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山崎将志「AIとノー残業時代の働き方」

上司が休日や深夜のメール送信をやめたら業績が伸びた…部下へのストレスを自覚すべき

文=山崎将志/ビジネスコンサルタント
上司が休日や深夜のメール送信をやめたら業績が伸びた…部下へのストレスを自覚すべきの画像1
「Getty Images」より

ダメ上司ほど「帰り際」の部下を呼びとめる

 自分の仕事と人に振る仕事の優先順位を間違えている人がいます。朝から忙しく自分の仕事をこなして、ひと段落付いた夜になって、「あ、あの仕事、○○さんに頼まなきゃ」と思う人です。

「先週の日曜日も上司から電話がかかってきて、会社に呼び出されました」

 そう言って、ため息をついたのは、IT企業に勤める後輩です。彼の会社では、ほとんどの社員が午前10時に出社し、午後8時には会社を出ます。土日は休みです。しかし、その上司だけは、平日は午後出社で、会社を出るのは終電間際。土日も出勤し、何かあると部下に電話をかけ、会社に呼び出すといいます。彼が原因でプロジェクトの進行に支障が出ることもたびたびです。

 上司の判断を仰がなければならない仕事は、上司が出社する午後にならないと動きません。そのせいで残業もしばしばだと言います。

「いつも金曜の深夜にメールで仕事を指示し、提出期限がだいたい月曜日。『不明な点があったら、いつでも連絡ください』とメールにあるけれど、月曜日に提出するには、土日に仕事をしなければならない」と彼は嘆いています。休日の予定をキャンセルしなければならないのはつらいが、上司からの命令には逆らえないと言います。

休日出勤して上司と顔を合わせたくないので、嫌々ながら家で仕事をしてます。そうすると、『例の仕事の件、どうなっている?』と進捗状況を確認する電話がかかってきて、こちらが説明すると、『いや、その方向だとまずい。打ち合わせをしたほうがよさそうだから、今から会社に来い』となる。ホント最悪ですよ!」

 彼によれば、この上司は職務において専門性の高い知識を備え、粘り強く仕事を行う、いわゆる職人型タイプだそうです。しかし、マネジメント力が欠けています。それ以前に、チームの一員としてロールプレイができていません。

 総合的に仕事ができる人は、自分のところで仕事の流れを止めないものです。複数のプロジェクトを並行して進めることができ、そのプロジェクトに関わる人たちの動きを考慮して、スムーズな進行を心掛けます。チームでの仕事では、時間がどのくらいかかり、人とお金がどう関わっていて、それぞれの都合はどうなっているか、時間と人とお金をうまく組み合わせなければなりません。

 しかし、この上司のように、それらを意に介せず、自分の都合を最優先にした仕事しかできない人はいるものです。彼らは指定された期日に納品が間に合わないことも多く、遅刻やドタキャンも目立ちます。自分自身のタイムマネジメントさえできていないのです。

 さすがにこのような上司は、現在の働き方改革の文脈の中では上場企業規模の会社では見られなくなりましたが、外部からの監視が効きづらい中小企業にはまだまだたくさんいます。「こういうコミュニケーションはやめよう」と部下から提案できるような雰囲気もなく、みんながストレスを抱えたままの状態が続いています。

 ですから私は、この媒体でダメ上司の人が今のコミュニケーション方法の問題に自ら気づいてもらいたいと考えてこのコラムを書いているわけです。

週末にメールを出すのをやめたら業績が伸びた

 私の経営者仲間の一人と雑談をしていたら、「去年業績が伸びたのは、俺が土曜日にメール出すのをやめたからに違いない」と言いました。出版社勤務を経て独立し、広告代理店業を20年以上営むその友人は、土曜日に出勤するのを習慣にしてきました。平日は外回りが多く、事務所にいれば会議や外部からの電話もあり、なかなかまとまった時間が取れません。そこで土曜日は会社に出勤し、誰もいない(社員は土日休みです)オフィスで事務処理をこなしたり、じっくり考え事をしたりする時間を取ることにしていました。

 事務処理をしていれば、社員の誰かにメールで返事を書く必要があるし、考え事をしていて何か思いつくと、社員に相談や指示のメールを書きたくなるものです。

 ある日のこと。土曜の午後に部下に出したメールに対して5分後に返信がありました。

「今週末は家族旅行できちんと返信できないので、月曜日に返信します」

 このメールを見て、返信は当然週明けで構わないし、社員もそう理解していると思い込んでいたのだが、実際はそうではないことに彼は気づきました。それ以来、週末に社員にメールを出すことを一切やめたところ、1年経つと業績が2割上がったというのです。

「やっぱりさ、社長が土曜に来て仕事してたら社員は落ち着いて休めないよね。皆ストレス感じてたことは間違いないよ」

 私が会社勤めをしていたころ、社員の立場として似たような経験をしたことがあります。上司の一人に、部下に対する改善点や気になったことをメールで送りつけてくる人がいました。結構顔を合わせる機会も多いので、指導的な重たい内容であれば時間をとって直接言えばよいのに、なぜかメールで書いてきます。しかも、決まって夜中でした。

 今では家のPCやスマホから会社のメールを確認できるため、このような残念なメールに、今も多くの部下が迷惑していることでしょう。休日はメールを見ないようにすればいいのかもしれませんが、それでも週のスタートの朝には開かなければならないので、同じことです。

 朝出社して、さてっ、とメールボックスを開くと、重たい感じのメールを読まされ、いきなり憂鬱な気分になったものです。確かにメールは受け手の都合で開くことができますが、どうしても受信時間はチェックしてしまいます。夜中にメールを書いている上司は、私のことを思って書いてくれているはずだと捉えたいのですが、少なくとも私はよい気分ではありませんでした(ただし、内容の多くは、私の部下が私の仕事のやり方に不満を持っているというものだったため、原因は私です)。友人の経営者がメールで何を書いていたのかまでは知りませんが、部下から見れば重たい話もあったのでしょう。

 理屈の上では「メールは好きな時に見られることがメリット」であることは間違いないのですが、クライアントや上司からのメールには即時対応しなければと暗黙の強制力があるものです。最近では社員間でもSNSを使ったコミュニケーションが一般的になっています。SNSはメール以上に即時対応が期待されるツールですから、部下のほうが「開いていない」と言いづらいという特性があります。

 仕事のコミュニケーションはメールやSNSであっても業務時間内に行う。重たい話は対面で行う。これをまず社長自身が実践したうえで、管理職にもそれを徹底することで、部下のストレスが減り、業績が上向く可能性があるのです。

 経営者の方、大きな権限を持っているマネジメントの方は、ぜひこのことに気づいていただきたいと思います。

(文=山崎将志/ビジネスコンサルタント)

山崎将志/ビジネスコンサルタント

山崎将志/ビジネスコンサルタント

ビジネスコンサルタント。1971年愛知県生まれ。1994年東京大学経済学部経営学科卒業。同年アクセンチュア入社。2003年独立。コンサルティング事業と並行して、数社のベンチャー事業開発・運営に携わる。主な著書に『残念な人の思考法』『残念な人の仕事の習慣』『社長のテスト』などがあり、累計発行部数は100万部を超える。

2016年よりNHKラジオ第2『ラジオ仕事学のすすめ』講師を務める。


最新刊は『儲かる仕組みの思考法』(日本実業出版社)

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