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湯之上隆「電機・半導体業界こぼれ話」

国際比較で判明…日本政府のコロナ対策が“あまりにも遅すぎ”、国全体のマネジメントに支障

文=湯之上隆/微細加工研究所所長
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緊急治療の準備(Emergency Treatment Readiness)

 緊急治療の準備における6項目の評価の3カ国比較を図4に示す。一目瞭然なのは、6項目すべてにおいて、イスラエルのスコアが低いことである。要するに、イスラエルの緊急治療体制は、日本やドイツに比べて脆弱であるということだ。

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 では、日本とドイツを比較するとどうなるだろう? 日本が優位にあるのは、医療スタッフの数と先進的ヘルスケアのレベルの2項目である。一方、人工呼吸器の備蓄量、病院用ベッドの数量、迅速な機器製造のためのインフラ、新たなヘルスケアリソースの動員の4項目では、ドイツに分がある。感染者が多いにもかかわらず、近隣のイタリアやスペインに比べてドイツの死亡者が少ない理由が、このあたりにありそうだ。

 ドイツの連邦議会は2013年1月に、もし新たな感染症が発生した場合、「感染スピードを鈍らせるには学校閉鎖や大規模集会の禁止しかない。電気やガスは供給できるが、航空・鉄道は滞り、医療はパンク。消毒液やマスクの調達も難しくなる。感染終息には3年かかるだろう」と警鐘を鳴らし、政府の行動指針をA4×30枚ページにまとめていたという(4月15日付日経新聞より)。

 今回のコロナにおいても、メルケル首相が「国民の60~70%が感染する恐れがある」と語り、不都合なことでも事実は率直に伝え、危機回避を行おうとしている。日本政府がぜひとも学ばなければならないことのように思う。

 そして、現実に日本政府の動きが鈍いために、小池百合子・東京都知事や吉村洋文・大阪府知事らのほうが、俊敏に危機対応を行っている。

政府のマネジメント効率(Government Management Efficiency)

 政府のマネジメント効率における6項目の評価の3カ国比較を図5に示す。GovTech開発のレベルを除く5項目すべてで、イスラエルが高いスコアとなっている。ここで、GovTechとは、「ガバメント(政府)」と「テクノロジー(技術)」を組み合わせた造語であり、テクノロジーを活用して行政サービスを改善することや技術力のあるスタートアップ企業が(行政が本来担うと見られていた分野で)新たなサービスを生み出すことなどを指す。

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 前掲4月12日付日経新聞の記事によれば、「人口900万人のイスラエルは『スタートアップ企業の国』としても注目されている。米調査会社CBインサイツによると、企業価値の評価が10億ドル(約1100億円)を上回るユニコーン企業の最近のリストにイスラエル企業7社が名を連ねる』とある。にもかかわらず、GovTech開発のレベルがドイツや日本より低いというのは解せない。

 それは横に置いておくとして、問題は日本である。図1で示したように、政府のマネジメント効率全体で、日本は3カ国中、最もスコアが低かった。小分類の6項目を見てみると、GovTech開発のレベルでイスラエルよりわずかにスコアが高いが、ドイツより低い。そして、監視システムと災害管理、セキュリティのレベルと防衛の進歩、迅速な緊急動員、独自のパラメータ#2の4項目で、最もスコアが低い。また、独自のパラメータ#1でわずかにドイツを上回るが、イスラエルに大きく差を付けられている。

 独自のパラメータ#1および#2が、具体的にどのような内容なのかわからない(ぜひ、DKVはその内容を公開してほしいと思う)。しかし、日本政府のマネジメント効率は、イスラエルに大きく劣っており、ドイツにも及ばない項目が多いというのが現実である。

日本政府の問題は“遅い”こと

 DKVによるコロナの安全な国ランキングは、当てにならない。しかし、4つの大分類と、それぞれの6項目の小分類の評価項目の3カ国比較から、日本の長所と短所が浮き彫りになる。

 日本の長所は、緊急治療の準備について、医療スタッフの数と先進的ヘルスケアのレベルが高いことにある。しかし、3カ国比較で日本が優位性を示しているのは、この2点だけである。

 一方、日本政府のマネジメント効率には大きな問題がある。さらに評価項目全体を通して、迅速性に欠陥があるといわざるを得ない。スコアの低い項目を列挙すると、検疫効率のなかの渡航制限、モニタリングと検査における政府の監視技術、緊急治療の準備における迅速な機器製造のためのインフラおよび新たなヘルスケアリソースの動員、そして政府マネジメント効率のなかの迅速な緊急動員などだ。

 要するに、政府が関与する施策が、とにかく“遅い”ということだ。常に、後手後手に回っている印象がある。それは、ここ2カ月ほど、毎日毎日、コロナ関係のニュースを見ていて、イライラするほどである(読者の皆さんも、そう思いませんか?)。

 日本政府関係者は、コロナに対して安全な国ランキング9位とか、コロナ対策に関して最も支援が手厚い政府ランキング3位などという数字だけ見て、うぬぼれないでいただきたい。その評価項目の詳細をみれば、自慢できることはほとんどない。イスラエルのように迅速に、ドイツの様に最悪を想定し、とにかく迅速に手を打っていただきたい。

 今、懸案の1人10万円の現金給付、さっさと決めて全国民に可及的速やかに配布してください。マスク2枚では、ほとんどの人が救われません。

(文=湯之上隆/微細加工研究所所長)

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