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木下隆之「クルマ激辛定食」

「フェアレディZニスモ」は日産浮沈の旗頭だ!ゴーン体制と決別、スポーツカー開発が復活

文=木下隆之/レーシングドライバー
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「フェアレディZニスモ」

 日産自動車の現行型「Z34型・フェアレディZ」が誕生したのは2008年12月。だからもう12年がたとうとしている。早ければ4年周期、遅くても6年のインターバルを目処にフルモデルチェンジが行われるのが慣例の日本の新車サイクルを思えば、12年間も基本構成を変えず生きながらえてきたモデルも珍しい。

 カルロス・ゴーン容疑者が日産を支配してから、新車の開発は歩みを緩めた。特にスポーツカーの開発は牛歩のごとく遅々として進まずにいた。いや、牛歩よりもさらに深刻で、道端で腰を下ろして一歩も進むことはなかった。そうだというのに、フェアレディZは「Z35型」に移行することなく、粛々とカタログから消えずにいる。

 日産の開発者は、そんな負の強権体制の中でもささやかにスポーツカーの火を絶やさずにきていた。その象徴が「フェアレディZニスモ」であろう。フェアレディZラインナップのなか、さらに武闘派のチューニングを受けた特別モデルなのだ。

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 ニスモは「ニッサン・モータースポーツ・インターナショナル」の愛称である。日産の100%子会社であり、日産のモータースポーツ車両開発やレース参戦を担う最前線実戦部隊である。スポーツパーツの開発でも定評があり、ブランドとしても世界で認知されている。その冠をフェアレディZは背負ったのだ。BMWの「Mシリーズ」やメルセデスの「AMG」と並ぶ存在といえば、当たらずとも遠くはない。

 フェアレディZニスモの専用モディファイは細部に徹底している。エスクテリア、インテリアに個性的な処理がされていることは言うに及ばず、サスペンションやエンジンも強化されている。そればかりか、ボディそのものにも剛性を高める細工がそこかしこに張り巡らされており、メーカー系だから可能なレベルに達しているのだ。

 タワーバー等は、クルマが完成してからでも取り付け可能だ。サスペンションの付け根やアッパー側の左右をパイプや板で連結し、走行中にボディが微細に開いたりねじれたりするのを防止する。それによってサスペンションが設計通りに正しく動く。そのためのタワーバーである。

 だがフェアレディZニスモは、それでは補いきれない領域にまで踏み込んでいる。ボディの結合部の溶接まで手を入れているのだ。これこそ生産工場での組み立て前の作業になる。メーカー系だから可能なチューニングなのである。さらに、パフォーマンスダンパーと呼ばれるボディ剛性パーツも組み込んでいるという念の入れようだ。

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 搭載される3.7リッターV型6気筒エンジンは、最高出力355ps。標準車から19psのアップにとどめられている。だが、走り味の激変ぶりには腰を抜かしかけた。エンジンは轟々と唸りを上げる。決してシュンシュンと回転計の頂点を極めるような俊敏な吹け上がりではなく、やや苦しげに、それでも強引に速度を乗せていくように荒々しく回る。乗り味も激しく硬い。路面の突き上げを正しく拾う。いかにもスポーツカーのそれなのである。

 もっとも、そんな荒さに眉をしかめたくはならないから不思議である。乗り味は硬くとも、脳天を突き刺すような痛くなる突き上げではない。むしろ、そのタイトなレーシングカーの息吹を感じさせるコクピットに収まり、唸るエンジンにさらに鞭を当て、流れる景色を感じていると、クルマでスポーツすることの喜びが湧き立つのだ。

 乱暴に言えば、旧態依然としたスポーツカーである。だがそれは、日産浮沈の旗頭である。忘れてはならないスポーツカーの基本系のように思えてならない。
(文=木下隆之/レーシングドライバー)

●木下隆之
プロレーシングドライバー、レーシングチームプリンシパル、クリエイティブディレクター、文筆業、自動車評論家、日本カーオブザイヤー選考委員、日本ボートオブザイヤー選考委員、日本自動車ジャーナリスト協会会員 「木下隆之のクルマ三昧」「木下隆之の試乗スケッチ」(いずれも産経新聞社)、「木下隆之のクルマ・スキ・トモニ」(TOYOTA GAZOO RACING)、「木下隆之のR’s百景」「木下隆之のハビタブルゾーン」(いずれも交通タイムス社)、「木下隆之の人生いつでもREDZONE」(ネコ・パブリッシング)など連載を多数抱える。

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