
新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛を受け、「巣ごもり需要」銘柄として注目度が高まっているのがフードデリバリーサービス(出前)だ。
国内最大の出前サービス会社、出前館(ジャスダック上場)の株価は年度末にあたる3月31日、前日比150円(16.5%)高の1060円を付け、値幅制限の上限(ストップ高)となった。31日まで3営業日連続でストップ高である。さらに、年度初めの4月1日は一時、前日比129円(12.2%)高の1189円をつけた。4営業日の上昇率は80%に達した。新型コロナによる外出自粛や東京都のロックダウン(都市封鎖)への懸念から、宅配需要はさらに増加するとの思惑から買われた。
LINEグループが300億円出資して出前館を取り込む
LINEは3月26日、出前館に追加出資すると発表した。出前館が実施する第三者割当増資を、LINE、同社の親会社である韓国ネイバーとLINEが共同で設立するファンドが引き受け、それぞれ150億円ずつ出資する。LINEは追加出資の手続きを5月中に完了する。LINEは2016年に出資し、すでに約20%の株式を取得していた。今回の出資でグループ全体で出前館の6割の株式を保有することになり、実質的に子会社となる。
追加出資に併せ、経営トップを送り込む。LINEでデリバリー部門を担当していた藤井英雄執行役員が6月の臨時株主総会後に出前館の社長に就任する。中村利江社長は会長に退く予定だ。
出前館は自前で宅配ができない飲食店の宅配代行サービスを行っている。1年間に1回以上注文しているアクティブユーザーは2月時点で320万人(前年同期比13%増)、加盟店は2万1450店(同15%増)と伸びている。
その一方で、投資負担がかさみ業績は悪化した。シェア拡大のため自前で拠点を開設したりシステム開発を急いだためだ。19年8月期の連結売上高は前期比23%増の66億円だったが、最終損益は1億300万円の赤字に転落した。さらに19年9月~20年2月期の連結決算の売上高は38億円と前年同期比で23%伸びたものの、最終赤字は9億円(前年同期は3300万円の赤字)と赤字幅が急拡大している。20年8月期の最終損益は16億円の赤字の見込みだ。
LINEが目指す「スーパーアプリ」化計画の一環
国内の出前サービスでは出前館がシェアトップとみられているが、強力なライバルが猛迫中である。米国の配車サービス・ウーバーテクノロジーズの日本法人が運営する「ウーバーイーツ」が存在感を高め、中国の配車サービス大手ディディの日本法人も4月から「ディディフード」の試験運用を始めた。