。

 普段自衛隊員が訓練で撃っているのは紙やプラスチックの標的である。これらは撃っても穴が空くだけで、生々しい銃創は残らない。そのため弾丸の性能や威力に意識が向きにくいのだ。

 本書によると、ベトナム戦争の頃は、兵士に小型の弾丸をできるだけ多く携行させ、短い時間にたくさん発射させるのが攻撃としての「パンチ力」だとされていた。使われていたのは5.56㎜弾と呼ばれるもの。この弾丸は小さく、たくさん携行できる利点もあるが、直径が小さいため、相手に与えられるダメージも限定的だった。

「たくさんの弾丸を短時間に発射させる」という戦闘の形式が変わったのは、今世紀に入ってからだ。それをもたらしたものこそ、弾丸の進化である。今の弾丸は単なる「鉛の塊」ではなく、工業技術の粋を詰め込んだものになっている。

 その中心が「ハイテク7.62㎜弾」と呼ばれるものだ。この弾丸は撃ち出された後、空中を飛んでいる時は、先端に空気抵抗を減らすためのプラスチックのチップがついているが、相手に命中するとそれが外れ、弾丸の先端の金属部分がバナナの皮をむくように広がる。これによって、弾丸の直径が広がり、防弾プレートを破壊する。

 それだけではない。弾丸の内部には貫通体という、いわば「第二の弾丸」が仕込まれていて、防弾プレートの後ろにいる人的標的を撃ち抜くのだ。この貫通体、直径3㎜と小さいが、当たればその40倍の直径12㎝範囲を破壊する。人間であれば肝臓が半分以上消し飛んでしまう威力だ。

 弾丸について知っておくことが大切なのは、それが戦闘のあらゆる点に影響を与えるからだ。作戦面では相手との交戦距離であり、防御面では自衛隊員たちが身につけるべき防弾装備や、銃撃を受けた隊員の救命処置である。

 時代とともに銃も進化するが、銃はあくまで「発射装置」に過ぎないと著者の一人である照井資規氏は言う。実際に人を殺傷するのは弾丸の方であり、それは銃よりもはるかに速いスピードで進化しているため、そこへの認識の遅れは文字通り命にかかわる。だからこそ自衛隊員は弾丸に目をむけるべきなのだ。

 自衛隊の海外派遣では「戦闘が起きているところには行かない」が前提だが、紛争地に行けばいつ銃弾が飛んでくるかはわからない。元自衛官の二人の著者による本書は、「銃弾」を通して現代の戦争や紛争の姿が浮き彫りにする。自衛官や警察官はもちろん、そうでない人にとっても、今の世界を知るうえで学びが多いはずだ。
(新刊JP編集部)

※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。

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